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テクノロジーが働き方をどのように再考できるか
Future of Work:テクノロジーを活用した働き方の未来 第1回
進化するビジネス環境やテクノロジーによって、人々の働き方が激変しています。仕事(業務)においてテクノロジーが担う役割が変化する中、ビジネスやテクノロジーのリーダーはどのように仕事(業務)、労働力、職場を再設計していくことが望ましいのでしょうか。デロイト トーマツではテクノロジーと仕事(業務)、労働力、職場のあり方について再考するトピックスを全6回にわたり連載いたします。
テクノロジーの役割に関する根本的な問い
進化するビジネス環境、トレンド、および破壊的イノベーションによって、仕事(業務)におけるテクノロジーの役割が急激に変化しています。
本レポートでは、テクノロジーを活用したFuture of Work(人々とテクノロジーの共存、協働を通じた「人間中心の働き方」の実現と「生産性およびエクスペリエンス」の向上を通じ、人間のポテンシャルを最大化させながら働くことのできる未来を構想する取り組み)について以下の根本的な問いに取り組むことを目的としています。
- 生産性とコスト効率を飛躍的に向上させることだけに焦点を当てたこれまでの仕事(業務)を見直し、価値やインパクトのある成果を出す新しい仕事(業務)の評価ができるようにするためには、組織はどのようにテクノロジーを活用すべきか?
- 将来のテクノロジー人材の定義は現在とどう違うか?仕事(業務)や役割はどのように変わるのか?どのようなスキルや能力が必要になるか?
- 現在の職場は、進化するテクノロジーを活用した仕事(業務)の見直しと、それを遂行するために必要な労働力をサポートしているか?テクノロジーを活用した仕事(業務)の進化を維持するためには、どのように職場を再設計する必要があるのか?
本連載では、Global CIO Survey等の調査結果および数十人のビジネスとテクノロジーのリーダーへのインタビューに基づき、テクノロジーを活用したFuture of Workについて各種トピックス(1)を論じたうえで、ビジネスとテクノロジーのリーダーが今後、どのように戦略を立て、コラボレーションしていくべきかを示します。
テクノロジーの役割における重要な4つの変化
デロイトが実施する継続的な調査であるGlobal CIO Surveyでは、組織におけるテクノロジーの役割について重要な4つの変化を特定しています。
【1】信頼できるオペレーターからビジネス共同創造者へ
事業戦略とテクノロジー戦略は今や密接に結びついてきています。そのため、テクノロジー部門は、これまでの主な役割であった業務最適化を継続して行いながら、ビジネスの価値をビジネス部門とともに共創することに重点を置くよう進化する必要があります。
また、消費者向けオンライン体験と同等のエクスペリエンスと機能を迅速かつ効率的に提供することに対する需要が高まっているため、テクノロジー部門の仕事(業務)は、従来のプロジェクトやプロセスに焦点を当てたものから、機能横断的なコラボレーション、顧客へのリードタイムの短縮、その他のユーザー/顧客ニーズ、およびビジネス成果を優先するように、より製品や成果を中心に移行しています。
【2】サービスの提供から価値の提供へ
近年、自動化、クラウド、SaaSモデルが定着し、テクノロジー導入の合理化と高速化が進んできました。その結果、テクノロジー部門とビジネス部門の働き方やコラボレーションの方法を変え、これまでテクノロジー部門で行ってきた運用が、部分的に機械やサービスプロバイダーに移行されています。
テクノロジー部門が信頼できるオペレーターからビジネスの共同創造者へとシフトすることは、ビジネス部門に対するテクノロジー部門の価値の向上に寄与しています。
【3】コストセンターから収益エンジンへ
一般的に、組織の中でテクノロジー部門はコストセンターと見なされ、CIOは可能な限り低いコストでサービス提供を行うように求められます。平均的なテクノロジー部門は、IT予算の半分以上 (56%) をこれまでの業務の維持に利用し、新しい業務機能の構築にはわずか18%しか投資できていません。(2)
テクノロジー部門がイノベーションを推進し、変革の担い手となるためには、コスト削減よりも、収益、成長、株価、その他の事業価値や株主価値を測定するための戦略的投資を優先すべきという結果はデータでも確認することができます。デジタル戦略が明確に定義され、テクノロジー部門が高く評価されている「デジタル先進企業」のCIOは、すでに予算の半分以下 (47%) を事業運営に、26%をイノベーションに割り当てています。3~5年後には、事業配分をさらに年間予算の3分の1に減らし、イノベーション資金を38%に増やす計画も立てています。(2) CIOにとって、財務上のリターンに精通し、技術投資の価値を明確にすることは、新しいテーマに取り組むことにも役立ちます。
