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Women in the boardroom -Eighth edition

グローバルな視点から読み解く

取締役会におけるジェンダー公正の実現には、より一層の関心と取り組みが不可欠。取締役会に属する一人ひとりが行動を起こし、適切な課題意識を持ち続けることが肝要である。

第8版「Women in the boardroom」報告書は、地域・国別にダイバーシティに関する条例や取り組みに関する各種調査結果を収集し、アジア太平洋(APAC)、米州、欧州・中東・アフリカ(EMEA)に及ぶ50カ国の現任取締役会メンバーおよび各種委員会委員18,085社、206,506名を対象とした統計データをもとに分析しています。

今般の第8版の調査結果から、企業のリーダー層におけるジェンダー公正実現のために迅速な行動の必要があることは明らかです。取締役会や経営幹部における公正性を実現するためには、誰もが果たすべき役割を担っていることは明白で、政府、規制当局、投資家、地域団体、そして社会全体など、あらゆる方面からの協力があってこそ実現できるのです。加えて、取締役会議長、取締役、経営幹部は取締役会における多様性の確保が最優先事項であり続けるよう、一丸となって積極的に取り組むことが切に求められています。
本書における調査結果がより多様性に富み、公平かつ包摂的な未来の実現に向けた行動を起こす契機となることを強く願っています。

(第8版「Women in the boardroom」報告書より一部抜粋)
Anna Marks
Chair|Deloitte Global

エグゼクティブ・サマリ

政府の取り組みによる進展

第8版では、政府の取り組みが成果につながることも明らかとなった。今回の調査結果で、取締役会に占める女性比率が最も高かった上位6カ国のうち5カ国はクォータ制を採用している。また、英国やオーストラリアにおいても政府の継続的な取り組みが実を結んでいる。しかし、最近の政治情勢により、この機運に水を差すことが懸念される。

クォータ制は「過剰な取締役登用」を助長するとの誤謬

クォータ制の導入や目標値の設定を批判する声もあるが、これは少数の女性取締役が複数の取締役を兼任する「過剰な取締役登用」につながることを懸念しているからである。この懸念の検証にDeloitte Globalは「ストレッチ・ファクター」を用いているが、本書の調査対象国においては国別のばらつきはあるものの、杞憂であることが判明している。

投資家の議決権行使に関する方針も後押し

ジェンダー公正を実現するには、政府の取り組みだけでは不十分であり、投資家はジェンダー多様性に関する企業への期待値をゆるめることなく注視していく必要がある。

各地域において取締役会の各種委員会委員長を務める女性が増加

今回の調査結果では、イタリアとフランスを中心に取締役会の各種委員会の委員および委員長の過半数を女性が占める国もあった。
こうした職務で女性が活躍している点は心強いが、委員会委員長から取締役会議長にさらに昇進するためには、一層の進展が必要である。

取締役会議長やCEOへの女性就任は依然困難

取締役会の多様性の向上にクォータ制や数値目標は役立つかもしれないが、議長やCEOに関しては同様の効果は期待できない。驚くべきことに、女性議長の比率が高い上位7カ国のうち5カ国はクォータ制を導入しておらず、女性CEOの比率が高い上位20カ国のうち17カ国でもクォータ制は未導入である。

※本ページにて公開の和訳版はDeloitte Global Boardroom Programが2024年3月に発行した原著をデロイト トーマツ グループが一部翻訳を行った内容です。和訳箇所と原文であるWomen in the boardroom: A global perspective(8th edition) に差異がある場合は原文を優先します。

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