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「やりきる」ことを重視した、組織・人材変革(働き方改革)
組織・人材変革の一つのカタチ、「伴走型支援」のご紹介~第4回~
今回は、伴走支援による現場改革、特に働き方改革について取り扱います。依然日本では長時間労働がなかなか改善されない中で、本テーマに伴走型支援が必要とされる背景や当社でよく実施するアプローチをご紹介します。
はじめに
今回は伴走型支援における現場改革の本質に触れていきます。現場改革の中でも、当社として実績の多い働き方改革について取り扱います。そもそも最近は「働き方改革」という言葉自体、聞かなくなってきましたが、実際に改革に取り組んだ日本企業は、以前と比して生産性が向上したのでしょうか。働き方改革という言葉を聞き始めた6~7年前は、「長時間労働の改善」と「リモートワークの促進」を通じて、社員にとって働きやすい環境を整備するエンゲージメント向上を目的とした取り組みが多かったと思います。
しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、図らずともリモートワークは爆発的に加速しました。Web会議ツールを使うことが文化的に馴染まなかった会社でさえ、社会的な要請もあり、リモートワーク導入へ対応せざるを得なかったのです。一見、働き方の柔軟性は高まり、自然と働き方改革が進んだように見えますが、仕事の進め方やコミュニケーションの方法自体は大きく改革できておらず、実際はさらに長時間労働が進んでしまった企業が多いのではないでしょうか。
なぜ、働き方改革の成果は出にくいのか
働き方改革に各社取り組んできたものの、なぜ長時間労働が改善されないのか。答えは簡単です。ご承知のとおり、日本企業はやはり真面目で、仕事を減らすことに向かない体質だからです。とにかく、丁寧に仕事を進めることが暗黙の了解で求められ、それが日本企業の美学でもあります。よって、大半の日本企業では、不要な仕事や丁寧過ぎる仕事の進め方が見直されないまま、現在に至っているのだと思います。
私たちの伴走型支援では、そういった仕事の進め方をゼロベースで見直す機会をつくることで、ムダを削減しながらも、付加価値や新しいチャレンジをするための余力と職場の空気感を生み出すことに力点を置きます。ムダを減らすだけの表面的な改革では、時間が経つとまた元に戻ってしまうからです。そして、一時的な改革で終わることなく、カルチャーとして組織全体に改革の成果を定着させるために、螺旋階段を登るかのように定期的に業務の棚卸しと見直しを図りつつ、仕事の質を高める営みを仕組み化する支援を行っています。
現場改革の本質とは
結論的に申し上げると、現場改革における成果創出で重要なことは、一定効果が見込まれる施策を“まず実行してみる”ことで、上手くいかない点・ボトルネック・改善点等を手早くあぶり出し、クイックに修正を図っていくサイクルを回していくことです。現場改革を成功させるためには、こういった当たり前のPDCAにおけるC(チェック)・A(アクション)のサイクルを高頻度で回していくことが不可欠です。最初から100点の効果を出せる施策を机上では考えられません。大きなチェンジをともなう変革においては、“アジャイル”に実行してみることを通じて、段階的に精度を上げていくスタンスが重要になります。
働き方改革を始めとした、現場改革をアジャイルに進めることのメリットは、自組織の文化にフィットした方法を生み出せることです。会社によって社員のタイプやビジネスの種類も異なるので、織りなされる文化も当然多種多様になってきます。上記サイクルを通じて、自社にとって本当に効果が見込める施策を正式なルールや制度にして展開することで、人事や事務局の自己満足にならない現場にフィットした改革に仕立てることができるのです。
社員起点で改革施策を検討する際のポイント
私たちの伴走型支援は、社員が起点となる現場改革において成果を出すために効果的なアプローチだと考えています。以下、主なポイントについて触れておきたいと思います。
①社員自身が問題点を考えるように促す
働き方改革のような現場改革のポイントとしては、初期の段階で、ある意味愚痴にも近いような問題点を関係者全員で洗い出しつくすことです。蓄積された違和感を溜め込んだまま、前向きな議論をしようとしても、仕事そのものにネガティブな感情を抱いた状態では建設的な議論はできません。私たちの伴走型支援では、関係者が思いを洗い出し、前向きな思考を始めるスタート地点に立てるように導いていきます。
②本音ベースで、あるべき状態を考える
どのような会社でも、効率が悪いと感じながらも、上位者に言えないまま何となく長年の習慣で続けている仕事は結構な数で存在します。よって、伴走型支援の初期討議では、私たちのファシリテーションのもと、そういった実態を確認するためにも、メンバークラスだけ集まって本音ベースで問題点の洗い出しやあるべき状態の要望を確認する場を作ることが多々あります。そして、そのインプットをふまえ、客観的に課題を特定した上で、関係者全員で施策を考えていきます。
③自分たちが納得感を持てる施策を検討する
人は命令や指示されたことに対しては、コミットメントが薄まるどころか反発さえも生んでしまいます。どうすれば困りごとが解消されるのかというお題に対して意思決定者も交えながら、オープンかつフラットに自分たちが納得して取り組める施策を検討するように支援します。事務局やコンサルタントが考えた施策はやらされ感があることが多く、継続的して実行しようと思える納得感のある施策は実行する社員自身こそが生み出せると考えます。
そもそも、働き方改革のような現場改革の成果は、労働時間の削減やリモートワークの促進ではなく、「仕事の進め方そのものを柔軟に変える体質になること」だと私たちは考えます。本連載の初回でも触れましたが、“VUCA”と呼ばれる変化の激しい時代では、「変化への対応力」をつけることが現場改革で狙うべき本来の成果です。私たちの働き方改革における伴走型支援でも、労働時間の削減を短期的なクイックウィンとして当然狙いながらも、中長期的には、変化への対応力を身に着けることに主眼に置いて支援をしています。
最後に
今回はすでに大多数の企業で取り組まれている働き方改革というテーマに触れました。本連載では、働き方改革同様、広く取り組むべき普遍的なテーマ(エンゲージメント、人材育成)について取り扱ってきました。いずれも人事領域ではしばしば取り上げられますが、仕組化したとしても形骸化してしまう、一時的な効果に留まってしまうなど、成果創出の壁は高いテーマです。私たちはそのような状態に陥らないよう、変革ロードマップの実行に伴走し、予期しきれなかった課題にも対処していきながら成果創出・その後の定着につなげていくことを信条としています。これまで記載したように「実行と検証を重ねて、自社らしい改革のあり方」を模索する現場改革の取り組み方のご参考に頂けると幸いです。
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