ナレッジ

伴走型支援サービスの事例 前編

デロイト トーマツ人材機構シリーズ 第4回

当社が実践する伴走型支援サービスに関して、第2回において地域企業経営者および地域企業へ転職した経営人材に対する一つの意識調査結果からその意義について、また第3回では本質的な側面について実務面から共有しました。今回および次回において、この伴走型支援サービスの事例についてご紹介します。

I.はじめに

地域企業側には生産性向上に寄与し得る経営人材・後継者等を域内・域外からスムーズには獲得できない課題があり、また、潜在的候補人材側においても次の活躍の場として地域企業を現実的な選択肢として認識し難いという課題がある。この課題解決に向けた一つのシンプルな支援の形が伴走型支援サービスである。担当者が、その目や耳で客観的事実を可能な限り収集・認識し、時として事業性評価に準じた分析を行い、案件端緒から、各局面、以後の方向性について仮説を準備し、関係者との対話を通じ検証を繰り返しながら、人材紹介およびその定着まで支援するこの一連の流れが伴走型支援サービスである。

II.伴走型支援サービスの事例

ここからは当社が支援した事例を紹介したい。

事例1.国内有力養殖業における経営層の「右腕人材」採用

~Uターン就職で介護との両立も可能に~ 

会社属性:伝統的食材に係る養殖業における地方企業であり、国内市場でトップ。日本全国を商圏とし海外進出も始めている。

経営課題:特定商材で国内シェアトップ企業であるが、当該商材の食文化を途絶えさせることなく、今後も永続させていくという使命を全うするためには、今後も高い品質を維持しながら、既存の養殖、流通および製造方法に留まることなく付加価値を高めた商品や販売手法の開発を実現し、業界をリードしながら時代のニーズに応え続けていかなければならない。

経緯:企業努力により業績拡大を実現してきたが、この成長速度に対して組織体制構築および人的資源の確保が追いついていない状況で、上記経営課題へ対応するためには、外部からの人材招聘が必要であるとは考えていた。しかしながら「どのような人材が望ましいのか?どの様な役割を担っていただき、何を目標としてもらうのか?」等が不明瞭であった。当社は経営者との面談・ディスカッションを重ねながら、これらの各重要なポイントを相互に明らかにし、社長・副社長の右腕として特に組織構築、営業企画強化に強みを持ち、経営全般について関与し得る人材を外部招聘する方向で人材探索を開始することとなった。

人材ミッション:社長・副社長の右腕として組織構築、営業企画強化、経営全般。

決定人材:
ポジション:執行役員 営業企画本部長 兼 経営企画本部長
年収:前職基本給水準+業績賞与(想定150~200万円)+住宅手当
プロフィール:40歳代後半男性。前職は他業種で営業所長兼管理部長。東京在住。

決定要因:

【企業側】
経験・スキルおよび人柄面で組織構築が出来る幹部人材として相応しいと判断。社長・副社長(オーナー家兄弟)に次ぐ社内ナンバー3のポジションを用意し、条件面も役員待遇に社内調整のうえ、採用。

【決定人材側】
出身地に戻り地元貢献に積極的な企業の経営幹部人材としてやりがいを持って仕事に取り組める。全くの他業種からの業界チェンジとなるが今までの経験を生かしながら新しいことに挑戦できる。さらには高齢になる親が暮らす実家に戻ることで介護等の対応も出来る。

【案件担当者コメント】 

  • 決定人材に対して:初めての転職でしかも全く違う業界への転職となることへの不安を払拭するため、同社事業内容の詳細、業界でのポジショニング、将来におけるさらなる成長可能性、社長の人柄や職場環境、地域情報等、一般的な求人情報だけでは知りえない様々な情報提供および諸々のアドバイスを実施し、最終的にオファー受諾・良い選択をしていただいたと考えている。
  • 企業に対して:候補者の優れている点を一つ一つ説明し、人柄も含め強く推薦(候補者との面談で企業にフィットする確信を持っていたため) 、オファー条件面でも各種交渉し、対象企業の所在地域でも好条件をご用意いただくことが出来たと考えている。

【フォロー・現在】 

  • 当初からのミッションである組織体制構築、人事評価制度改善、営業戦略企画立案、新規開拓営業、営業企画強化などを中心に経営層を執行役員として支えながら活躍されている。

