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「やりきる」ことを重視した、組織・人材変革(人材育成)

組織・人材変革の一つのカタチ、「伴走型支援」のご紹介~第3回~

今回は、人材育成の中でも人材開発会議における伴走支援のアプローチについて取り扱います。人材開発会議は、次世代リーダー人材やコアとなるミドル層の育成に向け、現在の育成状況のモニタリングと今後のアサインメントやジョブローテーションを議論・決定していく仕組みですが、本テーマに伴走型支援が必要とされる背景や当社でよく実施するアプローチをご紹介します。

伴走型支援 × 人材育成

今回は、人材育成の中で人材開発会議における伴走支援のアプローチについて取り扱います。人材開発会議は、人材育成委員会やタレントレビュー会議など、様々な名称で導入されていますが、基本的な位置づけは次世代リーダー人材や特定層(コア人材となるミドル層)の育成に向け、対象となる人材の育成計画(今後のキャリアパスや経験させたいことを中長期に計画したもの)を踏まえ、現在の育成状況のモニタリングと今後のアサインメントやジョブローテーションを議論・決定していく仕組みです。

会議の場では、自社の次期幹部候補人材や次部長層の育成を巡って、どういうポストでどのような経験を積ませるべきか、長期的なリテンションをどのように行っていくかを徹底的に議論していくのがありたい姿です。しかし、予定調和的もしくは、人材情報の共有・今後の計画の説明と散発的な質問に終始してしまい形骸化・機能不全となっているケースも少なくありません。そのような背景も踏まえ、実効性の高い仕組みとしていくために伴走支援ができることご紹介していきます。

人材開発会議がうまくいかない典型的な問題

議論の対象となる人材の層(全社の経営人材候補、部門の管理職候補など)によって濃淡は異なりますが、概ね以下のような状況に陥りがちです。

  1. 人材情報の不足による育成計画の検討不足
    人材委員会に参加する参加者が議論対象となる候補者についてあまり知らないというケースが意外と多く、自身が担当する人材以外の育成状況やその後の計画に対して何をコメントしたらいいかわからない
  2. 印象論による散発的な議論
    見聞きした評判、議論対象の人材との限定的な接点のみから議論を始めてしまい、「結局、どのようなアクションが必要なのか?」ということが決まらない、もしくは曖昧なまま終了してしまう
  3. 人材開発会議の参加者の利害関係による結論の先送り
    経営人材候補の育成会議などで起こりがちですが、自部署の優秀な人材を異動させたくない、あの部門とは距離があるので、意見しづらいなど、会社内部固有のパワーバランスや関係性が原因で議論が進まない、もしくは実行されず計画倒れになってしまう

人材開発会議の定着に向けた伴走型支援のアプローチ

上記に挙げた3つの陥りがちなケースに対して、議論のアジェンダを丁寧に設計する、育成計画のフォーマットを工夫するなど、様々な工夫が行われていますが、本来の人材開発会議に期待する成果には結びつきません。結局のところ仕組みの精緻さよりも、人材の成長計画をとことん議論し、ジョブアサインやジョブローテーションをはじめとしたアクションにつなげ、結果を検証することを愚直に行っていくことがこの取り組みの核心です。そこがうまくいかず、タレントマネジメントの仕組みとして人材開発会議を導入したクライアントから、実際の会議に出席して、定着まで伴走・フォローをしてほしいとの要望を頂くことがあります。この要望に対し、私たちは伴走支援を通じ、定着に向けた支援を行っていきます。

A 人材情報の充実化と育成計画策定のサポート

育成計画の検討を効果的におこなうため、多面的な情報提供(人事考課、360°評価、リーダーシップアセスメントなど)に取り組まれている会社も多いと思います。しかし、情報が多様過ぎる、各情報の収集目的や位置づけが曖昧なままとなっていると、課題設定には活用しにくくなってしまいます。ですので、人材情報において何が見たいのかを整理し、必要となるアセスメントツールを選定することが大事です。そのうえで、現場の負荷と育成計画の効果性の両面から育成計画策定に盛り込む要素を検討します。ともすると現場の負荷を考慮するがあまり、必要な要素が検討されない、反対にあれもこれも盛り込み過ぎるということが起こりしがちですが、効果性と運用負荷及び、活用に向けた周知・浸透策も視野に入れながら、育成計画策定のプロセスや育成計画シートなどを設計します。これにより、実際に活用する現場のキーマン(例えば次世代経営人材育成の責任を担う部長など上級管理職)が育成計画を策定するにあたって、対象人材の課題の見立てについてアセスメント結果などを見ながらディスカッションし、それをもとにした計画内容へのフィードバックを行うことで計画の質を向上する、“魂が込められた”育成計画を策定していくことが可能になります。このように人材開発会議までのプロセス設計と、実際に各育成責任者の計画策定に伴走することを通じて、現状と課題とアクションが一貫した育成計画の立案を支援していきます。

B ファシリテーター機能のサポート

事実に基づいた議論が行われているかどうか、印象論で議論が行われていないか、議論がかみ合っているか、議論が収束に向かっているか、結論が出せているか、など場の状況を踏まえて人材会議をファシリテートしていくことが求められます。その役割は主に人事担当の皆様が担われることが多くあります。一方で内部関係者であるがゆえに、ファシリテーションをしにくいことが多いのも実情です。私たちは実際に会議に出席し、第三者的立場から議論の状況を見守りつつ、議論がかみ合わない、内容が逸脱している場合などに介入を行い、メインファシリテーターをサポートします。特に、人材育成に関する議論は個別性が高く、これが正解というものはありませんので、議論が拡散しがちです。よって、育成施策を決定するうえで必要となる、対象人材の特徴、今後のポテンシャル/課題を言語化・明確にすることと、その課題を解決するアクションになっているかをしっかり吟味する必要があります。そのために、ファシリテーターには、課題とアクションの整合性を確認することや、一般論を交えながら決定の後押しをしていくことが求められています。

C 客観的なフィードバックの提供によるレディネスの醸成・取り組みに向けた動機付け

特に、利害関係などから議論が全体最適ではなく個別最適になってしまうことが懸念される場合には、人材開発会議の冒頭、育成対象者全員のアセスメントデータから全体的な育成課題を提起し、会議の議長から参加者に全体最適の視点を持った議論を行ってほしいことを要望してもらうなど、利害関係のない外部だからこそできる“率直なフィードバック”によって参加者の意識には働きかけることが重要です。

人材育成の取り組みは、重要性は誰も否定しませんが、事業課題が優先され劣後しがちです。人材開発会議では、5年、10年を見据えた配置ではなく、現状の最適配置に優先順位がおかれがちです。こういった場合には、アセスメントデータとポストに対する候補人材の顔ぶれを見せながら、この状況に問題がないかを投げかけることなどを通じて、事業運営と人材育成が密接に結びついていることを示していくことでレディネス醸成を図っていきます。

最後に

今回は人材開発会議を題材に、機能不全に陥る要因と私たちのアプローチを簡潔にご説明しました。人材開発会議に限らず、人材開発の重要性は誰しも否定しませんが、優先順位が劣後しやすいテーマといえます。これが唯一の解ではありませんがご参考になれば幸いです。

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