事例紹介

地方創生のための事業プロデューサー派遣事業

社会インパクトの測定(平成28~30年度事業分)

「地方創生のための事業プロデューサー派遣事業(平成28~30年度)」(本事業)では、新規事業創出の専門人材「事業プロデューサー」を公的機関等に派遣・常駐させ、地域が保有する技術力や知的財産を地域の課題に根ざした事業の中で活用することにより地方創生を促進しました。「事業プロデューサー」が3年間の事業環境創出活動を支援し、社会的投資収益率6.56倍の費用対効果で地域経済活性化に貢献しました。

派遣されている事業プロデューサーおよび派遣先機関

28年度10月より順次派遣を開始し、同年度12月に埼玉、静岡、北九州の3か所への派遣が始まり、平成31年3月の事業終了とともに派遣も終了しました。その間、次の3名の事業プロデューサーが、派遣事業に従事してきました。

鈴木 康之 派遣先:一般社団法人 さいしんコラボ産学官(埼玉県)
増山 達也 派遣先:公益財団法人 静岡県産業振興財団(静岡県)
近藤 真吾 派遣先:公益財団法人 北九州産業学術推進機構(福岡県)

 

地方創生のための事業プロデューサー派遣事業 社会インパクトの評価(平成28~30年度事業分)(PDF, 702KB)

事業の全体像

派遣開始からの約2年半の間、各地で地道な活動を続けた結果、3か所とも順調に成果があがりました。

事業実施1年目の平成28年度ははじめの1、2カ月は事業の紹介、地域との信頼関係構築のためのネットワーキングに注力しており、活動期間が実質的には半年未満でもあったにも関わらず、2件の成功事例を創出することができました。

2年目の平成29年度には事業プロデューサーの活動が定着し、1年間をフルに企業への伴走支援に充てることができたため、12件もの成功事例を創出しました。

3年目の平成30年度には、開発に時間を要していた技術開発を伴う案件等が花開き、2年目同様に12件の成功事例を挙げることができました。

3年目に成功事例としての公表が間に合わなかったものも複数ありましたが、これらについても事業終了後ではあったものの有限責任監査法人トーマツが独自に企業支援を継続し、追加的に4件の成功事例として公表することができました。

図 各地の活動状況(平成31年6月時点)
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社会インパクトの評価

本事業は3年間・約3.5億円の事業規模で実施され、それに見合うだけの個別の成功事例を多数挙げることに成功しましたが、事業全体を俯瞰した成果を明確化して教訓を得ることも重要なポイントです。この度、事業全体の社会インパクトを評価するために、成果測定手法の一つである「SROI(社会的投資収益分析)」を実施しましたので報告します。

本報告で示す社会インパクト評価の対象期間は、事業が実施された平成28~30年度の3年間です。また、本報告に示されている社会インパクトの結果は、3年間の事業を通じて創出された価値を合算し、まとめたものです。

社会インパクトの評価手法や分析は、外部評価機関として「株式会社 公共経営・社会戦略研究所」(代表 塚本一郎明治大学教授)に委託し、評価の客観性に配慮しました。また、本稿では結果の概要のみを記載しており、評価や分析の具体的な方法については別途報告書に取りまとめて公表しています(特許庁「地方創生のための事業プロデューサー派遣事業」事業実施報告書)。

 

社会インパクト評価のロジックモデル

参考までに、本事業における社会インパクト評価を行う上で作成したロジックモデルを下図に示します。

図表1 ロジックモデル
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社会インパクト評価の結果

社会的価値総額(総便益)は22億2,049万624円、投入した費用合計(平成28~30年度委託費)は3億3,840万9,071円、社会的価値総額を費用合計で割ったSROI(社会的投資収益率)は6.56でした。
これは、投入した費用合計のおよそ6.5倍の社会的価値を生み出したということを示しています。その社会的価値の内訳を次の図に示しました。

図表2 社会インパクト評価の結果(全体像)
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本事業の成果として重要と考えている点は大きく2つであり、支援先企業の成長(売上や融資などキャッシュ・フローを創出させた効果)、地域社会における新規事業創出環境の整備への好影響です。

 

支援先企業の成長

支援先企業の売上増加については上図から、経済的価値として実際に創出されたキャッシュ・フローのうち「取引先の増加」、「市場に出回る商品の増加」、「製商品の用途拡大」が8億円程度確認できました。金融機関からの融資も8.5億円、コスト削減効果も6千万円確認できました。

実際にキャッシュ・フローが発生した現実の経済効果が大きく表れており、事業プロデューサー派遣の結果としての地域経済への貢献を読み取ることができます。経済的価値額は17億円を超えており、総便益に占める経済的価値の割合は約78%と高い割合を示しています。地方創生においては、中小企業の売上や融資獲得の積み上げにより、地域経済にお金を回して活性化を図ることが重要であると考えており、この分析結果はそれを裏付けるものと言えます。

 

新規事業創出環境整備への好影響

地域社会において新規事業を創出していくことは大変重要ですが、そのためには新規事業を創出しやすい環境自体を整備していくことも重要です。その環境整備に与えた好影響を、社会インパクト評価でよく用いられる、定性的な成果を金銭代理指標を用いて金額換算した定量化指標を使用し、評価しました。上図の社会的価値の指標がこれに該当します。例えば、「企業間コミュニケーションの増加」、「プロジェクトチームの立ち上げ増加」、など人材・事業プロデューサーとの連携向上といった指標において比較的大きな効果が見られます。

※上記の定量化した経済効果は「SROI(社会的投資収益分析)」に基づき、当該分野に関する学術的知見を有する第三者に委託して算定したものであり、実際の経済効果について何らかの保証を与えるものではないことにご留意ください。

 

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