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不動産の気候変動による経済的損害算定モデル

有限責任監査法人トーマツと日本不動産研究所は協業し、洪水等による物理的リスクが不動産(土地・建物)価格に与える影響を新たにモデル化し、気候変動関連財務情報開示(TCFD)を含む中長期的な気候変動リスク対応を助言するサービスを提供しています。

気候変動関連財務情報開示(TCFD)への関心の高まり

近年、国内外の投資家が投資先に気候変動関連財務情報開示(TCFD)の準拠を求めるようになっており、企業は気候関連の潜在的な財務インパクトの明確化と情報開示の拡充が求められています。気候変動は中長期にわたる不確実性を有する課題であり、各社はTCFDに則り、自社におけるリスクおよび機会の観点から重要性を評価し、将来シナリオに基づき、事業への影響について分析した上で、情報開示を率先して継続強化することが肝要になってきています。

不動産領域における従来の気候変動関連財務情報開示の課題
  • 従来の気候変動関連財務情報開示においては、洪水が発生した際に、浸水深に応じて建物への損害を簡便的に見積もる手法が主流となっており、土地の価値毀損については全く考慮されていないケースが一般的でした。しかし、過去の大規模災害では、地域の被害の状況によっては土地価格に対しても大きな影響が及んでおり、洪水等の災害が被災後の土地価格に与える影響を財務情報開示にどのように反映するかが課題となっていました。
  • また、建物についても、従来では用途・構造・階層に応じたきめ細かい損害率の想定は難しく、特にオフィスビル等の商業用途の高層ビルや、大規模な工場・倉庫、マンション等の被害の想定は難しい面がありました。
不動産領域に関して今後求められる対応
  • 今後の気候変動関連財務情報開示においては、河川の氾濫による土地や建物の浸水被害などの物理的リスクについて、不動産を多く所有する企業や、その企業に融資する金融機関が土地・建物価格の毀損の影響について分析・見積り、情報開示の強化を行っていくことが重要になると考えられます。
不動産の気候変動による経済的損害算定モデル(PDF、885KB)

 

 

有限責任監査法人トーマツと一般財団法人日本不動産研究所が創出する価値

有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)と一般財団法人日本不動産研究所(以下、日本不動産研究所)は協業し、気候変動が不動産価格に与える影響を分析するための新たなモデル 「不動産の気候変動による経済的損害算定モデル」 を開発し、それを活用したリスク評価助言サービスの提供を開始します。トーマツは、金融機関のポートフォリオ評価に関する高度なリスクアドバイザリーサービスの実績を保有し、かつ、事業会社も対象として、気候変動やCOVID-19など、新しいタイプのリスクを評価するためのメソドロジーをいち早く開発してきました。一方、日本不動産研究所は、日本最大手の不動産鑑定機関としての不動産鑑定評価に関する実績、災害調査研究に関する知見について強みを持っています。両社は新しいサービスの開発・提供を通じて、両社が持つ強みをかけ合わせ、これまでにないシナジーを創出し、金融機関や事業会社が前述の気候変動関連財務情報開示における不動産領域におけるリスクを評価するためのサポートを通じて、経済社会の発展に貢献していきます。


図:トーマツと日本不動産研究所が創出する新しい価値

トーマツと日本不動産研究所が創出する新しい価値
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不動産の気候変動による経済的損害算定モデルの概要と特徴

本サービスでは、日本国内に所在する土地・建物両方を対象に、ハザードマップ上の想定浸水深に応じて、被災した場合の想定損害率を算定することが可能となります。これにより不動産の水害リスクを「見える化」します。

