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コスト最適化のノウハウとデジタル化への提言
コスト最適化による”経営の体力強化”と、さらに将来を見越してのテクノロジーを活用した”業務へのテコ入れ”
人手不足・患者数減少などの環境変化で、多くの医療機関で売上を高める・保持することが難しくなりつつあります。 そうした場合、収益性を高めるために、材料費・委託費・人件費といったコストの見直しが挙げられますが、そのような環境変化の中では、抜本的に既存の業務を変革する必要があります。 本コンテンツでは、コスト最適化による収益性強化の取組要点と、その後目指していくべきテクノロジーを活用した業務の変革方針について提言します。
医療機関で費用の見直しを行う意義
現在、我が国は超高齢化のみならず、人口の減少が続いています。
一般的に超高齢化は、地域の高齢者が増加することで医療サービス全体では需要は高まることが多いのですが、そもそも人口が減少していく中では、潜在的な患者すらも減少していくこととなります(もちろん、特定の疾患・診療科・エリアや、医療サービスの機能によってはその限りではありません)。
一方で、医療従事者の求人倍率は依然として高い値で推移しており、仮に十分な医療需要があったとして、それに対応するだけの人材を確保することは困難であると考えられます。
(図1 医療・介護関係職種の有効求人倍率(パート含)の年度推移)
すなわち、現在の環境下では保険内医療の医業収益を急激かつ圧倒的に高めることは、エリアの急激な人口増加や高齢化、医療機関の再編を契機にした地域医療のサービス提供体制の変化、医局との非常に強い連携体制による潤沢な医師の確保、といった要因が無い限り難しく、「医業費用」を最適化することで収益性を高める取組みが重要となってきます。
まず検討すべき材料費・委託費のコスト最適化
では、医業費用、つまりコストの最適化はどのように進めればよいのでしょうか。
医療機関のコスト構造は、経営形態にもよりますが、人件費がおよそ50~60%、材料費・委託費・経費がおよそ30~40%、その他(研究費・研修費、減価償却費など)がおよそ10%となる場合が見受けられます。一見すると”まず着手すべきはボリュームゾーンである人件費”のように窺えますが、無闇に人件費の最適化に着手すると、「採用上競合となる周辺医療機関との競争劣後」「経営層と職員(場合によっては労働組合)との関係悪化」「医師・職員のモチベーション低下」といったネガティブアクションに繋がり、納得の上での最適化がなされない場合には、医療サービスの質的低下も招きかねません。
そうした時に、まず目を付けるべきは、次点で高い割合を占める、材料費・委託費・経費の最適化であり、具体的には以下のような費目が挙げられます。
1. 材料費
(ア) 医薬品
(イ) 診療材料
2. 委託費・経費
(ア) 清掃委託費
(イ) 医療機器保守費
(ウ) 水道・光熱費
(エ) 通信費 等
これらは、契約更新の都度、特に医薬品は薬価改定後の各医薬品卸からの価格提示に際して、サプライヤ間の協調行動を回避するようなコミュニケーションを取り、相見積や仕様の見直しを行う中で、継続的に見直していくことが必要です。
(図2 持続的なコスト最適化の実現のための流れ)
デロイト トーマツ グループでは過去、さまざまな医療機関と最適化対象費目の検討・仕様見直し・交渉シナリオ策定などで支援を行って参りました。デロイト トーマツ グループの支援はあくまで単年の取組みではありましたが、それを通じて、収益性を改善するだけでなく、医療機関では以下2つのようなメリットが享受されたように窺えました。
1. 組織内へのコスト最適化ノウハウの蓄積と、継続的な改善意識の醸成
2. 人件費でなく、まずは医療機関側の費用削減に着手したことである種の”覚悟”が伝わり、それ以外の取組み(例えば、業務改革、人員配置見直し等)へのスムーズな検討移行
コスト最適化の先にある業務の変革と、グランドデザイン策定のススメ
コストを最適化することは、医療機関の収益性を高めるにあたって、一定程度の効果を発揮します。
他方で、先述の環境変化が今後も中長期的に続くとするならば、病院としてコスト最適化で「スリムになる」ことにも限界があり、タスクシフティング等で業務分担を見直したとして、そもそも分担先の人手がいない、という未来も容易に想像できます。
そうなることを見越し、コスト最適化によって創出された投資余力の一部を、「テクノロジーを活用した既存業務の変革」に充当するような検討がなされるべきです。
(図3 病院における業務分担の現状と将来(仮説))
そうした際に活用が期待できるテクノロジーとして、例えば「定常業務のRPA化」「音声での自動入力ソフトの導入」「案内・検温のロボット化」といった、手元の業務をそのまま自動化するものや、「クラウドのカルテシステムの導入」等、より拡張性やコストに優れたソリューションの導入などがあります。
仮にこれらのテクノロジーで医療機関における既存業務の見直し、また情報システムの刷新を考える場合、病院の機能・各部課の業務はもちろんのこと、病院の規模やシステム間の連携を加味して検討を進めることが重要であり、拙速な導入決定は、以下のような導入のミスを招く恐れがあります。
(図4 導入におけるミスの事例)
こうしたミスを避けるために、「周辺の外部環境の変化」「職員が思う業務課題」「経営層が実現したい医療機関の方向性」を段階的に検討し、その実現したい姿をグランドデザインの形に落としこみ、病院情報システムの要件と投資対効果を綿密に練り上げることが必要となります。
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