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IASB、フィードバック・ステートメントを公表することにより、アジェンダ協議を完了

IAS Plus 2022.07.29  

IASBは、2022年から2026年までのIASBの作業計画の戦略的な方向性と全般的なバランスについての関係者からのフィードバックを検討し、フィードバック・ステートメントを公表することにより、第3次アジェンダ協議を完了した。

国際会計基準審議会(IASB)は、2022年から2026年までのIASBの作業計画の戦略的な方向性と全般的なバランスについての関係者からのフィードバックを検討し、フィードバック・ステートメントを公表することにより、第3次アジェンダ協議を完了した。

 

背景

2021年3月に公表された情報要請(デロイト トーマツのWebサイト-※1)において、IASBは、IASBの活動の戦略的な方向性及びバランス、作業計画に追加される可能性のある財務報告上の論点の優先順位を評価するための判断規準、及びIASBの作業計画に追加することが考えられる財務報告上の論点についての広範な質問を行った。IASBは、124通のコメントレターと関連するオンライン・サーベイに対する37の回答を受け取った。

 

全般的なメッセージ

協議を行った3つの主要な分野について、以下の全般的なメッセージを受け取った。

  • IASBの活動の戦略的な方向性及びバランス 
    回答者は、IASBの現在の戦略的な方向性を全般的に支持している。回答者は、IASBの活動のバランスがだいたい正しいことも示している。しかし、デジタル報告及び基準の理解可能性及びアクセスのしやすさについての取組みを増加させることを求めている。したがって、IASBはこれら2つの分野について若干の増加を提供する。
  • 作業計画に追加される可能性のある財務報告上の論点の優先順位を評価するための判断規準
    ほとんどすべての回答者が、IASBが提案した規準に同意した。多くは、当該規準がバランスが取れており適切であると指摘した。一部の回答者は、IASBが規準を順位付けするまたは必須及び二次的な規準に分けることを提案した。
  • IASBの作業計画に追加することが考えられる財務報告上の論点
    ほとんどの回答者が、気候関連リスク、暗号通貨及び関連取引、及び無形資産についての潜在的プロジェクトを高い優先度に格付けした。高い優先度のリストには、継続企業、排出物価格設定メカニズム、及びキャッシュ・フロー計算書及び関連事項が含まれていた。リストの最後は、借入コスト、コモディティ取引、従業員給付、費用-棚卸資産及び売上原価、外国通貨、政府補助金、マイナス金利、個別財務諸表、インフレーション、及び期中財務報告についての潜在的プロジェクトであった。

協議に対して通常回答しない利害関係者の回答が含まれていたので、IASBは、サーベイを通じて受け取った回答についても非常に満足している。より広範な利害関係者のベースが回答することを促したので、サーベイを通じて回答する可能性を提供することは、将来の協議に対しても検討される。

 

IASBの決定

意見募集ついてのコメント期間は、2021年9月に終了した。IASBは、受け取ったフィードバックを2021年11月から2022年4月まで検討し、以下を決定した。

  • 気候関連リスクについての維持管理及び一貫した適用のプロジェクトを作業計画に追加する。
  • 以下についてのリサーチ・パイプライン・プロジェクトを追加する。
    1.無形資産
    2.キャッシュ・フロー計算書及び関連事項
  • 以下についてのプロジェクトは、作業計画に追加しない。
    1.暗号通貨及び関連取引
    2.継続企業の開示

 

他のフィードバック

回答者は、以下についてもコメントしていた。

  • 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)との協働
    IASBとISSBが、基準設定及び報告を補完的に支援するために協働することが期待されている。IASBは、IASBの既存の活動と同時に、ISSBとの協働を支援するために協調及び資源が必要と考えている。これは、新会計基準及び会計基準の主要な修正、デジタル財務報告、基準の理解可能性及びアクセスのしやすさ、及び利害関係者との対話に関連し反映されることとなる。
  • 各国基準設定主体とのパートナーシップの拡充
    各国基準設定主体とのIASBのパートナーシップは、すでにすべてのIASBの主要な活動を支援している。しかし、IASBは、各国基準設定主体のリソースでは、2022年から2026年までの作業計画に追加可能なプロジェクトの数を増やすことは可能ではないと結論づけた。長期的には、各国基準設定主体の支援、特にプロジェクトのリサーチ・フェーズにおける支援は、プロジェクトのより早期の完了につながる可能性がある。しかし、そのためには、将来のアジェンダ協議の一環として、IASBの作業計画により多くのプロジェクトを追加するためのキャパシティを提供する必要がある。
  • 適用後レビューで識別された事項の優先度
    回答者は、利害関係者の期待を管理するために、IASBが適用後レビューの目的を明確に示し、適用後レビューの結果がどのようになる可能性があるかをよりよく説明することが有用となることを提案している。IASBは、評議員会のデュープロセス監視委員会(DPOC)と、どのように適用後レビューの目的、プロセス及び可能性のある結果をより明確に伝達するかについて議論した。


さらなる情報

以下の文書が、IASBのウェブサイト(英語)から入手可能である。

 

※1》IFRS in Focus「IASBは、次の5年間におけるIASBの優先事項が何であるかについて見解を求める」(デロイト トーマツのWebサイト)
※2》"International Accounting Standards Board sets out its 2022–2026 priorities"(IASBのWebサイト)
※3》「国際会計基準審議会が2022年から2026年の優先事項を示す」(ASBJのWebサイト)
※4》"Third Agenda Consultation Feedback Statement"(PDF:796KB-IASBのWebサイト)
※5》"Third Agenda Consultation Snapshot"(PDF:572KB-IASBのWebサイト)

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