「金融機関向けIFRSニュース 2023年1月」(2023年2月掲載) ブックマークが追加されました
ナレッジ
「金融機関向けIFRSニュース 2023年1月」(2023年2月掲載)
銀行・証券・保険・リース・クレジットカード
デロイトが発信する IFRS関連の総合ナレッジサイト「IAS Plus」等より、特に金融機関(銀行、証券、保険やリース・クレジットカード会社等)に関連性の高いグローバルな最新動向を日本語で集約しご紹介しております。
「金融機関向けIFRSニュース 2023年1月」
デロイトが発信するIAS Plusの情報等のうち、特に金融機関に関連性の高い情報(IFRS関連に加え、日本基準やUSGAAP関連であっても関心が高そうな情報を含む)を日本語で集約し、金融機関等の皆様に向けて週次でニュース配信しております。以下は、配信した週次ニュースを月次単位(記事日付の属する月基準)で集約した記事一覧・概要(一部抜粋)となります。実際の詳細な週次ニュース配信のご要望等ございましたら、右上のお問合せからお問合せください。なお、公式の翻訳ではありませんので、参考情報としてご活用ください。時制は、各記事の掲載時点のものとなります。本文中の団体・組織名の略称については、リンク先の<凡例(PDF))>をご参照ください。
<今月のハイライト>
◆保険契約
■ デロイトによる『IFRS第17号を適用する保険会社のための開示例』の発行
IFRS第17号が2023年1月1日に開始する事業年度より適用されている中、保険会社だけでなく投資家もその開示内容に注目しています。当公表物ではIFRS第17号の表示及び開示例を示しており、財務諸表作成者が開示要求を充足することを支援すると共に、投資家、監査人及び規制当局が財務諸表作成者に対して何を期待しているのかについてヒントを与えるものとなっています。
◆のれん及び減損
■ IASBによる『In Brief ― 企業結合-開示、のれん及び減損』の公表
IASBが公表した「In Brief」では、IASBの①企業結合-開示、②のれん及び減損プロジェクトにおける2つの主要な審議会の決定事項(企業による合併及び買収(企業結合)についてのより良い情報開示のあり方、並びに、のれんの減損テストのみのモデルを維持し、のれんの償却モデルの再導入を見送る)の解説がIASB鈴木理事により日本語で説明されています。IASBの2022年12月会議において、これら2つのトピックに対する決定を行い、本プロジェクトをIASBの基準設定の作業計画に移行することも決定していることから、「In Brief」では、プロジェクトのアップデートについて、決定の内容、理由及びIASBが関連する提案に対する公開草案を公表する前に行う予定の追加作業について説明しています。
<今月の配信記事一覧>
<記事概要>
保険契約
【DTT】
- (2023年1月25日)
『IFRS第17号を適用する保険会社のための開示例』が発行されました。
当公表物(全119ページ)は、IFRS第17号「保険契約」を適用する保険会社の表示及び開示に係る要求事項を説明しています。IFRS第17号が2023年1月1日に開始する事業年度より適用されている中、保険会社だけでなく投資家もその開示内容に注目しています。当公表物ではIFRS第17号の表示及び開示例を示しており、財務諸表作成者が開示要求を充足することを支援すると共に、投資家、監査人及び規制当局が財務諸表作成者に対して何を期待しているのかについてヒントを与えるものとなっています。
のれん及び減損
【IASB】
- (2023年1月31日)
IASBによる『In Brief ― 企業結合-開示、のれん及び減損』(IASB鈴木理事による日本語解説)が公表されました。
IASBが公表した「In Brief」(全7ページ)では、IASBの企業結合-開示、のれん及び減損プロジェクトにおける2つの主要な審議会の決定事項が解説されています。企業による合併及び買収(企業結合)についてのより良い情報開示のあり方、並びに、のれんの減損テストのみのモデルを維持し、のれんの償却モデルの再導入を見送るとするIASBの決定内容を、IASBの鈴木理加理事が説明しています。
なお、本プロジェクトは、基準修正を提案する公開草案の作成準備を行う基準設定の作業計画へと移行しています。
会議
【IASB】
- (2023年1月30日)
2023年1月のIASB会議の議事メモが掲載されました。
2023年1月24日から26日にかけて開催された当会議では、以下を含むトピックが議論されました。なお、ASBJによる当記事の日本語訳は、こちら(ASBJのウェブサイト)に掲載されています。- 企業結合-開示、のれん及び減損
(暫定決定事項あり)- IASBは、2022年9月の会議において特定の状況における企業結合に関する一部の情報開示を免除することを暫定的に決定していましたが、免除の条件を設定していませんでした。今回の会議において、情報を開示することが企業結合の目的のいずれかを著しく害することが予想できる状況において免除を認めることを暫定的に決定しました。また、IASBは、企業が免除を適用できるかどうかを評価する際に考慮する必要がある要素や免除を適用した理由の開示が必要である旨などを定めた適用指針を公開草案にて提案することを暫定的に決定しました。
- 更に、上記免除の対象として、企業は、性質別に分類された期待されるシナジーの合計(例:総収入、総費用シナジー)、シナジー効果がいつ開始され、その効果がいつまで持続すると予想されるかについての定量的な情報開示が要求されることを暫定的に決定しました。
- 基本財務諸表
