調査レポート

「事例に学ぶ地方公営企業の経営改革」セミナー開催報告

~インフラの価値を伝え、維持していくために必要な取組について~

本セミナーでは、地方公営企業が抱える様々な経営課題や解決策について、国の最新動向や全国各地の幅広い公営企業に対する直近の支援実績を踏まえた解説や、経営戦略の改定及びビジョン策定、料金改定や広域化、DX推進のポイントを紹介しました。

また、令和元年度より事業管理者制度を採用していらっしゃる岡崎市上下水道局のご担当者様をお招きし、上下水道インフラを維持するための取組み、向き合い方について有限責任監査法人トーマツの公認会計士と意見交換を行いました。

 

第1部 「地方公営企業の経営課題と歩むべき道」

人口減少による料金収入の減少や大規模なインフラ更新による大規模な投資の増大が見込まれ、経営状況の厳しさが増す地方公営企業の経営効率化について解説しました。

【ポイント】

①厳しい経営環境を乗り越えるためには経営戦略の策定・改定及び抜本的な改革の検討を相互に反映しながら行い、更なる経営改革の推進が必要である

②経営改革の推進のためには、公営企業会計の適用および経営比較分析表の作成・公表を行う等、公営企業の「見える化」を推進していく必要がある

③広域化、DX、PPP/PFI等を通じた業務密度の増加すなわちコストの削減が求められている

④全国的、全世界的な取組みである脱炭素化の取組みが求められる

⑤持続的な財政運営・経営に「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」の活用が有効である

講師:有限責任監査法人トーマツ パートナー 小室 将雄

 

第2部 「経営戦略改定・料金改定のポイント」

令和4年1月に公表された「経営戦略策定・改訂マニュアル」の改定ポイント、経営戦略の改定の具体的な進め方についてご紹介しました。

【ポイント】

①経営戦略においては、投資及び財源の両側面に着目し、収支が均衡するように作成された収支計画である「投資・財政計画」の策定が中心となる

②経営戦略改定時に経営基本方針の記載や料金水準等の説明を充実させることで住民や利用者の理解を深めることにつながる

③経営指標は、現状把握・分析を踏まえ、各経営指標の関連を理解した上で、実現可能な水準に設定する必要がある

④持続的な事業運営には、毎年度の自己検証(モニタリング)や定期的な見直し(ローリング)が必要である

⑤経営環境の変化や各種課題への取り組みを適時に経営戦略に反映することが重要である⑥料金改定の検討については、あるべき料金体系を検討し、計画的・段階的に進めていくことがポイントである

なお、「経営戦略策定・改定マニュアル」の改定については、詳細な解説記事を掲載していますので、こちらをご参照ください。

講師:有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 刀禰 明

 

第3部 「経営改善・抜本的改革の効果的な進め方」

官民連携、広域化、DX推進等の経営改革について先進事例を踏まえた具体的な検討の進め方、DXを推進する際に重要となる3つの視点(『BPR』、『広域化』、『人材育成』)について紹介いたしました。

【ポイント】

①課題の重要性、優先順位を踏まえたうえで、経営戦略を通じて継続的な経営改善を実行していくことが重要である

②官民連携においては、先行事例から事業化パターンや事業手法、民間事業者の業務範囲等の整理を行うとともに、ヒアリングによる検証・確認を実施し、民間事業者とコミュニケーションを図ることがポイントとなる

③広域化については広域化推進プラン等を踏まえ、実行フェーズに移行していくこととなるが、実行においては、DXも含めた新たな枠組みも検討していくことが重要である

④公営企業においてもDXは求められており、課題の把握からソリューション(技術)の導入まで、ステップを踏みながら検討していくことが考えられる

⑤持続的な経営を可能とするためには、長期的なコスト削減のみならず、業務整理や自動化による時間の確保、経営に資する情報を入手することで、「考える経営」を実現する必要がある

⑥令和6年4月よりサービス提供を開始した公営企業向け会計事務サポートや同じくデロイト トーマツが独自開発した公営企業デジタルツール(公営企業経営力向上支援ツール)を活用することで、会計事務の効率化や計画策定、料金改定、財務分析等に関する業務の高度化を図ることができる

なお、「会計事務サポート」については、詳細な案内記事を掲載していますので、こちらをご参照ください。

講師:有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 井谷 裕介

 

【特別対談】経営戦略改定・ビジョン策定と広域化・料金改定の一体推進について

岡崎市上下水道局の水道事業及び下水道事業管理者である伊藤茂様をお招きし、上下水道インフラを維持するための取組み、向き合い方について、有限責任監査法人トーマツの公認会計士と対談を実施しました。

【対談のポイント】

①事業管理者制度下においては、業績が評価されるが、その評価指標が明確ではないため、事業の見える化と目標設定が重要である

②財政計画主導の投資計画の策定においては、投資額があるべき額より小さくなってしまうのは必然であり、投資計画主導による財政計画の策定が安心安全な水道水の安定供給につながる

③マネジメント計画への移行に際し、(1)目標耐用年数の設定、(2)事後保全の導入、(3)AI技術を活用した分析により、投資額の平準化及びボリュームの縮小を図ることができた

④料金改定に際して、長期的な視点を取り入れることで料金の改定幅の緩和が見込まれたことに加え、企業債の借入・留保資金活用の幅が広がり、確保すべき総給水収入を抑えることができる試算となった

⑤企業債の借入については、内部留保資金が一定の額を下回らない水準で借り入れる方針としたことも、料金改定額の減少に寄与した

⑥利用者に事業や取組を「見える化」し、利用者との共創・協働による社会価値の創造を行うことが重要である

 

講師:岡崎市水道事業及び下水道事業管理者 伊藤 茂 氏

有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 鈴木 識都

 

最後に

本セミナーには、多くの地方公共団体の公営企業ご担当の皆様にご参加頂けただけではなく、セミナー後のアンケートにおける前向きなご回答など、皆さまの関心の高さをうかがうことができました。

また、アンケート回答特典として、ご希望のあった団体につきまして、デロイト トーマツが独自開発したデジタルツール(※)を用いた「計画策定機能」「財務分析機能」を体験いただきました。

※ 公営企業経営力向上支援ツール(次世代の地方公営企業経営を革新する経営力向上のためのデジタルサービス

 

なお、有限責任監査法人トーマツが提供するサービス内容については、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

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