調査レポート

認知機能スクリーニングに係る全国自治体アンケート調査

全国自治体におけるMCI(軽度認知障害)の早期発見、予防の取組についての調査報告

認知症は今や全世界で取組むべき課題です。その発症を遅らせるためには、認知症のプレクリニカルステージのMCI(Mild Cognitive Impairment)からの予防的介入や生活習慣改善が推奨されています。本調査では全国自治体の認知機能スクリーニング方法に関する考え方や取組みを整理しました。

調査背景

世界ナンバーワンの高齢化大国日本では、認知症患者は2012年に462万人、2025年には約700万人まで増えると推計されており、先進国において最も推定有病率が高いとされています。2019年5月、WHO(世界保健機関)は「認知症と認知機能低下のリスクを減らすためのガイドライン Risk reduction of cognitive decline and dementia」を公表し、MCI(軽度認知障害)からの介入の意義を示しました。同6月、我が国政府は「認知症施策推進大綱」を決定し、団塊の世代が75歳以上となる2025年までを対象期間に、認知症になっても地域で安心して暮らせる「共生」と、認知症の発症や進行を遅らせる「予防」を車の両輪と位置づけました。本大綱を指針として、今後は市区町村によって認知症関連施策が積極的に取り組まれることが期待されます。

しかし、現実的には、認知症発症以前のMCI(軽度認知障害)やそれより早期の認知機能をスクリーニングする方法が未整備であるため、各自治体において施策を働きかけるべき住民の抽出方法や、的確に受診勧奨する方法は大きな課題と考えられます。
そこで、この動きに合わせて、デロイトは昨年、全国市区町の認知症施策担当部署を対象に、「MCI(軽度認知障害)と軽度認知症の予防、早期発見」の取組についてアンケート調査を実施しました。
 

調査方法

調査対象自治体

村を除く1558市区町の認知症関連施策の担当課に郵送しました

調査項目

MCI及び軽度認知症施策に係る取組状況に関する以下の項目についてアンケートを設計しました。

  • 施策の実施主体
  • 施策の対象年齢
  • 施策への取組意欲
  • 施策の実施状況
  • 課題認識
  • スクリーニングツールの導入予定
  • 産官学連携状況

 

調査実施方法

アンケート用紙の郵送回収方式

調査実施期間

和元年8月16日(調査票発送)~同年10月18日(回収締切)

アンケート回収結果

アンケート発送総数及び有効回収率は以下の通りでした。

発送数 :全国市区町1,558団体

有効回収数 :375団体

有効回収率 :24.1%

回答自治体の市区町の内訳

回答頂いた自治体375団体の内訳は、
「市」が221団体(58.7%)と半数以上を占め、「町」は104団体(27.7%)、「区」が6団体(1.6%)、「無回答(自治体名未記載)」が44団体(11.6%)でした

調査結果概要

  • 現時点では「予防」への取組意欲を示す自治体数の方が「早期発見」への取組意欲を示す自治体数よりも多いという結果でしたが、いずれも8割以上の自治体に認知症施策への取組意欲が認められました。
  • 「予防」施策の取組開始年齢は、60代とする回答が約8割であったのに対し、理想では40代から開始したいと回答した自治体が、60代から開始したいと回答した自治体と同程度ありました。
  • 「早期発見」施策の取組開始年齢は、現状は60代とする回答が約6割でしたが、理想では40代から開始したいと回答した自治体が、60代から開始したいと回答した自治体と同程度あり、予防の場合と同じ回答傾向を示していました。
  • また、現状の開始年齢に回答した回答自治体数よりも、理想の開始年齢に回答した自治体数が多かったのは、早期発見の取り組がまだ実施できていない自治体が多いことを示しているのではないかと推察されます。
  • 介護総合事業は、回答自治体の多数がほぼ同様の事業に取組んでいましたが、認知機能スクリーニング検査の実施は20%未満でした。
  •  認知症予防等のサービス受給対象者は、第一号介護保険適用者等が半数を占める中で、年齢制限を設けず柔軟に認知症予防に取組む自治体もありました。
  • 認知症施策実施の課題意識は、予防よりも早期発見の方が全体的に数%程度高い回答傾向でした。
  • 早期発見のカギとなる認知機能スクリーニング検査の導入予定の有無については、導入未定が53.1%と半数であったものの、そのうち28.6%は将来的には必要と回答しており一定のニーズがあることが伺えました。
  •  また、既に産官学連携を実施する自治体が14.4%あり、大学とのコホート研究や民間企業との提携事例について複数報告がありました。

 


デロイト トーマツ グループでは、本年度も社会課題に対する自主調査を行いますので、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

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本調査研究に関するお問合せ先

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

柚木 大介|シニアマネジャー
湯澤 あや

E-mail : dthc_surveyinfo@tohmatsu.co.jp

 

※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。2020/05

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