(下記を含む暫定決定事項あり)- 重要性のある情報を分解するという全般的な要求事項に対して免除を追加することを暫定的に決定しました。この免除には、純損益計算書において機能別の科目に含めた営業費用の性質に関する情報にも適用されます。
- その他の包括利益について、①「永久的に純損益の外で報告される再測定」と、②「将来において特定の条件が満たされた時に純損益にふくめられることとなる収益及び費用」の2つの区分の名称で改めるという公開草案を撤回することを暫定的に決定しました。
- キャッシュ・フロー計算書における受取利息の分類について、下記2点を暫定的に決定しました。
- 特定の主要な事業活動を有しない企業は、キャッシュ・フロー計算書において受取利息を「投資活動から生じるキャッシュ・フロー」に分類するという公開草案の提案を確認すること
- 特定の主要な事業活動を有する企業には、受取配当金、支払利息及び受取利息をキャッシュ・フロー計算書の単一の区分(すなわち、営業活動、投資活動及び財務活動のいずれかから生じたキャッシュ・フロー)に分類することを要求する公開草案の提案を確認すること
- 企業結合-開示、のれん及び減損
【ISSB】
- (2023年1月24日)
2023年1月のISSB会議の議事メモ(DTT作成)が掲載されました。
2023年1月17日から19日にかけて開催された当会議では、以下を含むトピックが議論されました。- 公開草案IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1基準案)
(暫定決定事項あり)- 「指標及び目標」の開示目的が、企業が用いている指標及びIFRSサステナビリティ開示基準で要求されている指標の両方に関する情報を開示するよう企業に要求することであることを明確にすることを暫定的に決定しました。
- IFRSサステナビリティ開示基準を適用する際に行う判断、仮定及び見積りの開示に関する要求事項案について、以下のことを暫定的に決定しました。
- サステナビリティ関連のリスク及び機会の開示に最も重大な影響を与えた、企業が行った判断を開示するという要求事項を導入すること
- IFRSサステナビリティ開示基準が存在しない場合に、企業がサステナビリティ関連財務情報開示を作成するために用いたガイダンスの情報源を識別することを要求するようにS1基準案を修正すること
- 指標に関する見積りの不確実性に関する開示要求は、サステナビリティ関連のリスク及び機会が企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与える現在の及び予想される影響にも適用されることを明確にすること
- 「可能な限り(to the extent possible)」という用語は、「IFRS会計基準又はその他の関連する一般に公正妥当と認められた会計原則の要求事項を考慮して、可能な限り」を意味することを明確にすること
- サステナビリティ関連財務情報開示を作成する際に企業が用いた財務データ及び仮定と、財務諸表を作成する際に企業が用いた財務データ及び仮定の間の重大な相違についての情報を開示することを企業に要求すること
- IFRSサステナビリティ開示基準を適用する際に企業が行うことを要求される判断、仮定及び見積りの開示に関するガイダンスを提供すること
- サステナビリティ関連の機会に関する情報について、限定的な状況において、当該情報が商業上の機密である場合に、企業がサステナビリティ関連の機会の開示からその情報を除外することを容認するという、S1基準における免除を導入することを暫定的に決定しました。
- 公開草案IFRS S2号「気候関連開示」(S2基準案)
(暫定決定事項あり)- 気候レジリエンスを評価するためのシナリオ分析について、気候関連のリスク及び機会に企業がさらされる度合いや、企業が気候関連のシナリオ分析を実施するために利用可能なスキル、能力及びリソースを考慮しつつ、「報告日時点で過大なコストや労力を掛けずに利用可能な、すべての合理的で裏付け可能な情報」を考慮することを要求する気候関連のシナリオ分析の方法を用いて、企業がこれらの開示を作成することを要求することを暫定的に決定しました。
- 企業自身の報告期間とは異なる報告期間を有するバリュー・チェーン上の企業から情報がもたらされたときに、企業自身の報告期間とは異なる報告期間についての情報を用いて企業がGHG排出を測定することを、一定の条件を満たした場合に限り容認するという救済措置を提供することを暫定的に決定しました。
- S2基準案第23項(e)の提案を修正し、気候変動に関する最新の国際合意が、企業が設定した気候変動関連の目標にどのように情報をもたらすかを開示するよう要求することを暫定的に決定しました。また、この要求事項により、一般目的財務報告の利用者が何を理解できるようになるのかについて説明することを暫定的に決定しました。
- サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項及び気候関連開示(S1基準案・S2基準案共通)
(暫定決定事項あり)- リスク及び機会の識別、バリュー・チェーン関連の要求事項の適用、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに関して予想される影響の決定、気候関連のシナリオ分析の適用、特定の資産又は事業活動の金額及び割合の計算の領域に、「報告日時点で過大なコストや労力を掛けずに利用可能な、合理的で裏付け可能な情報」の概念を導入することを暫定的に決定しました。
