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プロセス改革に吹き込む新風:すべてのCOOが知っておくべきこと

プロセスの課題発見と対処

業務部門にとってプロセスの不具合は慢性的な頭痛の種です。例えば、顧客アカウントの作成や請求書発行の際に起こる問題を調査してみると、トラブルの背景にプロセスの不具合が見つかることが少なくありません。

現在プロセス変革に取り組んでいる、または最近対応したという企業は多いものの、改善を図っても実際には期待した成果を得られないことが往々にしてあります。その結果、多くのCOOがこのありがちな悪循環に悩まされ、以下のような疑問を持つようになります。

  • 改善にはなぜこんなに時間がかかるのか
  • なぜ改善の成果は一気に実現するのではなく、徐々に現れるのか
  • なぜプロジェクトによってもたらされる価値は長続きしないのか
  • さらなる改善の余地があることは誰もが分かっているはずなのに、なぜそれを実行できないのか

では、プロセス変革への取り組みのポテンシャルを最大限に引き出すためには何ができるのでしょうか。

データ主導で迅速なダイナミックアプローチ

業務部門は、不具合が起こっている場所を素早く特定し、早急に対処できるような対応策を必要としています。そして、その答えはデータにあります。

大半の企業は、ERPや関連するシステム上に取引や財務に関する情報を大量に保有しています。現在のプロセスモデリング、プロセスマイニングおよびインテリジェントオートメーション等の機能を導入することで、保有データを有効活用し、以下のことが可能となります。

  • エンドツーエンドプロセスの仕組みと不具合の発生場所を把握する
  • プロセスデザインの改善モデルを作り、シミュレーションする
  • なるべくプログラミングを使用せずにプロセスを構築する
  • 定型的な業務から手作業を減らす
  • 統制環境およびリアルタイムのパフォーマンスモニタリングを構築する
  • 変革のための内部プロセスと継続的な改善の機会を特定するための概念実証を作成する

そしてこれらは全て、最先端のプロセスマイニングとプロセスモデリングの技術を使えば短時間で実行することができます。このようなアクションはプロセス変革を実現するための新たなアプローチの構成要素であり、当社ではこれをプロセスバイオニクス(図1参照)と呼んでいます。

図1 プロセスバイオニクス―プロセス変革への新たなアプローチ
※クリックまたはタップして拡大表示できます

このアプローチは、データ主導自動化、不具合を起こす根本原因の特定プロセスの視覚化という点で他のアプローチより優れており、プロセスの周辺データをマッピングすればすぐに非効率な部分を特定できるため、従来のアプローチよりも時間がかからないという特徴があります。

プロセスバイオニクスはより持続可能なアプローチでもあります。企業のプロセスをデジタル化し、より詳細に文書化することで、重要な情報を日々の業務上の意思決定に役立てることができます。プロセスインテリジェンスのリポジトリは、ビジネス環境が変化する中で、そのような変化が既存プロセスに影響を与えるか否かを判断する基準となるため、アプローチの持続可能性は変革を実現するための重要な要素です。

さらに、このアプローチではダイナミックな分析機能を利用することもできるため、一般的なツールを使って定期的にプロセスを見直し、プロセスインテリジェンスのデジタルリポジトリをベースに長期的な視点で継続的なプロセスの改善を追求することができます。

どこに焦点を当てるか

様々な業界の業務部門と仕事をしていると、顧客対応、ミドルオフィス、バックオフィスの以下のようなプロセスで不具合が発生しているケースを頻繁に目にします。

  • 見込み客に対するマーケティング
  • クライアントオンボーディングおよびクライアント情報へのアクセス
  • 販売プロセス(受注から入金)
  • 購買プロセス(調達から支払い)
  • 支払いおよび収益サイクルオペレーション
  • 連絡窓口のオペレーション
  • 課題の効率的な解決プロセス
  • 記録から報告までのプロセス

例えば、ある世界的な大手石油・ガス会社では、顧客への請求書発行プロセスに重大な問題があり、運転資本に深刻な影響を及ぼしていました。請求書発行の遅延を2日短縮するという目標を掲げ、従来の時間のかかる方法でプロセス改善を試みましたが、目標を達成することはできませんでした。そこでプロセスバイオニクスを導入したところ、わずか数カ月で遅延を約2日短縮することができたのです。何よりもこの取り組みによる最大の成果は、サイクルタイムの削減によって運転資本が5億ドルも改善されたことでした。
より高度なプロセスマイニングやプロセスモデリングの技術を使えば、業務部門を悩ませる以下のような疑問の解決策がすぐに見つかります。

  • なぜアカウントの開設やオーダーの処理などのプロセスに対する顧客満足度が低いのか
  • 顧客の注文確認、商品の発送や在庫マーキングにたびたび遅延が生じるのはなぜか
  • 従業員はどのような業務に従事しているのか、根本的なプロセスはどの程度効果的なのか
  • なぜ当社のプロセスは先進的な取り組みと異なっているのか
  • なぜ顧客が商品を受け取った後でもっと早く請求書を発行できないのか
  • 顧客からの支払い処理や送金のスピードはどの程度改善できるか
  • なぜ顧客との最初のやり取りで顧客サービスの問題を解決できないのか
  • なぜ当社の係争処理プロセスは複雑なのか
  • インテリジェントオートメーションに特有のオポチュニティとは何か、そしてその価値は何か

今日のコロナ危機に起因する経済情勢下では、これらの疑問を解決することの重要性が一層高まります。プロセスの不具合を迅速に特定し対処することで、業務部門はプロセス変革の取り組み、顧客体験、運転資本の改善を、つながりのあるものとしてより直接的に見通せるようになります。

次回は実際のエピソードをご紹介します

COOや企業の業務部門は、競争力を維持するためにビジネスプロセスを改革しなくてはならないだけでなく、コロナ危機による市場の継続的な混乱に直面しています。この現状こそが、イノベーション、実行、進化を重視するプロセス変革を目指した新しいアプローチの存在理由です。次回は、プロセスの不具合を迅速に特定し、その解決策を早急に策定する方法についてさらに深く掘り下げます。どうぞご期待ください。

業務部門におけるプロセスバイオニクス

Article 1: プロセス改革に吹き込む新風:すべてのCOOが知っておくべきこと

Article 2: 次世代のプロセスキャプチャー

Article 3: プロセスバイオニクス:プロセス改革の現場

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