土地価格に関する影響度の分析手法
  • 不動産鑑定評価理論をベースに、想定浸水深や推定浸水被害額などの災害に関するデータや、人口・実質GDP・消費者物価指数などのマクロ経済指標、それぞれの土地の緯度経度情報等に基づく「ハザードリスク地価推計モデル」を活用し、想定最大規模の水害発生時の土地価格への影響度を定量的に分析します。
  • 本サービスには、気候変動に伴う自然災害のうち、「土地」に与える洪水等の物理的リスクに関する評価を反映させるGIS(地理空間情報)を応用した処理なども含まれています。
建物価格に関する影響度の分析手法
  • 不動産鑑定士の知見を活用し、建物部位別損害率と構造用途別構成比率による建物損害率をモデル化し、オフィスビル等の商業用途の高層建物や、工場、倉庫、戸建住宅、マンション等の幅広い用途も含めた物理的リスク(価値の減価率)に関する情報開示への助言提供を行うなど、投資家への合理的な説明を促進する幅広いサポートを行っていきます。
  • これらのモデルについては、顧客が所有するデータの粒度や、求める情報開示の水準に合わせた調整も可能です。


図:不動産の気候変動による経済的損害算定モデル(不動産価値毀損に関するシミュレーション)のイメージ

不動産の経済的損害算定モデル(不動産価値毀損に関するシミュレーション)のイメージ
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不動産の気候変動による経済的損害算定モデルの導入効果

不動産の気候変動による経済的損害算定モデルの導入により、土地の物理的リスク等の新しいリスクに対応する企業の経営の高度化に寄与できると考えられます。

気候変動に伴う不動産(土地・建物)の物理的リスクの見える化
  • 過去の大規模災害(洪水等)が被災後の土地価格に与えた影響を分析することで、従来の気候変動関連財務情報開示において考慮することが難しかった「洪水等による土地の物理的リスク」を把握することが可能です。
  • 建物についても不動産鑑定士の知見を活用し、高層建物を含む様々な用途・構造・階層の建物(オフィス、マンション、工場、倉庫等)の物理的リスクを詳細に把握することが出来ます。
不動産の物理的リスクに対応するための事業方針の見直し
  • 不動産の立地やハザードマップの想定浸水深、建物の用途・構造・階層等の様々なデータに基づく分析を実施することで、水害が発生した場合の不動産(土地建物)価値へのインパクトについて、定量化された指標を伴ったシナリオを生成することが可能となります。
  • 財務勘定科目への影響推定を通して、マネジメントとのリスク・コミュニケーションが活発化され、投融資方針などの事業方針の見直しが後押しされることが期待されます。
  • 災害に対する脆弱性の分析とそれに基づくBCP計画策定や、工場等生産拠点の立地戦略に関する検討などに活用することも可能です。
  • 金融機関にとっては、金融機関自身のポートフォリオの良化に寄与することが期待されます。
財務情報開示の質の向上
  • TCFDに基づく開示要求など、新しいタイプのリスクが与える影響を、非財務情報として開示することが、これまで以上に求められています。
  • 特に不動産を多く所有する事業会社や、水害リスクのある担保物件を抱える金融機関にとっては、不動産の水害リスクを適切に外部のステークホルダーに開示するための有用なモデルとなります。

 

詳細は「不動産の気候変動による経済的損害算定モデル(PDF)」を参照ください。

<サービスに関する問い合わせ先>

有限責任監査法人トーマツ 
リスクアドバイザリー事業本部
Email: ra_info@tohmatsu.co.jp
または「お問い合わせ」よりご連絡ください。
 

一般財団法人日本不動産研究所
研究部
Email: JREI-kenkyu-madoguchi@imail.jrei.jp
メールタイトルにキーワード「気候変動」を含めていただけるとスムーズです。

プロフェッショナル

桑原 大祐/Daisuke Kuwabara

桑原 大祐/Daisuke Kuwabara

デロイト トーマツ グループ パートナー

有限責任監査法人トーマツ パートナー。大手金融機関においてデリバティブディーリング、市場リスク管理、ALMを担当の後、大手監査法人系コンサルティング会社を経て現職。リスク管理と経営管理を中心に、金融機関に対するアドバイザリーを行うと同時に、非金融インダストリーの金融ビジネスの戦略立案等に従事。米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校経営学修士(MBA)。共著に「バーゼルⅡ対応のすべて(2008年・共... さらに見る