テクノロジーと事業戦略が融合すると、テクノロジー部門はイノベーションの共同推進者であり、技術投資による収益の共同創出者となります。テクノロジー部門はイノベーションのアジェンダを示す必要があります。また、企業は、ITが将来に向けてビジネスを位置づける変革エージェントであることを理解する必要があります。(3)
【4】サイバーセキュリティからリスクとレジリエンスへ
テクノロジーリーダーはこれまで、リスクに関しては、特にサイバーセキュリティに主眼を置いてきました。しかし、今後、サイバーセキュリティ以外にも、ビジネスの継続性(BCP)や統合されたビジネスとテクノロジーの戦略固有のリスクにも焦点を当てる必要があります。これらのリスクは、従来のIT環境だけでなく、工場やその他のワークスペース、製品、さらには顧客の場所にまで及びます。デジタルで接続された顧客が、セキュリティと回復力を必要とする大量のチャネルセットを通じてデータにアクセスできるようになることから、製品の設計と開発にセキュリティを統合することが求められるようになるのです。
テクノロジーにおけるFuture of Workを形作る力
テクノロジーが組織の中で新たな役割を担うようになったことで、テクノロジーに関する仕事(業務)にも変化が求められています。テクノロジーを踏まえた仕事(業務)の未来を再構築するために、以下の3つを意識しておくことが必要です:
- 破壊的テクノロジーの普及は、ビジネス、産業、市場を絶えず変化させています。
- テクノロジーの役割は、事業戦略と変革の「触媒」の役割にシフトしつつあります。つまりは、テクノロジーへの期待と実現できる提供内容(サービス)が変化し、ビジネス機能とテクノロジー機能の境界線が曖昧になっています。
- 世界的な人口統計を背景に、ギグワーカーや派遣労働者、多世代の労働力、より多様な人材、グローバルな人材市場など、労働力のトレンドは、労働市場全般、特に技術労働力の変革をもたらしています。
このような急激な変化の中で、トレンドに精通したCIOやその他テクノロジーリーダーは、技術分野のFuture of Workの形成を目指しています。テクノロジーを活用し、競合する要求・要望のバランスを取りながら、仕事(業務)の卓越性を維持し、ビジネスと顧客の期待に応え、イノベーション、ディスラプション、デジタル変革を推進することができるのです。
従来のIT分野から新しいテクノロジー分野へ
多くのテクノロジーリーダーは、このような変化を認識しつつも、テクノロジーの仕事(業務)と、それに必要な労働力や職場への根本的な影響を理解していない可能性があります。その結果、一部のリーダーは、種々雑多で場当たり的な取り組みを行い、Future of Workの理想を追い求めてきました。
現在、従来のIT業務の範囲では、様々な変化には対応できなくなっています。ビジネスリーダーは、ITの枠を超えてテクノロジーを活用した仕事(業務)を再定義し、価値創造に焦点を当てたテクノロジー活用を創出する必要があります (図1) 。本報告書では、それぞれの責任範囲が大きく異なるため、あえて 「IT」 の頭文字を 「テクノロジー」 に置き換えました。ITとは、歴史的なテクノロジー組織とその内向きのIT分野を指します。将来的には、テクノロジー業務は企業全体に広がり、CIOが直接コントロールできなくなりつつあります。ビジネスリーダーもテクノロジーリーダーも、テクノロジーを組織横断で総合的に見るという考え方に慣れることが有益です。
新しいテクノロジーの分野では、テクノロジー部門がこれまで実施してきた仕事(業務)の方法が変更されるだけではありません。テクノロジー部門という組織の境界を超え、ビジネス側も参画した根本的に新しいタイプの仕事(業務)を行う必要があります。最終的に、これらの新しい考え方が、仕事(業務)、労働力、職場を変革させていくのです。
脚注)
(1)Jeff Schwartz et al., What is the future of work?, Deloitte Insights, April 1, 2019.
(2)Bill Briggs et al., Manifesting legacy: Looking beyond the digital era, Deloitte Insights, April 8, 2018.
(3)Interview with Jo-ann Olsovsky, conducted December 4, 2018.
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