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賃貸借契約(リース契約)の公正価値評価について
賃貸借契約(リース契約)の公正価値評価を行う際に留意すべきポイント
賃貸借契約(リース契約)に係る公正価値評価は、多くは会計上の要請から求められるものですが(現状IFRS適用企業に求められている使用権資産の公正価値評価も、国内新リース会計基準において必要となることが想定されます)、詳細データが公開されていないことがほとんどです。本記事においては、賃貸借契約に係る公正価値評価が必要となる局面や算定手法等について、標準的実務の観点から解説します。
賃貸借契約(リース契約)の公正価値評価が必要となる局面
賃貸借契約(リース契約)の公正価値評価とは、評価対象である賃貸借契約について、評価基準日時点における標準的な賃貸借契約条件と比較した場合の、有利・不利の度合いを価値算定するものです。賃料のみならず、賃料改定条項や賃貸人・賃借人間の費用負担割合等、各種契約条件に渡って有利・不利を分析する必要があります。
会計実務上、当該評価が必要となる局面は主に二つ想定され、使用権資産の公正価値評価を行う場合と、PPA(パーチェスプライスアローケーション)において賃貸借契約の有利・不利に係る時価評価を行う場合があります。
使用権資産の公正価値は、「リース負債の帳簿価額±賃貸借契約(リース契約)の公正価値」という考え方に基づき把握が行われるため、当該算定式の後半部分を見積る際に必要とされます。
PPAとは、合併・買収を行なった際、取得した被合併・買収会社の資産・負債の全てを公正価値(時価)にて評価し、自社の連結財務諸表に取り込むことが要求されている会計処理のことであり、賃貸借契約に有利・不利が認められる場合には当該価値評価が必要となります。
キャッシュフローの見積りについて
利益差分法を適用するにあたっての想定キャッシュフローは、上記のとおりマーケット賃料と現行賃料の二つを用いて、両者とも横ばいにて設定するケースが多く見られます。
マーケット賃料の想定は、市場における不動産賃料の予測を適切に把握できるような場合には、将来の変動を反映させた想定を行うことも考えられます。
現行賃料については、想定キャッシュフローに現行契約の内容(CPI変動等)および評価人の判断に基づく賃料改定を反映させることも考えられます。その際は契約締結時の事情およびその他諸般の事情といった賃料改定にあたっての検討項目を十分に勘案する必要があります。
なお評価期間については、契約期間等を勘案のうえ、有利・不利な状況が継続すると考えられる期間に基づいて算定します。
割引率の査定について
利益差分法を適用するにあたっての割引率は、想定されるキャッシュフローの性質を反映した利率が採用されなければなりません。上記のとおり、賃貸借契約(リース契約)の公正価値評価を行う際の想定キャッシュフローは、不動産賃料のみで構成されていることが一般的であるため、対応する利率としても、不動産マーケットに係る利回りを適用することが望ましいと考えられています。
不動産利回りは、対象不動産の立地や用途、築年等の不動産に係る要因、および対象賃貸借契約の内容に係る要因によって異なるものとなるため、これらを反映した適切な割引率を査定することが重要となります。特に、賃料乖離額が大きい場合等、想定キャッシュフローのリスクが大きい場合には詳細な分析が必要となります。
まとめ
賃貸借契約(リース契約)の公正価値評価は、会計上の要請から求められることが多く、評価事例等の詳細データが公開されていないことがほとんどであり、比較的難易度が高い評価対象となっております。特に、使用権資産の公正価値評価については、IFRS適用企業同様に、今後、国内企業においても、新リース会計基準適用に伴って、減損検討時等で求められる局面が想定されます。
当該公正価値評価に関しては、IFRS適用会社の会計処理やPPAに当たっての評価において、これまで業界において評価実務は蓄積されているため、当該評価が必要となった際には、関連する実務経験の豊富なコンサルタントと連携のうえ進めることが望ましいと考えられます。
デロイト トーマツ グループでは、会計・監査・不動産等の専門家を有しており、トータルでの適切なアドバイスが可能となっておりますので、不明点等がある場合等にはぜひご相談ください。
執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
不動産アドバイザリー
シニアヴァイスプレジデント 成田 正憲
シニアアナリスト 遠藤 友輔
(2024.5.20)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。
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