ナレッジ

次世代のプロセスキャプチャー

プロセスバイオニクス活用への最初の一歩

本シリーズではこれまで、プロセスの不具合を迅速に特定し解決することに重点を置いた、プロセス変革の新しい手法であるプロセスバイオニクスをご紹介してきました。今回はプロセスバイオニクスの導入についてご説明します。まずは、改善策を立てる前段階である「プロセスキャプチャー」、つまりプロセスの不具合の根本原因を特定することから始めましょう。

プロセスキャプチャーの共通課題

不具合の原因が分からなければプロセスを立て直すことはできません。そのため、「プロセスキャプチャー(プロセスの把握)」は変革の取り組みにおける重要な作業です。

しかし、多くの組織がプロセスキャプチャーで苦労しています。手作業で行うと時間がかかるうえに、将来のプロジェクトで再現することも困難です。また、手作業では部門間のプロセスフローのつながりが見えにくいこともあります。さらに、誰がどの業務を行い、どのようなテクノロジーが使用され、どう引き継がれているかが必ずしも明確ではありません。

自動化されたツールも存在しますが、従来のソリューションで対応できる静的な仕組みはすぐに時代遅れになってしまうかもしれません。また、個別に構築されたプロセスフローは組織全体の中では忘れ去られ、無視されてしまう可能性もあります。

従来の方法を見直す

プロセスバイオニクスでは次世代アプローチによってプロセスキャプチャーを実施します(図1参照)。これは、現状を明らかにすることでプロセスの不具合を発見する手法で、データ主導の技術や高度なテクノロジーを適用できる場合はそういった手段も活用します(詳細は後述)。その過程で改善機会の優先順位をつけるために不具合を影響度によって評価します。この情報を基に、共同作業チームはシナリオシミュレーションを使用して潜在的な変化の価値を定量化し、新しいプロセスの代替案を迅速に設計することがでるのです。

図1 プロセスバイオニクス―プロセス変革への新たなアプローチ
※クリックまたはタップして拡大表示できます

次世代のプロセスキャプチャーとは、より迅速なデータ提供や、プロセスの隅々まで透明性が求められる場合に重要となる手段です。効率化を実現するために、プロセスを削除、簡素化、標準化、自動化する方法を見つけることに徹したアプローチであり、イノベーションだけでなく、人々の考え方や行動にも変化をもたらすための土台を築くことができます。

 

次世代テクノロジー

プロセスキャプチャーを行う場合は、まずプロセスマイニングまたはプロセスマッピング(プロセスモデリングと呼ばれることもあります)など、自社のタスクにはどのプロセスキャプチャー手法が最適かを判断する必要があります。
 

プロセスマイニング

プロセスマイニングは、従来のプロセスキャプチャーを電子証拠開示やフォレンジック技術で強化したもので、デジタルフットプリントを利用して既存のシステムを流れるデータからプロセスを追跡・再構築することができる手法です。特定のタスクでは、デスクトップアクティビティマイニングにより、デスクトップレベルまで追跡することもできます。

例えば、グローバルな資金繰りと支払いに関するプロセスの改善を必要としていた石油・ガス会社は、プロセスマイニングを実施したことで、請求書発行と売掛金管理における不具合が運転資本の確保に悪影響を与えていることを特定しました。データ主導のアプローチを導入すれば5億ドル以上の運転資本を改善できる可能性があることが明らかになったため、この情報を基に同社は請求書発行までの期間を短縮、2年以内に1億8,800万ドルの改善を実現することができました。
 

プロセスマッピング

プロセスマイニングは、信頼できるデータがありプロセスが自動化されている場合は(複数のシステムが関与しているとしても)非常に効果的なアプローチです。しかし、プロセスの一部が手作業、あるいはデータの入手が困難な場合はどうでしょうか。ここでプロセスマッピングが登場します。プロセスマッピングは、信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth: SSOT)と整合させ、文書化するためのリアルタイムのコラボレーションマッピングで、既存プロセスの変更を評価するシミュレーターと分析機能によって強化された手法です。このようなプロセスマッピングは、信頼できるデータがない場合でも現状を正確に把握し、効果的なコラボレーションを実現するための組織の取り組みを支援します。

10カ国の海外市場向けにプロセスを構築する取り組みを行った大手小売企業の事例を考えてみましょう。その企業は、海外市場のどこに機能的・技術的なギャップがあるかを把握しようとしましたが、基準としていた米国内の既存プロセスは断片的で、完全には自動化されていなかったため、追跡が困難でした。そこでワークショップなどのオフラインのアプローチに頼らず、次世代プロセスマッピングを適用することにより、わずか2週間で88のプロセスマッピングを完了させ、その過程で市場のギャップを明らかにしました。
 

2つのテクニックを比較する

プロセスマイニングの利点は定量的かつ客観的であることで、一つの作業の所要時間を予想するために人間の感覚に頼る必要はありません。必要なのは、明確な追跡対象、適切な品質のデータ、そして追跡対象が既存システムを通過したことを示すタイムスタンプだけです。

次世代プロセスマッピングの利点は、手作業とデジタル作業を網羅したプロセスフローの全体像を把握できることです。また、傾向や問題を早期に特定する洗練されたデザインモデリングや継続的なプロセスレビューなど、プロセスマイニングの将来を見据えた特性の多くを利用することもできます。

どちらの手法も、業界やセクターの知識を応用して、価値の高いプロセスを特定し、最新の手法、自動化、データ主導のインサイトを用いて最適化する必要があります。そして最終的にはどちらも様々なビジネス上の利益を生み出すことができます(図2参照)。

図2 次世代プロセス変革によるビジネスの価値
※クリックまたはタップして拡大表示できます

未来への計画を描く

今回のブログでは、プロセス変革の取り組みにおける最初の重要なステップであるプロセスキャプチャーの仕組みのお話をしました。プロセスバイオニクスでは、データ、テクノロジー、アジャイルコラボレーションを幅広く活用したプロセスキャプチャーの次世代アプローチを取り入れています。その目的は、プロセスの不具合の根本原因を特定し、その解決策を策定することによって、企業ができるだけ早く成果を上げられるようにすることです。次回のブログでは、実際にプロセスバイオニクスがどのように機能するか理解いただくため、詳細な実例を交えてご紹介します。

業務部門におけるプロセスバイオニクス

Article 1: プロセス改革に吹き込む新風:すべてのCOOが知っておくべきこと

Article 2: 次世代のプロセスキャプチャー

Article 3: プロセスバイオニクス:プロセス改革の現場

お役に立ちましたか?