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ASBJが実務対応報告公開草案第60号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」等を公表
月刊誌『会計情報』2020年11月号
『会計情報』編集部
企業会計基準委員会(ASBJ)は、2020年9月11日に、以下の実務対応報告等の公開草案(以下「本公開草案」という。)を公表した。
- 実務対応報告公開草案第60号
「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」(以下「実務対応報告案」という。) - 企業会計基準公開草案第70号(企業会計基準第5号の改正案)
「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」(以下「改正純資産会計基準案」という。) - 企業会計基準適用指針公開草案第69号(企業会計基準適用指針第8号の改正案)
「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)」(以下「改正純資産適用指針案」という。)
2019年12月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号。以下「改正法」という。)により、「会社法」(平成17年法律第86号)第202条の2において、金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないことが新たに定められた。これを受けて、ASBJでは、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする場合における会計処理及び開示について審議を行ってきた。今般、2020年9月10日開催の第441回企業会計基準委員会において、本公開草案が承認され、公表された。
<本公開草案の概要>
■適用範囲(実務対応報告案第3項及び第25項)
- 実務対応報告案は、会社法第202条の2に基づく、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引を対象とする。
- 実務対応報告案は、いわゆる現物出資構成により、金銭を取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付させることによって株式を交付する場合には適用されない。
■会計処理
●会計処理の基本的な考え方(実務対応報告案第34項から第37項)
- 実務対応報告案の適用対象としている取締役の報酬等として株式を無償交付する取引については、いわゆる事前交付型と事後交付型が想定されるが、自社の株式を報酬として用いる点で、自社の株式オプションを報酬として用いるストック・オプションと類似性がある。両者は、インセンティブ効果を期待して自社の株式又は株式オプションが付与される点で同様であるため、費用の認識や測定については、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)の定めに準じることとしている。
- 一方、株式が交付されるタイミングが異なる点や、事前交付型において、株式の交付の後に株式を無償で取得する点については、取引の形態ごとに異なる取扱いを定めている。
●事前交付型(実務対応報告案第4項(6)、同項(7)及び同項(16))
(1)新株の発行により行う場合の会計処理
- 割当日における取扱い(実務対応報告案第39項)
- 対象勤務期間における取扱い(実務対応報告案第5項から第10項)
- 没収における取扱い(実務対応報告案第11項)
(2)自己株式の処分により行う場合の会計処理
- 割当日における取扱い(実務対応報告案第12項、第43項から第45項)
- 対象勤務期間における取扱い(実務対応報告案第13項)
- 没収における取扱い(実務対応報告案第14項及び第46項)。
●事後交付型(実務対応報告案第4項(6)及び同項(8))
(1)新株の発行により行う場合の会計処理
- 対象勤務期間における取扱い(実務対応報告案第15項)
- 割当日における取扱い(実務対応報告案第16項)
(2)自己株式の処分により行う場合の会計処理
- 対象勤務期間における取扱い(実務対応報告案第17項)
- 割当日における取扱い(実務対応報告案第18項)
実務対応報告案における上記の定めにより、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目として、新たに株式引受権を計上するとしたことから、改正純資産会計基準案及び改正純資産適用指針案において、株式引受権を追加している。
●その他の会計処理(実務対応報告案第19項及び第50項)
実務対応報告案の適用対象としている取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、実務対応報告案の開発段階においては改正法の施行前であり、当該取引の詳細は定かではないことから、基本となる会計処理のみを定めている。そのため、実務対応報告案に定めのないその他の会計処理については、ストック・オプション会計基準や企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「ストック・オプション適用指針」という。)の定めに準じて会計処理を行う。
■開示
●注記(実務対応報告案第20項、第21項及び第51項)
- 実務対応報告案では、費用の認識や測定はストック・オプション会計基準の定めに準じることとしていることから、ストック・オプション会計基準及びストック・オプション適用指針における注記事項を基礎とし、ストック・オプションと事前交付型、事後交付型とのプロセスの違いを考慮して、次の注記項目を定めている。
(1)事前交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限る。)
(2)事後交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限る。ただし、権利確定後の未発行株式数を除く。)
(3)付与日における公正な評価単価の見積方法
(4)権利確定数の見積方法
(5)条件変更の状況
- 当該注記事項の具体的な内容や記載方法については、ストック・オプション適用指針の定めに準じて注記を行うこととしている。
●1株当たり情報(実務対応報告案第22項)
- 事後交付型におけるすべての権利確定条件を達成した場合に交付されることとなる株式は、企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」第9項の「潜在株式」として取扱い、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定において、ストック・オプションと同様に取扱う。
- 株式引受権は1株当たり純資産の算定上、企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」第35項の期末の純資産額の算定にあたっては、貸借対照表の純資産の部の合計額から控除する。
■適用時期等(実務対応報告案第23項)
本公開草案では、改正法の施行日以後に生じた取引から適用することとしている。
なお、コメント期限は2020年11月11日(水)までとされている。
詳細については、ASBJのウェブページ(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2020/2020-0911.html)を参照いただきたい。
以上
本記事に関する留意事項
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