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【連載企画】教えて!デロイトさん!(第5回)

医療機関の組織・人事・労務について、デロイトさんが皆さんの疑問にお答えします。

組織・人事・労務の専門家であるデロイトさんが、日ごろ皆さまが業務に携わる中で生じる疑問に対して、Q&A形式でお答えします。今回のテーマも多くの医療機関が着手されている「医師の働き方改革」についてです。是非ともご一読ください。

2024年4月から指定を受けるには、評価受審申込は2023年4月を目途に行う。

相談者:

私は、地方都市の急性期病院の事務長です。当院はB水準の指定を受ける予定です。評価センターの評価受審が始まったと聞きましたが、2024年4月までのスケジュール感が掴めずにいます。今後はどのように進めていけば良いでしょうか。

デロイトさん:

ご相談ありがとうございます。スムーズに準備を進めている医療機関は、スケジュール管理をしっかり行い、早期に着手しています。

評価センターの資料(下図参照)をもとに、評価受審申し込みから評価結果通知までの流れを確認しておきましょう。注意が必要なポイントは、③・⑤・⑦の箇所です。「③評価受審申し込み」までに医師労働時間短縮計画を作成し、「⑤自己評価の実施」は作成依頼メール到着後30日以内に行う必要があります。必須項目が未達成の場合は、「⑦中間報告」にて評価通知前に評価センターから改善が促されます。

「⑤自己評価の実施」後、「⑧評価結果の通知」までに4か月ほど要するとされており、評価後の都道府県審議が2か月ほど要することを考慮すると、できれば2023年4月を目途に、遅くとも2023年の7~8月頃には「③評価受審申し込み」を行う必要があります。自己評価時に提出が求められている根拠資料が多いため、早期に着手し、可能な限り評価受審申込までに準備しておきましょう。

相談者:

ありがとうございます。2023年7~8月まであと半年くらいですね。早期に着手します。

デロイトさん:

予定通りに準備が進まないこともあると思いますので、まずは4月を目標に取り組んでみましょう。

現状、2024年4月に向けて準備を進めて頂いていますが、少し未来に目を向けると2035年度末でB水準はなくなり、A水準・C水準のみになることが予定されています。2024年以降はA水準を目指していく必要があり、2035年度末は2024年の延長線上にあると捉えておくことも必要です。

 

出所:医療機関勤務環境評価センター『医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価受審手順(医療機関用)』(2022年10月)

自己評価シートは必須18項目から着手する。

相談者:

スケジュールについては理解しました。「⑤自己評価」の全体像がよく理解できていないのですが、何から取り組めばよいのでしょうか。

デロイトさん:

評価受審に必要な書類は、①基本情報シート、②自己評価シート(根拠資料含む)、③令和6年度以降の医師労働時間短縮計画の案の3つです。本日は特にポイントとなる②自己評価シート(根拠資料含む)について解説します。(①基本情報シートは、基本情報を入力するだけのものです)

②自己評価シートを作成するにあたって、評価センターから評価のガイドライン(評価項目と評価基準)が公表されています。評価項目は、「労務管理体制の構築(ストラクチャ―)」、「医師の労働時間短縮に向けた取組(プロセス)」、「労務管理体制の構築と医師の労働時間短縮に向けた取組の実施後の評価(アウトカム)」の3つの要素から構成されており、全部で88項目あります。新規申請の場合は18項目が必須となっており(労働関係法令及び医療法に規定された事項で、いずれもストラクチャ―の項目です)、評価基準に達しない場合は評価保留となります。そのため、まず必須18項目から早期に着手することが重要です。

 

勤務間インターバル・代償休息、宿日直許可、副業・兼業、面接指導実施医師について理解し、早期に着手する。

相談者:

ありがとうございます。必須18項目から取り組むようにします。18項目はどのような内容になりますでしょうか。

デロイトさん:

必須18項目のうち、主な内容を確認していきましょう。

【4】:勤務間インターバルと代償休息に関する院内ルールを定め、規程等による明文化が求められています。代償休息は理解が難しいところがありますが、あくまで事後的に付与するものであり、代償休息を前提とした勤務シフト作成は認められていないことに注意が必要です。ある医療機関(宿日直許可取得済)では、宿直中に緊急手術等で実働が発生する場合、始業から24時間以内に9時間の勤務間インターバル確保ができないため、翌月末までに所定労働時間内で代償休息を取得するルールを設けています。代償休息は分割取得も可能とされているため、可能な限り医師の希望を聞いて取得できるようにしています。

【25】で代償休息の付与対象となる医師、代償休息の時間数を少なくとも月1回は把握する仕組みが必要とされており、代償休息の管理方法(勤怠管理システムの導入等)についても検討しておく必要があります。なお、新規の申請時は院内ルールのみで可とされています。

【11】:「宿日直許可のある宿直・日直」と「宿日直許可のない宿直・日直」を区別して管理することが求められています。宿日直許可が未取得の場合、宿直・日直の時間を労働時間としてカウントしていない場合は評価保留となってしまうため、この機会に可能な限り宿日直許可の取得を目指すことが望ましいです。宿日直許可は、診療科、職種、業務の種類(病棟宿日直業務のみ等)を限って申請を行うことも可能です。ある医療機関では、診療科や時間帯を限定したり、診療科間で合同当直を行い一人当たりの当直回数を減らすことで、宿日直許可取得に至っています。

まずは、医療勤務環境改善支援センター(以下:勤改センター)や労働基準監督署に相談してみましょう。また、厚生労働省も医療機関の宿日直許可申請に関する相談窓口を設置しています。

医療機関の宿日直申請に関するご相談について (厚生労働省ページ)

【16】:医師を含む関係者の合議体で議論し、医師労働時間短縮計画を作成することが求められています。ある医療機関では、医師労働時間短縮計画作成のため、診療科長(勤務環境改善委員長)や人事課課長で構成するWGを立ち上げ、月1回1時間程度議論する機会を設けています。WGでは、医師の勤怠打刻や自己研鑽ルール等の課題を検討し、勤改センターの助言を受けながら1つずつ改善しています。

【22】:副業・兼業を行う医師がいる場合は、少なくとも月1回、副業・兼業先の労働時間の予定・実績等を把握することが求められています。医療機関は、医師の副業・兼業先の労働時間を通算して、年間の時間外・休日労働時間の上限に達していないかを把握する必要があります。ある医療機関では、診療科別に自院の時間外・休日労働時間、副業・兼業先での労働時間の合計を試算し、月100時間を超えないようにするにはどの程度副業・兼業先での労働が可能かを可視化し、毎月医師に自己申告してもらうようにしています。

【31】:面接指導実施医師リスト、面接指導実施ルールの準備が求められています。2022年12月から「面接指導実施医師養成ナビ」のホームページ上にて、面接指導実施医師養成のオンライン講習(eラーニング)が提供されています。ある医療機関では、長時間労働の医師が本音で話ができる環境を作るため、同じ診療科の面接指導実施医師とあたらないことを考慮して面接指導実施医師の必要人数を試算し、計画的に準備を進めています。

 

【6・7・9・10・12・14・20・30・35・42・44・46】:いずれも労務管理、安全衛生、健康管理における基本的な内容ですので、整備ができていない項目は早期に対応しましょう。

 

出所:医療機関勤務環境評価センター『医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン(評価項目と評価基準)』(2022年10月)より新規必須18項目のみ抜粋

次回掲載予定

今回は、医師の働き方改革の進め方のポイントについて、デロイトさんが回答しました。次回もこのテーマで皆様からのご質問に答えていきたいと思います。

 

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/01

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