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プロセスバイオニクス:プロセス改革の現場

保険業界の事例

本シリーズの初回ではまずプロセス変革の新しい考え方であるプロセスバイオニクスという分野を紹介し、二回目ではプロセスバイオニクスによる変革を効果的に行うためのプロセスマイニングとプロセスマッピングというプロセスキャプチャー戦略について補足しました。そして今回は、プロセスバイオニクスの「実践」についてお話します。

“現実世界”で成果を上げる

プロセスバイオニクスの基本的な考え方は、実際に目に見える結果をもたらす実用的なインサイトを提供することにあります。

高度なプロセスキャプチャー技術を使用することで、プロセスを正確でバイアスのないデータに変換することが可能になります。これにより、企業はインサイトを導出し、十分な情報に基づいた意思決定を行う能力を強化することができます。

プロセスバイオニクスの適用範囲は、プロセスマイニングやプロセスモデリングによるプロセスキャプチャーから得られる現状把握のみにとどまりません。多くの場合、未来の意思決定が現実でどのように行われるかを、プロセスシミュレーションを用いてシミュレートします。

組織全体としての目標は、非効率やリソースの無駄を排除して顧客体験や従業員体験を向上させることや運転資本を増やすことかもしれません。しかしながら、当社のクライアントはプロセスバイオニクスを活用することでこれらの目標を達成するだけでなく、さらに次に挙げる5つの具体的かつ現実的な改善を実現しています。

  • ユーザー、グループ、部門間での引き継ぎ業務の軽減
  • 従業員の生産性向上
  • 付加価値のない作業工程の最小化
  • より高度なプロセス標準化
  • 手戻りや繰り返しの減少

最前線のエピソード

全体の流れをつかんでいただくために、まずはプロセス変革と相性の良い保険業界に焦点を当ててお話したいと思います。保険業界は以前から、部門間の引き継ぎや、非効率的でミスを誘発しやすい手作業が非常に多い業界といわれています。一方、他業界で行われているテクノロジーに対応したフリクションレスなトランザクションに慣れた顧客は、保険業界に対しても業務のデジタル化を求めています。

それでは、2つのエピソードをご紹介します。
 

プロセスマイニングによる引受業務の効率化

ある保険会社の引受業務で顧客サービスに関する問題が発生していました。度重なる遅延で苦情が増えていたのです。

プロセスマイニングを実装したところ、一貫性のない業務、手作業の業務、顧客に対する付加価値のない業務など、複数の根本原因が明らかになりました。そして、このような非効率な運用が原因で引受担当者はかなりの未処理案件を抱え、多くの手戻りが発生していました。中には、トランザクションが別のキューにリダイレクトされたため、プロセスに15もの作業工程が追加され、完了が6日近くも遅れてしまった、というケースもあります。

しかしこの保険会社では、プロセスバイオニクスを導入したことで引受プロセスを9分短縮する方法を特定し、さらに週14万件のトランザクションに基づくシミュレーションから、処理時間を改善することで処理能力が59%向上し、510名の従業員を他部署に再配置できることが明らかになりました。
 

プロセスモデリングによる申請書受付の迅速化

次は、申込書受付プロセスに時間がかかりすぎていることで、顧客体験に悪影響を及ぼしていることが明らかになった保険会社のエピソードです。

この保険会社は、処理に時間がかかっている原因を特定するため、自社の既存プロセスのフローをモデル化しました。その結果、比較的簡単に改善できる部分があることが判明し、担当者は会社と協力して、品質とスピードを重視した新しいプロセスを設計しました。

この会社では、プロセスの変更とAIを駆使したテクノロジーソリューションの組み合わせによりサイクルタイムを約94%短縮することが可能で、結果的に処理能力を21倍に高め、受付業務に必要な従業員数を50%削減できることが分かりました。まずは早期に成果を得られる取り組みから着手し、その後自動化を導入するというロードマップを描いています。

目に見える改善に勝るものなし

ここまではプロセスバイオニクスの理論や仕組みに注目してきました。しかしどのような経営手法であっても、ある時点でその信頼性を左右するのは目に見える確実な成果を上げられるかどうかです。今回ご紹介したのはプロセスバイオニクスの実際の適用例で、保険業界においてプロセスバイオニクスが変革をもたらし、強力な価値実現につながった事例でした。今後も、プロセスバイオニクスの導入事例や活用例等をご紹介していきたいと思います。

業務部門におけるプロセスバイオニクス

Article 1: プロセス改革に吹き込む新風:すべてのCOOが知っておくべきこと

Article 2: 次世代のプロセスキャプチャー

Article 3: プロセスバイオニクス:プロセス改革の現場

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