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社会福祉連携推進法人の展望

事業者間の連携・協働を図るための新たな法人制度

社会福祉事業を行う法人が自主性を保ちながら他の法人と連携し規模の大きさを活かした法人運営を行うことを目的として、2022年4月から「社会福祉連携推進法人」制度が施行されました。これの活用により、小規模な法人等にとって単独では解決が困難な福祉ニーズ・制度の変化への対応や人材確保・育成などの課題の解決に繋がることが期待されています。ここでは「社会福祉連携推進法人」制度の概要と活用の展望について考察します。

2022年4月から施行開始された社会福祉連携推進法人

社会福祉連携推進法人とは、社会福祉法人等が社員となり、福祉サービス事業者間の連携・協働を図るための取組等を行う新たな法人制度です。2020年(令和2)年6月に公布された「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」に基づき創設され、2022年(令和4)年4月から施行されました。

社会福祉連携推進法人の活用によって、地域福祉の充実や災害対応力の強化、福祉サービス事業に係る経営の効率化、人材の確保・育成等の推進が期待されています。これまでの法人間の緩やかな連携とは異なり、法人の自主性を確保しつつ、法的ルールに則った一段深い連携や協働が社会福祉連携推進法人の特徴です。社会福祉連携推進法人への参加や脱退は原則、法人の自主性が尊重されるため、法人にとって経営上のメリットの追求が可能と考えられます。

 

他の連携・協働方法との比較

社会福祉連携推進法人は社会福祉事業に関連する法人間の連携や協働により社会福祉事業の充実や発展を目指した枠組みであるため、この社会福祉連携推進法人に参画できる法人の範囲が定められています。

 

社会福祉連携推進法人の社員

社会福祉連携推進法人にて社会福祉事業の実施は不可ですが、昨今の法人が抱える様々な課題に繋がる事業を実施することができます。具体的には、①地域福祉支援業務、②災害時支援業務、③経営支援業務、④貸付業務、⑤人材確保等業務、⑥物資等供給業務、の6つの事業が示されています。

 

社会福祉連携推進法人が行う事業として以下の6つが定められています。

 

法人間連携や社会福祉連携推進法人に対する法人の意向実態

デロイト トーマツ グループでは、社会福祉事業者を対象に、2021年12月に『社会福祉連携推進法人の展望と概要』のテーマにてWebセミナーを開催し、社会福祉法人や社会福祉事業を営む医療法人をはじめ、各種サービスを提供されている企業など約100の法人様のご参加を得ました。そして、Webセミナー及び事後のオンデマンド配信の際に法人間連携や社会福祉連携推進法人に対するアンケートにご回答頂きました。

社会福祉法人や社会福祉事業を営む法人の回答では、現在の制度内で連携している法人は約15%と少なく、主な連携内容は情報・ノウハウ共有となっています。

 

他法人との連携及び社会福祉連携推進法人の活用への意向

新たな枠組みである社会福祉連携推進法人の活用については、約35%の法人が前向きな検討をされています。しかし、検討している法人の50%は具体的な連携相手の見通しが立っておらず、連携相手の確保において業界団体や自治体等への期待の声が挙がっています。

 

他法人との連携及び社会福祉連携推進法人の活用への意向

 

自治体や業界団体ではホームページ上にて社会福祉連携推進法人に関する情報発信をしているケースもあり、引き続き必要な情報提供と連携を求める法人に対する支援が期待されるところです。

 

 

人材の確保や育成を目的とした連携

社会福祉事業におけるサービスの源泉は人材といっても過言ではありませんが、介護職や保育士などの社会福祉人材の確保は依然厳しい状況が続いています。特に介護職の確保は大きな課題となっており、厚生労働省が毎月調査を行っている「一般職業紹介状況」では、介護関係職種の有効求人倍率は全職業計に対し約3.5倍と介護人材の不足及び競争の激化を顕著に示しています。また、国立社会保障・人口研究所による将来人口推計では、働き手である生産年齢人口(15~65歳)は2022年から2040年にかけて約20%減少する見通しです。これまでの労働者に占める介護人材の出現率では人材が不足する事は明白であり、施設の稼働を維持するためには今まで以上に介護業界に人材を引き込む必要があります。

これまで法人単独では実施不可能であった施策について、社会福祉連携推進法人を活用した連携・協働を図る方法も人材確保の打ち手として考えられるのではないでしょうか。同様に、職員の定着や満足度に繋がる人材育成においても、地域の法人間連携や地域を超えたダイナミックな連携が図れるこの法人制度の活用は有効と考えられます。

 

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/5

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