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地方公共団体における内部統制の法制度化(その3)

内部統制制度の検討状況の紹介

平成29年6月9日に公布された改正地方自治法において、平成32年度から都道府県及び指定都市では内部統制が法制化されることになりました。これを受けて、総務省では、「地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会」が設置され、様々な議論が行われています。

①地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会の設置

地方自治法等の一部を改正する法律(平成29年法律第54号)により、内部統制制度、監査基準による監査等の規定が整備されました。内部統制及び監査は、表裏一体となって地方公共団体の業務の適切な遂行に資するものであるとの考えから、これらに関し制度化された事項について一体的に詳細な検討を行うため、総務省に「地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会」(以下「研究会」という。)が設置されました。
また、研究会とは別に、地方公共団体における内部統制に関する方針の策定や、これに基づく必要な体制の整備等に関し具体的な検討を行うため、「地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会 内部統制部会」(以下「内部統制部会」という。)及び監査委員が定める監査基準について総務大臣が示す指針等に関し具体的な検討を行うため、「地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会 監査部会」(以下「監査部会」という。)が設置されています。

②内部統制ガイドラインの策定

内部統制部会では、各地方公共団体において内部統制をスムーズに導入できるようにするための「手順書」として、ガイドラインを作成することとしています。ガイドラインは大きく以下の構成になることが予定注されています。

Ⅰ 地方公共団体における内部統制の基本的枠組み
1 地方公共団体における内部統制とは
2 地方公共団体における内部統制の4つの目的及び6つの基本的要素
3 内部統制の留意点・限界

Ⅱ 内部統制に関する方針の策定・公表
1 内部統制推進部局の決定
2 対応すべき主要なリスクの検討
3 内部統制に関する方針の検討・決定
4 内部統制に関する方針に基づく規則・指針等の検討・決定
5 内部統制に関する方針等の公表

Ⅲ 内部統制体制の整備
1 全庁的な体制の整備
2 内部統制のPDCA サイクル

Ⅳ 長による内部統制の評価及び報告

Ⅴ 監査委員による内部統制評価報告書の審査

注 内部統制ガイドライン(案)として平成30年4月末現在、公表されている資料を基に記載しているものであり、実際のガイドラインの構成とは異なる可能性があります。

③監査指針の策定

各地方公共団体の監査委員は総務大臣が定める指針(監査指針)を踏まえて、監査基準を策定することになります。監査部会では、当該監査指針案を策定していますが、策定に当たり以下の前提を背景として監査指針の必要性を認識されています。

監査指針の策定の前提
・ 昭和22年に地方自治法が施行されて70年を経過したところであるが、地方公共団体のガバナンスの要である監査制度については、地方公共団体に関する全国統一的な監査基準が存在しないため、監査の実施目的や実施方法が判然とせず、各監査委員の裁量に委ねられていることから、各地方公共団体の監査の実施状況に差異が生じている状況となっている。
・また、人口減少社会において地方公共団体の経営資源が限られていく中、全国的に地方公共団体の業務の適切な実施を確保することが求められており、そのためにも監査の実効性の確保が重要であると考えられる。

具体的な監査指針は「監査における基本原則(監査基準(案))」と監査の実務のあり方を定めた「実施要領」の2つを策定する方法で検討しています。そして、実施要領は、以下の目指すものとされています。
・内部統制を前提とした監査等
・定期監査、決算審査、例月出納検査が有機的に結合した監査等

④さいごに

内部統制ガイドライン及び監査指針については、現在も各部会で検討されています。デロイト トーマツ グループは、当web上において、引き続き、地方公共団体に求められる内部統制の概念や事例等について紹介していく予定です。

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