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地域包括ケア病床転換へのポイント
地域包括ケア病床導入に際し、受け入れ患者に応じた検討すべき事項に関して
今後、地域包括ケア病床への転換を検討される医療機関はますます増えてくると考えられます。今回は、地域包括ケア病床へ転換する上でどのようなポイントを病院は考え、進めていかなければならないか、受け入れる患者に合わせてご紹介します。
地域包括ケア病床の平成30年診療報酬での改訂点
まず、平成30年診療報酬改定において、地域包括ケア病棟入院料に関して変更となった点につき下図を参照ください。大きな改定点としては“地域包括ケア病棟入院料1(2738点)”が新設されたことが挙げられます。従前の入院料1(2558点)の点数は入院料2として引き継がれました。新たな入院料1を算定するためには200床未満の病床数であることが前提で、在宅医療等を提供する実績が必要となります。施設基準の要件内に介護サービスを同一敷地内で実施していることがあるなど、地域包括ケア病床を持つ医療機関はより在宅との連携を強化することでインセンティブを得られる仕組みとなりました。また、加算に関しても、初期加算で在宅からの入院を評価する“在宅患者支援病床初期加算(14日間)”がこれまでの150点から300点へと上がることで在宅との連携に関するインセンティブが評価されることとなりました。今回の改定により、地域包括ケア病床の入院単価は入院料1で他の体制加算等を含めて約36,000円(入院14日間;注1)となることが考えられます。これまでの地域包括ケア病床の単価が約32,500円(入院14日間;注2)と考えると、今回の改定により入院料1を算定できる医療機関は大きな増収となることが考えられます。
注1) 地域包括ケア入院医療管理料1;2,738点、看護職員配置加算;150点、看護補助者配置加算;150点、看護職員夜間配置加算;55点、在宅患者支援病床初期加算;300点(14日)、入院時食事療養費1920円として計算
注2) 地域包括ケア入院医療管理料2;2,558点、看護職員配置加算;150点、看護補助者配置加算;150点、看護職員夜間配置加算;55点、在宅患者支援病床初期加算;150点(14日間)、入院時食事療養費1920円として計算
地域包括ケア病床導入における検討事項
地域包括ケア病床を導入する際に、自院としてどのような方針で病床を編成し、どのような患者を受け入れていくのかを明確にし、職員へ周知することが重要となります。地域包括ケア病床の役割として、大きく、急性期からの受入(ポストアキュート)機能と在宅からの受入(サブアキュート)機能がありますが、受入患者によって方針は大きく異なります。院内の患者に関しては病床管理が、院外の患者に関しては地域における自院の役割や連携方針を発信する広報活動が重要な点となります。今回は急性期(自院/他院)からの受入、在宅からの受入を進めるにあたり、自院の院内オペレーション、院外の地域での連携強化に係る広報活動に関する検討方法について事例を踏まえて紹介したいと思います。
自院の急性期病床からの患者受け入れ
まず、地域包括ケア病床の病床数を検討する上で、自院に地域包括ケア病床の対象となる患者がどれくらいいるかを認識することから始め、必要病床数の検討を行います。下図は自院の入院患者の単価構成がどのようになっているかを調査したものであり、1日毎に地域包括ケア病床の入院料を下回る30,000円以下の患者が何名いるかを示しています。これにより地域包括ケア病床への転床対象者数を認識することができ、最低限必要となる病床数を検討することができます。ただし、地域包括ケア病床は入院算定期間が60日、在宅復帰率が70%以上という要件がありますので、在宅へ退院できる患者を考慮して調査する必要があります。
自院の急性期病床からの患者で地域包括ケア病床を運用する際には、対象となる患者の選別と適切な転床時期を知り、転床を行うことが収益を最大化するために重要となります。下図は急性期病床の入院患者の在院日数に応じた単価の推移を調査したものであり、30,000円を下回る時期がいつかを示しています。この場合は入院初期加算の終了となる15日に単価が30,000円を下回る時期になるため、15日に転床することで30,000円の収益を確保できます。これは疾患により、また手術の有無により大きく異なるため、疾患別に調査して傾向を知り、現場レベルで転床判断が行えるようになることが重要となります。それには病棟の看護師の判断をサポートする医事課など、収益計算を随時行える職員の関与が重要となります。
他院の急性期病床からの患者受け入れ
対象となる患者は、他の高度急性期等の病院から急性期を脱した患者で在宅復帰までの回復期期間での受入となることから、高度急性期病院との強固な関係を築くことが重要となります。自院は、病院間でどのように連携していくのか方針を掲げ、地域連携室を中心に広報活動を効果的に実践することが求められます。
これまで対外的な広報活動や連携を行っていない病院にとっては、どう他の病院と連絡を取り、広報活動を行えばよいかという課題に直面するものと思います。多くの病院は地域包括ケア病床を開設したことをHPでの情報発信、DMの送付、施設への定期訪問といった形で広報しています。そのような広報は地域における地域包括ケア病床の認知度向上としては必要不可欠ではありますが、高度急性期病院に対しては抱える患者が多様なため個別に、より具体的なアプローチをとることが求められます。まずは連携先の病院のニーズを知ること、それに沿って自院の患者受入体制を整えていくことが重要となります。
医療機関同士が連携を行う上でお互いにwin-winとなる関係を構築することが重要です。そのためには連携対象とする高度急性期病院がどの診療科や疾患(処置)の患者において在院日数が長くなる傾向があるのか調査や面談を通して認識し、自院の回復期への受け入れによりどれだけ在院日数を短縮する可能性があるか打ち合わせできればお互いにメリットのある関係構築が進むと考えられます。より具体的な患者連携の打ち合わせとなると地域連携室間だけでなく、現場の医師、看護師、医療技術者の関与が必須となり、受入可能な範囲と受け入れ時期を共有し、患者をスムーズに紹介できる連携フローを協議します。症例数を重ねることで、最終的には疾患に応じた連携パスを作成できるような、確固とした連携フローをお互いに共有する関係づくりを行うことが重要となります。
在宅からの患者受け入れ
地域包括ケア病床は今後、在宅の受け皿となる病床と位置づけられることから、地域包括ケア病床を有する病院は地域包括ケアシステム内における中心的な役割を担う医療機関となることを方針とし、在宅とのパイプ役となることが必要となると考えます。そのためには地域のニーズを知り、自院の体制を適応させていく検討が求められます。
より多くの地域のニーズを認識するためにアンケートを実施することは一つの手段として有用であると考えます。下図はある病院を対象に当法人が実施したアンケートの集計結果を示していますが、緊急時や患者の利便性に関する地域のニーズは多くの在宅者から必要とされている事項です。アンケート結果に対して自院の体制で不足している機能の認識や強化方針の検討を行い情報発信していくことで、より地域のニーズに沿った、連携しやすい病床であることを広報できます。
在宅との連携手続を簡素化することも重要です。レスパイトなどで在宅からの受入れをよりスムーズに行うためには、通常の入院と同じ手続で在宅側に煩雑な連絡を要するのではなく、在宅に合わせた必要情報のみでスムーズに入院が可能となるよう、共有すべき事項を情報交換し、手続を簡素化することでより連携しやすい病院となります。
定期的に在宅に向けたセミナーなど地域向けのイベントを実施し、顔の見える関係を築くことで連携を強化している病院もあります。地域からの期待役割、ニーズに応じて自院の情報を発信し、地域に根差した病院と認識されるよう日々広報していくことが地域の中核病院として重要となります。
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