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洪水による不動産価格の損害算定モデル~デロイト トーマツと日本不動産研究所が開発

月刊プロパティマネジメント 2022年5月号掲載記事

デロイト トーマツ グループと日本不動産研究所(JREI)は、洪水が不動産価格に与える損害を算定するモデルを開発、同モデルをもとにしたリスクシナリオの算定とレポート作成などのコンサルティングサービスを開始した。

モデルの開発は、金融安定理事会(FSB)によるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を契機とする。「TCFDにより、企業は気候変動に伴う財務インパクトの明確化や情報開示の拡充を投資家から求められている。対応を怠った場合、資金調達コストの上昇や株価低迷、企業ブランドの低下につながりかねず、大企業を中心に危機感は強い」と指摘するのは、デロイト トーマツ グループ シニアマネジャーの岡田嘉邦氏。

モデルは、ハザードマップとGISの位置情報データを紐付け、ハザードマップの想定浸水深に応じて土地/建物の想定損害率を算定する[図表]。住所、用途、構造、階層の情報があれば算定可能だ。

土地の損害率は、浸水災害が発生した経済圏の被害と浸水地域の被害の2パターンに分けて算定。前者は過去の災害時の土地取引価格変化に関する計量経済モデルを用い、後者は過去の災害時の復興状況を観測したシナリオ分析を用いる。「東日本大震災の被害を受けた地域では土地価格の毀損が見受けられた。洪水による不動産への影響は建物に注目が集まりがちだが、土地にも注目しなければならない」(JREI 研究部 REA-Tech研究開発グループ 次長の浅尾輝樹氏)。

建物の損害率は、部位別損傷率(部位ごとの被害内容に応じた復旧費用)と部位別構成比(用途ごとの部位構成)をもとに算出。2,200パターンのシミュレーションを用意する。

エリアは自治体によりハザードマップが整備されている地域なら全国に対応する。アセットタイプはオフィス、住居、商業施設、倉庫、工場などに対応しており、都内では95%程度の建物をカバーする。

サービスの主な利用ターゲットは不動産ファンド、不動産を多く保有する事業会社、金融機関を想定。ファンドと事業会社は既存ポートフォリオの見直しや新規取得物件の精査、金融機関は担保不動産のリスク査定に活用するイメージだ。

サービスの料金は、地域金融機関の場合500万円程度を想定するが、都度見積りとなる。今年度は10社(行)の利用を目標におく。なおデロイト トーマツ グループでは、気候変動による事業リスク・機会の把握、シナリオ分析の実施や経営戦略の策定を支援する「TCFD関連・シナリオ分析サービス」も展開しており、サービスの併用でさらなる効果を見込めるとする。

「近年は増加する異常気象に伴う調査・鑑定依頼が頻発している。災害が起きた後ではなく起きる前にリスクを算定し、必要に応じた対策を講じてほしい」とJREI 研究部REA-Tech研究開発グループ 主任研究員の南川しのぶ氏は話している。

 

[図表]モデルのイメージ

モデルのイメージ
出所:デロイト トーマツ グループ

 

*記事の全文は「洪水による不動産価格の損害算定モデル~デロイト トーマツと日本不動産研究所が開発(PDF)」をダウンロードください。

 

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