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【保険ERM】資本管理手段としての再保険
'Reinsurance as a capital management tool' (2017.08)
再保険は、元受保険会社にとって、リスク、リターン、資本管理の有用な手段となっています。今日でも、その有用性は変わりません。デロイトは、米国市場における再保険の利用に関しインタビューを実施しました。今後の環境変化を踏まえると、リスクポートフォリオを管理するための直截な手段としての再保険の効果的な活用は、ERMの精緻化の観点からもますます重要となっています。
<概要>
規制に不確実性が伴う場合、その変化の方向から既存のリスクポートフォリオが歪んでいるとするなら、不測のインパクトの回避やより精緻なポートフォリオ管理の推進のために再保険を購入する誘因が働く。例えば、下記のことが指摘できることから、デロイトは、今後3年間の規制環境の変化を踏まえ、再保険の利用が緩やかに増加すると予想している。
- プリンシプル・ベースの準備金積立(PBR) などの改革の実施を通じ、リスクおよびリターンの管理に対する高度なアプローチが引き続き精緻化される状況にあること。
- リスクおよびソルベンシーの自己評価(ORSA)の進化、長寿リスクに対するリスクチャージの負担感、労働省(DOL)による受託者責任基準の厳格化、IAISの保険資本基準の可能性など、元受保険会社に対するモニタリングの強化が見込まれること。
一方、先端的なモデル化、予測的アナリティクスなど技術の進歩に伴い、イノベイティブで、一層複雑な商品の開発、より複雑な特約を締結する能力も進むと考えられる。
例えば、生命保険会社にとって想定外の死亡率、損害保険分野における軟調な市場の長期化、および保険契約者の行動の不確実性など、再保険商品に関して対処が必要となる短期的な戦術的課題を踏まえ、金利に関連する価格調整を組み込んだ再保険契約等が考えられる。
今後の米国の規制動向については、「保険における2017年の規制動向(Navigatig the year ahead - Insurance regulatory outlook 2017)」を参照。
<今後のERMへの示唆>
- 新たに出現しつつある資本要件(ソルベンシーⅡや格付け会社のベンチマーク、包括的資本分析およびレビュー(Comprehensive Capital Analysis and Review: CCAR)など)に伴い、損害保険会社に要求される資本が総じて増加している。その結果、他の条件がすべて同じならROC(Return on Capital)が低下することになるため、内部管理および利害関係者の期待を充足する目的で、リスクに関する知見の向上、それを形式知化し組織内に浸透させること、ERMの実行性を高めていくことが必要になる。その流れの中で、再保険戦略の見直し・高度化の検討が必要になろう。
- 同時に、環境変化によるビジネスモデル変革の圧力が高まっている。ビジネスモデルの変更はリスクポートフォリオの変更と表裏の関係にある。特に保険セクターにおいては、ビッグデータやアナリティクスの活用の拡大、モデル化能力の強化の要請が強くなろう。ERMの実行性の観点から、人的資本の充実、環境変化を踏まえた戦略を確実に遂行するための適正人材の確保への一層の注力が必要となろう。
会議の詳細については、デロイトのレポートを参照ください。
原題 :Reinsurance as a capital management tool(PDF)
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(ブロシュア、PDF、384KB)