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金融庁が「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表

月刊誌『会計情報』2020年7月号

『会計情報』編集部

金融庁は、ASBJが公表した議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症に関する開示の考え方」(2020年4月10日、2020年5月11日追補)を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表した。概要は以下の通り。

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1. はじめに

新型コロナウイルス感染症の広がりは、多くの上場企業等の経済活動に影響を与えており、こうした不確実な経営環境において、経営者の視点による充実した開示を行うことは、投資家の投資判断にとって重要と考えられる。また、このような開示は、投資家と企業との建設的な対話を通じた持続的な企業価値の維持・向上にも資するものと考えられる。さらに、世界的な広がりを見せている今般の感染症について、こうした観点から開示の充実が図られることは、我が国の資本市場の信頼性の向上にも資すると考えられる。

 

2. 有価証券報告書における新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示

(1)財務情報における追加情報の開示

ASBJから議事概要として「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」が公表されている(2020年4月10日公表、5月11日追補)。

当該議事概要では、財務情報において、「どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、財務諸表の利用者が理解できるような情報を具体的に開示する必要があると考えられ、重要性がある場合は、追加情報としての開示が求められる」とされている。

また追補では、「当年度に会計上の見積りを行った結果、当年度の財務諸表の金額に対する影響の重要性が乏しい場合であっても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われ、開示を行うことが強く望まれる」とされている。

このように「会計上の見積り」の開示は、投資家が財務諸表を理解する上で有用な情報と考えられ、新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象については、財務情報である追加情報において、会計上の見積りに用いた仮定をより具体的に開示することが強く期待される。

(2)非財務情報(記述情報)の開示

非財務情報(有価証券報告書における、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」等)では、2020年3月期決算から適用される企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(以下、「改正内閣府令」という。2019年1月31日公布・施行)において、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、「当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響」などを開示することが求められている。ただし、この内容を財務情報である追加情報において開示した場合には、非財務情報の開示ではその旨を記載することによって省略することができるとされている。

また、「会計上の見積り」以外では、非財務情報において、今般の新型コロナウイルス感染症の影響について、「事業等のリスク」における感染症の影響や対応策、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」における業績や資金繰りへの影響分析、経営戦略を変更する場合にはその内容等の充実した開示を行うことが強く期待される。

(3)有価証券報告書レビューによる対応

非財務情報における改正内閣府令に関する開示内容については、2020年3月27日に公表している通り、有価証券報告書レビューの対象となっており、これには新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示も含まれるとされている。

また、ASBJの議事概要(追補を含む)の公表を踏まえ、財務情報における、新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定に関する追加情報の開示についても、上記の有価証券報告書レビューの対象に含めて審査することとされている。

詳細については金融庁のウェブページを参照いただきたい。
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200521.html

以上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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