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【連載企画】教えて!デロイト先生!(第1回)

医療機関の組織・人事・労務について、デロイト先生が皆さんの疑問にお答えします。

これから1年間にわたって、組織・人事・労務の専門家であるデロイト先生が、日ごろ皆さまが業務に携わる中で生じる疑問に対して、Q&A形式でお答えしていきます。今月・来月・再来月の3か月間は、今、多くの医療機関が着手されている「医師の働き方改革」についてです。是非ともご一読ください。

医師の働き方改革は院長の宣言から始める

相談者:

私は事務長なのですが、ようやく私の病院(急性期)でも、医師の働き方改革に取り組み始めたところです。恥ずかしながら、数か月前から医師の労働時間管理に取り組み始めましたが、その後どうやって進めたらよいのかわからずにいます。院内でのプロジェクトも立ち上がってはいますが、特に目立った動きがありません。これからどのように進めていけばよいのでしょうか。アドバイスを頂けないでしょうか。

デロイト先生:

ご質問ありがとうございます。医師の働き方改革は多くの医療機関でまさに今取り組み始めていますね。私どもにも最近は特にこの関係のご相談が増えています。

現在医師の働き方改革を進め始められたとのことですが、私どもがご支援させていただく際のファーストステップとして、少なくとも医局の先生方に対して、理事長や院長からこれから医師の働き方改革を始めていくという宣言を院内に向けてしていただくことが重要であると思っています。既にこのようなアナウンスはされていますか?

相談者:

はい、一応院長が経営会議の中で部長クラスに対して発信しています。ただ、現場の医師までしっかり伝わっているかまではわかりません。

デロイト先生:

院長先生が宣言されたんですね。その活動は非常に良いと思います。できれば、現場の先生方も巻き込んで発信する場を設定いただきたいですね。この活動に限らず、また医療機関だけではなくどのような組織であっても、部長クラスにアナウンスしても、そこから現場まで情報が浸透しないケースはよくある話です。実際の組織の中で誰がキーパーソンなのかを見極めることが重要で、実際に働き方改革に協力いただける方を巻き込めるように、しっかりと伝わる方法で宣言していただくのがよいと思います。

相談者:

ありがとうございます。改めて院長と相談して、情報発信の方法を検討してみたいと思います。

各科診療科へのヒアリングを行う

デロイト先生:

それから、時間管理を始められたところとのことですが、出勤・退勤時刻は記録されているということでよろしいですね。その前提でのお話になりますが、実は労働実態とその記録が必ずしも合っていないケースがあります。打刻はしているけれども、実はその勤務時間中にご自身が自主的に学会に参加するための論文を書かれる時間が含まれていることもあります。いわゆる自己研鑽に該当しますね。このような勤務実態は、打刻データだけではなかなか把握しきれないところがあるので、各診療科へのヒアリングを行うことをお勧めしています。

我々がご支援させていただく際には、労働法と現場の業務を理解しているコンサルタントがヒアリングさせていただくのですが、事務の方がヒアリングされる際には、少なくとも労働法の最低限の知識をお持ちの方が実施するのがよいと思います。このヒアリングでは、実際の出勤時刻や退勤時刻は勿論のこと、病棟での回診やカンファレンス、論文のための時間をどれくらいと捉えているか、他病院にどの程度アルバイトに行っているかなど、様々な実態が明らかになります。これらを把握して、実際にとりまとめ、可視化し、また現場の先生方にフィードバックすることによって、現場の先生方が何に取り組まなければならないのかがわかるようになってきます。現場の先生方が、この活動を「自分事」として捉えていただいて、一緒に考えて頂くことが重要であると考えています。

相談者:

なるほど。各診療科へのヒアリングですね。その活動はまだ進められていないので、検討してみたいと思います。先生方はお忙しいので、なかなか時間をとっていただくのが難しいかもしれませんが、これも院長と相談しながら進めてみたいと思います。

デロイト先生:

そうですね。少し横道にそれますが、私たちは、この支援を「プロセス・コンサルテーション」であると考えています。何かの専門知識や具体的なソリューションを直接的に提供するというものではなく、また、私たちが主導してプロジェクトを進めるものでもなく、現場の先生方が問題解決を上手く進めて頂くように後押しをするような役割であると考えています。この概念は、キャリア・アンカー(※1)で有名なエドガー・H・シャインという組織心理学の先生が提唱されていますが、「こうしてください」「ああしてください」ではなく、実態を共有しながら、問いかけを中心にどのように変えていけばよいのかを現場の先生方と一緒に考えて行くようなアプローチが重要であると考えています。

 

地域医療体制確保加算のため労働時間短縮計画の作成

相談者:

ありがとうございます。その他、今後、医師の働き方を進めていく上で、気にしておかなければならないことはありますか?

デロイト先生:

直近で気にしておく必要があるのが、「地域医療体制確保加算(※2)」になります。「医師労働時間短縮計画」は、B水準(※3)の指定を受ける場合に作成義務があることはよく知られていると思いますが、令和4年度診療報酬改定でこの「地域医療体制確保加算」の要件にもなりました。令和4年9月末までが経過措置であるため、それまでに「医師労働時間短縮計画」を作成して、厚生局に届け出る必要があります。この短縮計画作成に必要な情報を全て網羅的に収集できるかは、今から準備しても難しいところがあるかもしれませんが、まずは作成し提出することを目的として準備を進められている医療機関は少なくありません。医事課と調整しながら、この対策を検討しておくことが目先の課題としてはあると思います。

相談者:

どうもありがとうございます。早速、医事課とも情報共有して調整してみようと思います。

(※1)キャリア・アンカー

エドガー・H.シャインによって提唱されたキャリア理論であり、個人が自らのキャリアを選択する際に、どうしても譲れない価値観や自分の軸などのことを指します。

(※2)地域医療体制確保加算

救急医療を提供している病院を対象に医師の負担を軽減させるとともに救急搬送受け入れた分だけ入院初日の入院料を+620点加算(2022年度の改正)するというもの。この中で、医師労働時間短縮計画の作成が求められている。

(※3)B水準

医師の働き方改革におけるA水準、B水準、C水準におけるB水準を指します。三次救急や救急搬送の多い二次救急指定病院、がん拠点病院などにおいて、36協定によっても超えられない時間外労働の上限時間が年1860時間以下等、設定されているものになります。

 

次回掲載予定

初回の今回は、医師の働き方改革の進め方のポイントについて、デロイト先生が回答しました。次回もこのテーマで皆様からのご質問に答えていきたいと思います。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/7

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