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「やりきる」ことを重視した、組織・人材変革(エンゲージメント向上)

組織・人材変革の一つのカタチ、「伴走型支援」のご紹介~第2回~

前回は、伴走型支援が求められる背景やその必要性について論じてきましたが、今回から3回にわたり、個別テーマに対する伴走型支援についてご紹介します。今回は「従業員エンゲージメント向上」がテーマです。エンゲージメントとは、従業員と会社・仕事の相互の「結びつきの強さ」を指す概念であり、本テーマに伴走型支援が必要とされる背景や当社でよく実施するアプローチをご紹介します。

伴走型支援×従業員エンゲージメント向上

前回は、伴走型支援が求められる背景やその必要性について論じてきましたが、今回から3回にわたり、個別テーマに対する伴走型支援についてご紹介します。今回は「従業員エンゲージメント向上」がテーマです。

エンゲージメントとは、従業員と会社・仕事の相互の「結びつきの強さ」を指す概念で、昨今ご相談を受けることが多いテーマです。
「我が社の従業員は何か元気がない。離職率が若手層を中心に上がってきており、組織全体を見渡しても、新しい戦略に追随してきている感覚がない。解決に向け、是非施策の提案だけではなく、現場に伴走して実施してもらえないか。」

先日もこのようなご相談を受けました。この会社のように、従業員のエンゲージメントに課題があった時に、伴走型で解決してほしい、と考える会社は増えてきたように見受けられます。

従業員エンゲージメント向上の定義・必要性

従業員エンゲージメントが高い状態とは、会社の目指す姿に向けて、従業員一人ひとりが主体的に思考・行動している状態を指します。(従業員視点の「満足度」の向上とは異なります)一方で、従業員エンゲージメントが低くなると、離職率の高まり、メンタル疾患の増加、イノベーションが生まれない、従業員に活力がない、等、負の影響が組織に現れてしまいます。

伴走型支援×従業員エンゲージメント向上のアプローチと必要性

では、なぜ従業員のエンゲージメントを高める上で、伴走型支援が必要とされるのでしょうか。一言でいうと、「実行力を最大化する」ということにあります。当社でよく実施しているアプローチとそのポイントをご紹介します。まず、アプローチとしては、以下の1~5までの流れを支援しています。一部のみ支援することもありますが、打ち手に伴走する場合は、その前段で組織・従業員の状態を読み解き、理解している必要があります。従業員がエンゲージメントを感じる肝は何か、なぜそれが高まらないか、等把握した上で伴走することで、実行力を最大化することに繋げています。

  1. 描く:従業員エンゲージメントが向上した後の組織の状態を描く。
  2. 調べる:従業員・組織の状態を、サーベイ・インタビューを用い調べる。
  3. 読み解く:調べた結果を読み解き、エンゲージメントの状態・要因・組織の状態を理解する。
  4. 打ち手を考える:エンゲージメントを向上させる上で効果的な打ち手を考える。
  5. 打ち手を実行する(伴走する):打ち手に対して、伴走し実行力を向上させる。

「伴走型支援」は、主に上記の「5」の部分を指しますが、「1」~「4」に対しても「伴走」的な要素を重視しています。多くのコンサルタントは、提言する、示唆を述べることを重視しますが、当社ではクライアントの皆さまが納得感を持ち、本活動を自ら推し進めることを重視しています。これは施策を「絵に描いた餅」にさせることなく、「5」の実行に着実に進めるようにする1つのポイントとなります。

例えば「3.読み解く」において、自社内のみで実施した場合、検討する社員によって読み解き方が偏ってしまう、声の大きい方が「課題」と思われているところに終始してしまう、等の状況に陥りがちです。また、その場合、社内の多くのステークホルダーの合意形成を取っていくにはかなりの労力がかかります。そのため、第三者の視点が入り、伴走することで、より組織や人そのものについてニュートラルに把握できるようになり、合意形成もしやすくなります。

次に、「4.打ち手を考える」において、自社内のみで実施した場合、「組織の意向」を重視しすぎてしまうケースをよく見かけます。今まで多くの企業が採ってきたピラミッド型組織・トップダウンマネジメントでは、組織の意向を重視し、人材をどう変えていくか、が命題であったように感じます。また、現在の多くのマネジメント層は、そういった組織の中で成果を上げていた人材が就いているケースが圧倒的に多い状況です。この場合、「従業員エンゲージメントを高めたい」という意向はあるものの、いざ施策の実行場面になると、「どう組織の意向に合わせて、人を変えていくか」という視点で考えがちです。本来、従業員エンゲージメントとは、人と組織の動きを合致していく必要があるため、人を変えるだけでなく、同時に組織も人に合わせて変えていく必要があります。片方だけを重視した結果として、施策が従業員に対して響かない現象が起きることがあります。この部分についても伴走型での支援の仕方であれば人と組織のバランスを鑑み、検討していくことが可能です。

次に、「5.打ち手を実行する」において、自社内のみで実施した場合、全社的な制度を改定し、あとは管理職や組織単位での自助努力に頼ってしまうケースもよく見受けられます。この場合は、全社一律で従業員エンゲージメントを高めていく動きが作りにくく、停滞してしまうことがあります。やはり確実に実行力を高めるためにも、伴走型支援において社外の第三者的な視点を入れつつ、従業員の「背中を押す」動きを作っていく必要があります。具体的には、施策を詳細かつ具体的なアクションに落とし込み、主体・マイルストンや期限をクライアントと一緒に決めた上で実行していきます。もし実行できない場合には、なぜ実行できないか理由・原因を明確にした上で、それを取り除くことが可能か、どのようにしたら取り除き、施策の実行に繋げられるか、という部分を一緒に検討していきます。様々な理由で施策が実行できない、と思われる場合でも、少しやり方を変える、場合によっては「4.打ち手を考える」で決めた施策をチューニングし、同じような成果を上げられるように再考するケースもあります。施策の実行を目的にせず、あくまでも「1.描く」で可視化したエンゲージメントが向上した後の姿をどのように体現するか、という部分に重きを置き、高頻度で進捗確認と対話を繰り返します。これにより、良い意味で「逃げられない」状況を作りだし、施策の実行が一定の効果をもたらすことに繋がります。

実際に、冒頭に紹介した伴走型支援を希望したクライアントには、従業員参加型のワークショップの場を提供し、ファシリテーションを行いました。当初は、日々の業務に忙殺されながら「こなす」ような感覚を持っていた従業員でしたが、現場に寄り添う形でワークショップを何度か実施し、従業員の言動や組織運営の仕方を少しずつアラインしていきました。具体的には、よりよい組織にしていくために、自身や組織が取り組めることを挙げていただき、マイルストンを設定して進めていきました。自発的な施策の立案・実施により、組織の方向性に対する自分事化が徐々になされ、結果的にエンゲージメント向上に寄与しました。このように、現場に寄り添ったアプローチは、社員個人のエンゲージメントを高めることに寄与していくものと思います。

最後に

昨今は「共創」や「コラボレーション」が重要と言われており、マーケットの中での価値の出し方が多様化しています。従業員エンゲージメントの向上は、社内のテーマ・課題であるものの、コンサルタントとともに解決していくことや、時には他業界の企業と解決していくことも考えられます。それによって、この状態が「普通」となっていたその概念が変わる、あるいは、今までとは異なる見方に気づく場合もあります。是非一度社内の課題を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

 

次回は、伴走型支援 × 人材育成のテーマを取り上げていきます。

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