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【保険ERM】保険ERMを支える人的資本の変革

(2016.12)

金融危機以降ERM強化に関する規制強化が進められました。デジタル革命が保険市場、ビジネスモデルを大きく変える可能性があります。ERMの実効性向上やビジネスモデルを戦略的に変革していくためには、それを支える人的資本の確保が不可欠となります。

テクノロジーの進歩によって変化する顧客ニーズへ的確に対応するためには、それを可能にする人的資本を整備しなければなりません。デジタル革命は、ビジネスモデルを変革し、リターン・リスク・資本の管理に質的影響を及ぼすことでしょう。変化に対応できる有用な人材を戦略的に組織に供給するための人事部門の役割は、カルチャーやエンゲージメント(企業愛着心)を左右することになります。
 

ERMの実効性を支える基本要素はなにか

ERMはリターン・リスク・資本の統合的管理を目指しています。実効性を向上するためには、会社がどのようなハザード・リスク環境の下に置かれているか、それに対応しうる資源は十分か、活動の動力源たる人的資本は適切か、といった観点から再整理が必要です。

人的資本に変化を要求する要因

  • 大数の法則に依拠した保険制度にとって、アナリティクスはこれまでも常に保険業界の中核的存在であった。ビッグデータや先端テクノロジーの登場は、アナリティクスの活用範囲を飛躍的に拡大している。
  • 2013年のオックスフォード大学の研究は、米国の全雇用の約半数が今後20年間で自動化される可能性があると指摘した。保険業界に対しても、引受けの自動化、オンラインでの見積り提供、顧客サービス・ヘルプ・ラインのコンピュータ化など着実に機械化が進んでいる。
  • 保険引受業務において、人がデータの収集・確認に割く時間が減り、本来のコア・スキルであるリスクの分析と評価に多くの時間を割けるようになった。保険金請求プロセスにおけるテクノロジーによる簡素化等、顧客サービス向上の可能性は大きい。
  • 文字認識機能を持つロボットが、従業員に代わって保険証券更新時の膨大な検索・突合作業を行うことが可能となっている。保険会社は、有能人材および協力者としての機械を最大活用することによって、業務を革新する機会をもっている。
  • 一方で、これらのテクノロジーを最大限に活用するための人的資本をいかに確保するかが、経営戦略上の課題の1つとして浮上している。

オープン・タレント・エコノミー

  • イノベーションを加速し、外部ネットワーク上のアナリティクスを駆使できる人材の確保が急務となっている。
  • デロイトが実施した、2014年のグローバルな人的資本に関する調査(Global Human Capital Trends 2014)の中では、オープン・タレント・エコノミーが紹介されている。自社の壁の向こうに存在するオープン・タレント・エコノミー(社外にある有用な人的資本のオンディマンド市場)の活用が、保険会社のイノベーションを促す機会を高める。
     

オープン・タレント・エコノミーのつながり

新しいカルチャーとエンゲージメント向上のための模索

  • デロイトが2015年に実施したグローバルな人的資本に関する調査(Global Human Capital Trends 2015)によれば、保険業界の回答者の93%がカルチャーとエンゲージメント(企業への愛着心)を最大の課題に挙げている。しかしながら、半数以上がその準備ができていないと回答している。
  • 保険会社が持続可能な成長を達成するためには、環境変化に応じてビジネスの転換を図らねばならない。ただ、その転換には、個々人のスキルの変革があり、組織的で整合的な行動に導くカルチャーの醸成が必要となる。
  • 人事部門には、有能な人材の効果的な育成とオープン・タレント・エコノミーを含む人材供給の強化が期待されている。
  • 顧客サービスが最重要視される業界において競争力を維持するうえで、エンゲージメントは極めて重要な要素である。
  • 従業員のエンゲージメントの高い企業ほど、人材の採用が容易であり、強固な顧客サービスを提供し、自己都合退職率が最低水準にあり、さらに長期的に見て収益性が高いことが多くの調査で明らかになっている。

ERMと人材アナリティクス

  • 高い潜在能力を有する候補者の特定、採用および人材保持を図るうえで人材アナリティクスへの関心が高まっている。アナリティクスは、進化する有能人材のライフサイクルを人事部門のリーダーがより深く理解し、平均在籍期間が低下する中で、有能人材へのニーズを予測し、積極的に補充を行ううえで有用と考えられる。
  • 保険会社の人事部門は、販売面で活用されているのと同様に、戦略的優先事項への貢献を果たしうる有能人材を獲得し、定着させるためにアナリティクスを活用することができる。
  • 保険業界が直面している動態的外部環境に適応するビジネスモデルへと変革していく必要がある。また、経営トップが示したRAF(リスク・アペタイト・フレームワーク)を確実に実行していくためには、最適人材を獲得・育成していく必要がある。
  • 一方で、人的データを積極的に活用しようとすればするほど、データのプライバシーおよび保護といった管理強化を進めていく必要がある。管理を誤れば、保険会社のブランドに(社内的にも対外的にも)悪影響がおよび、顧客基盤および従業員リテンションが共に悪化する。これらが収益が悪化させ、企業を危機に晒すためである。

 

原題:Human capital trends in the insurance industry(PDF)

保険ERM態勢の高度化支援サービス

デロイト トーマツ グループでは、保険ERM態勢に関し、基礎的な情報提供から、各社固有の問題解決まで幅広く関わり、Deloitte Touche Tohmatsu Limited(DTTL)のグローバルネットワークを駆使し、最新の情報と豊富なアドバイザリーサービスを提供します。

保険ERM態勢高度化支援サービス
(ブロシュア、PDF、384KB)

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(ブロシュア、PDF、212KB)

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