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環境変化に対応した組織構造へのシフトと人的資源(リソース)の最適化【前編】

シェアード・サービス・センター(SSC)やビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の活用による効率化の促進、高付加価値業務へのシフトの実現

デジタル化・オンライン化の加速、労働市場の多様化、労働力の減少に対応するため、これまでの業務別の組織構造から機能別の組織構造へシフトが求められています。機能別組織においてリソースを有効活用する施策として、効率性が求められる業務へのシェアードサービスやBPOの活用が考えられます。シェアードサービス、BPO導入の検討ポイントについて紹介します。

企業を取り巻く環境と仕事の変化

新型コロナウイルスの流行を契機に、デジタル化・オンライン化の加速、労働市場の多様化といった変化が進んでいます。一方、現状DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるためのIT投資があまり進んでおらず、社会的な人材不足の中で業務に必要な人的資源(リソース)を確保することも難しい状況が見受けられます。

また、仕事という観点においても、大きな変化が見られています。

まず、「仕事の手段」の変化が挙げられます。技術の進歩の中で、これまで手作業で実施している仕事の多くはツール等の活用による自動化が可能になっています。単純作業におけるRPAの活用などは既に多くの業務で取り入れられているのではないでしょうか。また、直近で大きな話題となっている生成AI等のAI技術を業務の中に組み込んでいる企業も増えています。

次に、「仕事の担い手」の変化です。契約社員や派遣社員の活用は一般的となっていますが、今後は雇用形態にとらわれない柔軟な業務配分や、従業員のリスキリングによるリソースの有効活用を進めることが求められます。

こうした仕事の変化に対応するには、既存の組織を前提とした取り組みでは十分ではなく、組織構造の再構築を通じたリソースの最適配置が必要となっています。

 

オペレーティングモデルの変化~機能別の組織構造へ

これまで、企業の組織は業務別に構成されることが一般的でしたが、個々の業務に限定されない、機能別の組織構造に変化していくことで、各機能の特徴を踏まえた高度化・効率化の実現に繋がります。

リソースが限定されていく中で、企業は付加価値を追求する、固有性の高いビジネスに関する業務に注力していくことが推奨されます。

一方で、一般的な経理処理のような、共通性が高く、効率性が求められる業務に関しては従来部門の垣根を超えた標準化、効率化、集約化により、ローコストオペレーションを追求していくべきと考えます。その選択肢の一つとして検討すべき方策が、グループ企業でのシェアード・サービス・センター(SSC)の設立及びビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)による業務の切り出しです。

 

SSC/BPO利用の検討ポイント

SSCとBPOはどちらも業務の標準化、効率化、集約化を目的としていますが、SSCの場合は社内やグループ企業内で業務を完結させる手法であるのに対し、BPOは社内業務を外部へ委託するアウトソーシングの手法であり、異なった特徴があります。

どのような目的で利用するのかを明確化した上で、それぞれの強み・弱みを理解し利用を検討することが重要です。

主要な検討ポイントを以下に例示します。

一般的には集約化する業務が単純作業の場合BPOを利用するメリットが大きいですが、比較的複雑で判断を伴う業務はBPOによる外部化は困難であり、SSCの方が適しています。
しかし、運用開始までに業務プロセスの標準化等に相当の労力とコストがかかる点、業務を一元化する過程での人員の配置転換等により社員の抵抗・モチベーションの低下が伴う可能性がある等、SSCの構築にも課題がないわけではありません。

また、SSC/BPOの利用により業務プロセスや担い手が変更されるため、新たなプロセスにおける統制の整備やSSC/BPOの業務運用を管理するガバナンスの構築も併せて検討が必要です。

次回は、SSC/BPOの導入では解決が難しい課題への対応として、デロイト トーマツが提唱するCorporate as a Serviceを紹介するとともに、リソース再配置の推進のアプローチを紹介します。

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