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2023年度「国内消費者意識・購買行動調査」

アフターコロナの消費者マインドを捉える

新型コロナウイルス(以下コロナ)が収束し、様々な混乱や制約から解放された消費者の価値観・マインド、購買行動の決定要因等を把握するため、デロイトでは昨年に引き続き、2023年4月に全国20歳~79歳の男女5,000人を対象に、WEBアンケート「国内消費者意識・購買行動調査」を実施した。本稿ではその調査結果の一部を紹介、考察する。

消費者の購買意欲は「ウチ」から「ソト」へ

本調査では消費金額の変化をカテゴリごとに聴取しているが、「レストラン」「旅行」では昨年度調査と比較して「(1年前と比較して)消費金額が増えた/大幅に増えた」とする層が拡大した。金額が増えた理由としては「外出への不安が減った」ことを挙げる層が最も多く、レストランでは3割、旅行では4割を占めた。対照的に「フードデリバリー」では「減った/大幅に減った」層が拡大し、その理由としては「在宅勤務の減少」よりも「収入減」や「物価高」などの経済的な要因が上回った。

同じく消費金額が減少した層が多い「食料品」「日用品」を見ると、金額が増えた・減った理由はいずれも「物価高」が上位に挙げられており、価格高騰が日常生活に影響を及ぼしていることが示された。

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「今後、消費額を増やしたいもの」については、4割以上が「増やしたいものはない」と回答しており、働き世代である40代(45.5%)やシニア世代である70代(47.8%)で割合が高い一方、20代(38.0%)では全体平均を下回る結果となった。

「購入金額が増えた/大幅に増えた」とする層が拡大した「旅行」「レストラン」については、消費額を増やしたい項目でも上位となっており、特に「旅行」においては、年代が上がるほどこの傾向が高く、高齢層の方がソト向き消費志向が高い傾向が示された。反対に、同じく上位の「貯蓄/投資」は特に若年層での回答割合が高く、興味深い結果である。

本調査は新型コロナウイルスの感染法上の分類が5類に移行する直前に実施した。トレンドとしては、生活必需品などのウチ向き消費は主に物価高により縮小傾向にありつつも、これまで外出への不安から抑制せざるを得なかった旅行や外食などのソト向き消費においては物価高の影響を反動が上回り、拡大の傾向にあることが示された。

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日常的な消費は「店舗」を選択する傾向が継続

商品購入時の利用チャネルについては「店舗で購入する」が「食料品」で9割、「日用品」で8割、「衣料品」で6割超を占め、昨年度調査から大きな変化は窺えなかった。コロナ禍でECの普及が進んだものの、日常的な消費においては依然として店舗利用意向が強い。上記の3カテゴリ(食料品・日用品・衣料品)で「店舗を利用する理由」については、「実物を手に取って確認したいから」がいずれも最上位となっており、男性よりも女性、かつ年代が上がるほどこの傾向が高まる。

一方で、「旅行」「ギフト」など購買頻度が高くないものについては「オンラインで購入する」層が増加した。特に「旅行」においては性年代・世帯年収に関わらず、オンライン活用が定着しており、中でも40-50代女性(昨年度調査より+17.4pt)や60-70代男性(同+11.6pt)、年収1,000万円以上(同+14.2pt)という属性ではオンラインで旅行予約を完結させるとした回答者が6割以上となった。

「ネットショッピングを利用する理由」としては「価格が安いから」「ポイントが貯まるから」が上位であり、こうした経済的メリットを挙げる割合は若年層でより高くなる傾向がある。

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昨今コンシューマー企業の多くが導入を進めている「メタバース」への国内消費者の認知度や興味関心は低位であった。今回の調査では約8割が「メタバースという言葉を聞いたことがあるが、内容は知らない」「メタバースという言葉を聞いたことがない」と回答しており、「興味・関心がある」層は全体の2割程度に留まる結果となった。
 

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「コスパ」「メリハリ」を意識した消費価値観

パンデミックは消費者のライフスタイルや生活環境に様々な影響を与え、行動変容を促したが、本調査では「この数年で変化した価値観」についても聴取している。結果、3割弱が「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」「コストパフォーマンスを意識するようになった」と回答し、経済的側面に関するシビアさの強まりが窺える。

一方で「より環境に良い商品の購入や行動を心がけるようになった」や「自分が住んでいるまちや地元の商品やサービスに興味を向けるようになった」など、SDGsやサステナビリティに関する価値観が変化した層は1割程度と、経済的な価値観に比べて変化が小さい。

また、本調査ではプライベートブランド(PB)に関する消費者の購買行動や意識についても調査を行った。スーパーマーケットでの買い物時には7割以上の回答者が、「PB商品が選択肢に入っている」と回答しており、ドラッグストアでは6割、ディスカウントストアでは5割と続く。PB商品が選択肢に入る理由は「価格が手ごろである」ことが最上位ではあるものの、「鮮度・味・機能など品質がよい」と回答する消費者も2割程度存在し、所得が高い世帯ほど品質を理由とする傾向が見受けられた。これまで低価格帯が売りであったPB商品だが、価格面だけではなく品質面で付加価値を付けた品揃え・品目などが求められている。
 

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サステナビリティに関する認知度に変化はないが、関心をもつ層は減少

コンシューマー業界では、様々な領域においてサステナビリティ(持続可能性)への取り組みを進めているが、今回調査では昨年度と比較し「サステナビリティという言葉の意味がよくわからない・聞いたことが無い」と回答した層はわずかに減少したものの、認知度が向上したとは言い難く、日本の消費者においてはサステナビリティに関する意識は高くはない。

加えて、商品購入に際して「いつも環境負荷の少ない商品を選んでいる」と回答した層は、1割未満である一方、7割以上が「サステナビリティのことを考えて商品を選んでいない」と回答している。商品カテゴリに係わらず「商品を選んでいない」理由の上位は「サステナビリティを意識した商品がわからない」となっており、消費者の購買行動を変えるためには、環境や未来にどのように効果があるのかをわかりやすく訴求することや商品の見せ方の工夫による差別化も重要なポイントとなるだろう。

また、本調査では「サステナビリティに関して取り組みを行っている企業に対する意識」も調査しているが、約半数が「サステナビリティに取り組む企業を応援したいが、商品購入やサービス利用まで至らない」と回答した一方、「応援したいと思い、その企業の商品購入やサービスを積極的に利用したい」層は1割程度に留まる結果となった。コンシューマー企業においては、サステナビリティの重要性や自社の取り組みに共感してもらうだけではなく、共に行動してもらうための動機付けができているかという視点も必要である。

コンシューマー企業においては、自社ターゲット顧客の価値観の変化を捉えながら施策を講じていくことが求められるだろう。

 

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調査概要

調査日:2023年4月下旬

調査方法:インターネットを利用したパネル調査(47都道府県)

※統計局2023年4月発行の人口データを元にウエイトバック値を反映

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