- サステナビリティ関連のリスク及び機会が、企業の財務諸表における情報に影響を与えた又は影響を与えることが予想される場合、企業は、これらのリスク及び機会の間のつながり、並びにこれらの現在の及び予想される財務的影響の説明が要求されることを明確にすることを暫定的に決定しました。
- サステナビリティ関連のリスク及び機会が、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与える、現在の及び予想される影響に関する定量的及び定性的情報の提供を、企業が要求されることを明確化することを暫定的に決定しました。
- 企業が特定のサステナビリティ関連のリスク又は機会の財務的影響に関する定量的情報を提供することができない場合、(1)定量的情報を提供することができない理由の説明、(2)当該サステナビリティ関連のリスク又は機会の財務的影響に関する定性的情報(当該リスク又は機会が影響を与える可能性が高い財務諸表の行項目、合計及び小計を識別することを含む)の提供、(3)企業が提供可能な最も低い集約レベルでの、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する定量的情報の提供を要求することを暫定的に決定しました。
- 公開草案IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(S1基準案)
ワーク・プラン
【IASB/ISSB】
- (2023年1月30日)
IASB及びISSBがワーク・プランを更新しました ─ 変更点の分析(2023年1月の会議)
2023年1月のIASB会議及びISSB会議の結果を受けて、ワーク・プランが変更されました。
コンバージェンス
【ASBJ】
- (2023年1月17日)
第494回企業会計基準委員会の概要が公表されました。
ASBJは、2023年1月17日に開催された第494回企業会計基準委員会の審議資料を公表しました。当委員会では、今回、以下を含む事項が審議されました。また、一部の審議は動画(Youtube)公開されました。- 金融資産の減損に関する会計基準の開発
- ステップ2を採用する金融機関における貸付金の測定に関する論
- 満期保有目的の債券及びその他有価証券に分類される債券に対する予想信用損失の適用
- リースに関する会計基準の開発
- 借地権の取扱い
- リース会計基準等の改正に伴い改正又は修正が必要となる可能性がある他の基準等のうち、企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」の改正案(ASBJが公表している会計基準等の改正案
- リースに関する会計基準等の改正にかかる次の文案の検討
- リースに関する会計基準
- リースに関する会計基準の適用指針(「借手のリース」まで)
- リース会計基準等の改正に伴い改正又は修正が必要となる可能性がある次の基準等の改正案
- 業種別監査委員会報告第19号「リース業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」の改正案(日本公認会計士協会が公表している実務指針等の改正案)
- 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」の改正案(ASBJが公表している基準等の改正案)
- 企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」の改正案(ASBJが公表している基準等の改正案)
- 企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」の改正案(ASBJが公表している基準等の改正案)
- 実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の改正案(ASBJが公表している基準等の改正案)
- 金融資産の減損に関する会計基準の開発
- (2023年1月26日)
現在開発中の会計基準に関する今後の計画が改訂されました。
ASBJは、日本基準及び修正国際基準(IFRSと企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)の開発に関する検討状況、及び今後の計画の改訂を公表しました。
<主な改訂点>- グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応
- なお、2023年2月8日に、実務対応報告公開草案第64号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」(コメント期限:2023年3月3日)が公表されており、 2023年3月に最終化することを目標としております。
- グローバル・ミニマム課税に関する改正法人税法への対応
その他
【IASB】
- (2023年1月9日)
IASBが、ピラー2法人所得税に関連する繰延税金資産及び負債に関する要求事項に対する一時的な例外を提供するIAS第12号の修正案を公表しました。
2023年1月9日に、IASBは、公開草案「「国際税務改革-ピラー2モデルルール」(IAS第12号「法人所得税」の修正案)を公表しました。法人所得税の会計処理についてOECDのピラー2モデルルールの差し迫った適用の潜在的な影響に関する利害関係者の懸念に対応するためにIAS第12号の修正を行い、2023年1月1日以後開始する事業年度に開示要求を適用することが提案されています。コメント期限は2023年3月10日までです。