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JICPA:企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等の公表に伴う実務指針等の改正及び廃止について(公開草案)

月刊誌『会計情報』2023年6月号

『会計情報』編集部

日本公認会計士協会は、2023年5月2日に以下の実務指針等の改正及び廃止を公表した。

日本公認会計士協会(会計制度委員会、業種別委員会及び監査・保証基準委員会)では、企業会計基準委員会(ASBJ)から2023年5月2日に公表された企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第73号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」等(以下、これらを合わせて「リース会計基準案等」という。)に対応するため、以下の実務指針等について見直しを行った。今般、一通りの検討を終えたため、公開草案として公表し、広く意見を求めることとしたとされている。

コメント募集期間は、2023年8月4日(金)までとされている。

510KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

1.対象の実務指針等

【改正対象】
  • 会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」
  • 会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」
  • 会計制度委員会「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」
  • 会計制度委員会研究報告第12号「臨時計算書類の作成基準について」
  • 業種別監査委員会報告第19号「リース業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」
  • 業種別委員会実務指針第53号「年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針」
  • 業種別委員会実務指針第65号「投資法人における監査上の取扱い」
  • 監査・保証実務委員会実務指針第90号「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」
【廃止対象】
  • 会計制度委員会報告第5号「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理に関する実務指針」

 

2.改正の背景

ASBJにおいて、日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、借手の全てのリースについて資産及び負債を認識するリースに関する会計基準の開発に向けて、国際的な会計基準を踏まえた検討が行われており、基本的な方針として、IFRS第16号の単一モデルを基礎とするものの、IFRS第16号の全ての定めを採り入れるのではなく、主要な定めのみを採り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ、IFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となることを目指したリース会計基準案等が公表された。これに伴い、実務指針等についても改正及び廃止する必要が生じたため、ASBJからJICPAに対し、実務指針等の改正及び廃止の検討の依頼があり、JICPAによる検討の結果、実務指針等の改正及び廃止を行うものであるとされている。

 

3.改正内容等

実務指針等の主な改正内容等として、以下が提案されている。

(1) ASBJからの改正依頼による主な改正

① 用語の変更

以下の現在の用語を変更案のとおり改正する。

  • (現在の用語)リース取引
    ⇒ (変更案)リース
  • (現在の用語)リース資産
    ⇒ (変更案)使用権資産
  • (現在の用語)リース債務
    ⇒ (変更案)リース負債
② 借手の会計処理

借手のリースの費用配分の方法について、IFRS第16号と同様に、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、全てのリースを金融の提供として捉えて、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルにする。

(2) ASBJからの改正依頼によらないJICPA独自の主な改正

① 業種別監査委員会報告第19号「リース業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」
  • 「2.リース業における負債の包括ヘッジの取扱い」は、ヘッジ取引のうち2000年4月1日以後開始する最初の事業年度末までに行ったヘッジ取引契約(ただし、最長契約期間10年以内のものに限る。)を適用の対象としており、既にその役割を終えているため削除する。
  • 当文書の名称を「業種別監査委員会報告第19号」から「業種別委員会実務指針第19号」に変更する。
② 業種別委員会実務指針第53号「年金基金の財務諸表に対する監査に関する実務指針」、同実務指針第65号「投資法人における監査上の取扱い」及び監査・保証実務委員会実務指針第90号「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」
  • 監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」及び保証業務実務指針(序)「保証業務実務指針及び専門業務実務指針並びに関連する公表物の体系及び用語」(2022年7月21日公表)に伴う適合修正を行う。

(3) ASBJからの廃止依頼

① 会計制度委員会報告第5号「連結財務諸表におけるリース取引の会計処理に関する実務指針」
  • リースの連結上の会計処理の取扱いを示すという意義はあるものの、実際に示されている会計処理は、一般的な連結財務諸表の連結修正仕訳の考え方と大きく変わらないものであるため廃止する。

【参考】

ASBJより公表されているリース会計基準案等は、ASBJのウェブサイトをご参照いただきたい。

詳細については、JICPAのウェブページ(企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等の公表に伴う実務指針等の改正及び廃止について(公開草案)|日本公認会計士協会 (jicpa.or.jp))を参照いただきたい。

以上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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