 

事例2.地域を代表するメーカーにおける「海外拠点代表者」採用

~海外駐在経験を活かしたチャレンジングなポジションに挑戦~

会社属性:工作機械、自動車部品、建設機械等を製造する有力メーカー。

経営課題:海外展開中(北米、アジア、欧州)であるが海外事業を牽引する人材(役員クラス)が不足。

経緯:海外ビジネスを牽引する人材(役員クラス)が不足していると当社へ相談が寄せられた。企業との面談・ディスカッションを重ねながら、同社海外事業の方向性等を確認しながら、社内事情・カントリーリスク等を勘案し優先順位をつけ、北米の現地法人の社長を任せることの出来る人材を外部招聘する方向で合意し人材探索を開始することとなった。

人材ミッション:北米にある現地法人(製造拠点)代表取締役社長として経営全般。

決定人材:
ポジション :北米現地法人代表取締役社長。本社に入社しその後、現地法人へ出向し就任。
年収 :前職基本給10%超アップ+業績賞与(想定200~300万円)+海外赴任手当
プロフィール :40歳代後半男性。国内大手メーカーにて製造、技術開発、生産管理等に従事。
北米駐在経験有り。同地域にて新工場立上げの経験も有する。

決定要因:

【企業側】
国内大手メーカーでの経験、管理職としての知識経験、海外駐在経験および人柄面で幹部人材として相応しいと判断し、現地法人社長候補としてオファーすることとなった。

【決定人材側】
今までの経験が活かせるミッションでかつチャレンジングなポジションが魅力。また本件における着任予定地域には過去数回赴任した経験があり国柄も理解している。さらに今回の募集ポジションは、現職に留まった場合には今後10年以上先でないと就けないポジションであり是非今回挑戦してみたい。

【案件担当者コメント】 

  • 決定人材に対して:初めての転職活動となるため、職務経歴書の内容・面接の想定質問、退職手続きから入社までの心構えなど各種アドバイスを実施。また企業の今後の成長戦略、経営陣の人柄、企業文化、職場環境等、一般的な求人情報だけでは知りえない様々な情報提供も実施し、結果的に非常に良い選択(オファー受諾)をしていただいたと考えている。
  • 企業側に対して:企業側の状況・方向性について可能な限り的確に候補者に伝達出来る様に、これらを理解することに努めた。候補者は当初の想定より若干年齢が若かったが、幹部候補人材として職務経験、マネジメント経験、人間性、ポテンシャルなどを説明。会長の長男と同世代で次世代の取締役メンバーにフィットする面もプラス材料となった。

【フォロー・現在】

  • 当初の予定通り北米現地法人に出向し代表取締役社長に就任。工場運営および営業推進など代表取締役社長として活躍されている。

 

III.まとめ

案件決定には様々な要因が絡み、正に「ご縁もの」である。企業(経営者)には様々な事情、思惑、要望、歴史、文化がある。また候補者にも個々の事情、思考、能力、希望、要望がある。その両者の良いご縁を結ぶ成功のためには、企業(経営者)と候補者との間に立ち様々なサポートを提供する「伴走型支援サービス」の丁寧な実施が何より必要不可欠である。また候補者の入社後の活躍には、入社後アフターフォローがより一層重要である点もお伝えしたい。「伴走型支援サービス」は企業(経営者)と候補者の両者における目的実現に向けた有益なサービスであると自負しており、皆様のお役に立つことが出来る様、一層、努めたい所存である。

 

次回、第5回(後編)においても引き続き「伴走型支援サービス」の実践事例についてご紹介したい。

執筆者

デロイト トーマツ人材機構株式会社
ディレクター 平尾 紳一

メガバンク、事業会社を経てエグゼクティブサーチ会社にて国内外企業に対する経営層を含む経営人材紹介業務に従事。政府系人材紹介会社において国内中堅中小企業における経営人材ニーズに対する伴走型支援 サービスの提供を通じた生産性向上支援に従事後、現職。

 

(2021.4.13)

※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

シリーズ記事一覧はこちら

デロイト トーマツ人材機構シリーズ

お役に立ちましたか?