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未来の働き方における新しいテクノロジーの分野

Future of Work:テクノロジーを活用した働き方の未来 第2回

進化するビジネス環境やテクノロジーによって、人々の働き方が変化する現在、テクノロジーが担う役割が変化しています。本連載では前回までに、テクノロジーが組織の中で新たな役割を担うことになったことに触れました。今回はFuture of Workで活用できる新しいテクノロジーの分野について説明します。

新しいテクノロジーの分野

1.ビジネスの共創

テクノロジーは、ビジネス機能とコラボレーションし、イノベーションを推進することで、ビジネスを成長させる、または競争優位性を促進させる製品やサービス開発等に貢献します。これを実現するには、製品やサービスの設計、開発、展開の際に、テクノロジー部門とビジネス部門間の前例のないレベルのコラボレーションが必要になります。

2.価値の実現と評価

テクノロジーを活用したFuture of Workは、評価の指標を、従来のIT組織が利用していたガバナンスやパフォーマンス指標から、価値の実現やその測定に重点を置くように進化させる必要があります。ビジネス目標を明確にすることで、実現させるべき価値と指標が同様に明確になります。収益、市場での成長、顧客満足度などのKPIは、ビジネスとテクノロジーの整合性を維持し、チームが共同で説明責任を果たす際に役立ちます。

3.プロダクトマネジメント

プロダクトマネジメントの考え方を従来のIT組織の考え方に適用すると、テクノロジー部門の仕事(業務)は、アプリケーション開発を行い、機能をリリースすることではなく、ビジネス・業務上の問題を解決するための製品を開発・提供することと見なすことができます。テクノロジー部門の仕事(業務)は、一貫性のある製品戦略の策定、ビジネス領域や機能、外部パートナーとの計画の策定、および製品開発プロセス全体を通じて、顧客、見込み客、エコシステムパートナーなどの外部ステークホルダーとのエンゲージメントを確保するように変化していきます。(*)

(*)製品マーケティングはこの分野の重要な構成要素であり、市場ポジショニング、顧客ペルソナの作成、製品の発売、販売戦略の開発(自社製品、消費戦略の策定等)などが含まれます。

4.エクスペリエンスとデザイン

新しいテクノロジーの分野では、End to Endのライフサイクルにテクノロジーを組み込み、カスタマージャーニー全体に製品とソリューションを提供し、重要なボトルネックを迅速に特定して解決できるようにするなどのタスクに重点が置かれます。アナリティクスとAIは、ユーザーの行動を予測し、差別化されたエクスペリエンスを提供します。これにより、収益の増加も可能になります。顧客のエクスペリエンスの評価が高い企業の収益は、他の企業よりも5倍以上高くなっており、テクノロジーのリーダーはこの優位性を獲得するために、顧客のエクスペリエンスの設計に積極的に関与する必要があることを示唆しています。

5.テクノロジーアーキテクチャ

既存のシステムアーキテクチャはビジネスの急成長の犠牲になることがよくあります。合併や買収、老朽化したレガシーシステムやプロセス、データやアプリケーションの増加によって、アーキテクチャ(プラットフォーム、インフラストラクチャ)が複雑になることもあります。クラウドの導入または既製のソフトウェアの購入に関する意思決定は、コストや機能だけでなく、将来のオプション、柔軟性、俊敏性、拡張性、市場投入までのスピードを含めて評価する必要があります。

6.データとインサイト

顧客のデータはエンゲージメントを高め、チームが個々のカスタマージャーニーをサポートする製品や体験を生み出すのに役立ちます。ビジネス上のデータは意思決定を改善し、製品データは収益化または信頼性と経験の向上に役立てることができます。しかし、データだけでは価値を高めることはできません。まず、データを正規化し、組織全体や外部ソースから集計し、分析して、収益化できるインサイトを提供する必要があります。データを収益化や課題解決に活かせている組織はまだまだ少ない状況です。

7.デリバリーと運用

継続的なデリバリーは、継続的に品質をケアしながら、より迅速な運用を可能にします。これには、アジャイル開発やDevOpsのようなアプローチへの移行が含まれています。従来の環境では、複数のデリバリー手法が混在しているため、これらの方法に移行する場合には、ハイブリッドアプローチを採用するといったケースも想定されます。

8.人材の確保

将来的に活躍できる人材は、技術的なスキルだけでなく、俊敏性、柔軟性、協調性、その他のソフトスキルでも評価される可能性が高い状況です。必要なスキルにアクセスするために、リーダーは、フルタイムおよび契約社員、クラウドソーシング、外部パートナーのエコシステムを含め、オープンな人材活用を想定する必要があります。さらに、リソースの確保には今後、人と機械(生成AI、RPA等)のコラボレーションやパートナーシップも含まれてくることになります。機械はツール、アシスタント、仲間としての役割のみならず、マネージャーとしても機能する等、幅広い分野の仕事(業務)を遂行し、企業は組織を強化するためにますます機械に依存するようになる可能性があります。(1)

9.パートナーとエコシステムの編成

ビジネスやテクノロジーのリーダーは、幅広いビジネス・エコシステムに従事することで、ビジネスや業界プラットフォーム、デジタルマーケットプレイスなどの新たな収益源を活用することができます。エコシステムにおいて、パートナーの存在は組織のビジネス戦略に関連した新しいテクノロジーの特定や理解に寄与し、専門分野や知識の領域を超えたコラボレーションの結果として組織のイノベーションを加速させることも期待されます。

10.セキュリティ、リスク、レジリエンス

従来のITの領域ではリスク、セキュリティ、コンプライアンスについて、組織の成長に関連するリスクの評価や管理を行うような設計ができていませんでした。先進的な組織では、急速に変化する外部環境の脅威から身を守るため、AIを使用し、価値創造に使用される顧客や組織のデータ、更には知的財産に対するリスクを管理し、ハイパーコネクテッド時代の要件を満たすための組織のレジリエンスを強化し、デジタルの責任と倫理を所有することによって、すでにこのようなリスクを管理しています。

相互に関連する仕事(業務)、労働力、職場

外部環境や内部環境の変化によって、Future of Workは仕事(業務)、労働力、職場に再定義されます。すなわち、図1に示すように、何 (仕事)を 、誰 (労働力)と 、どこ (職場)で働くのかということです。

図1

 

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Future of Workへの道のりは、ビジネス戦略、業界の原動力、市場のダイナミクスによって出発点が異なります。しかし、出発点にかかわらず、組織はまず、労働力や職場の変革を検討する前に、新しい仕事(業務)と成果を定義する必要があります。

  • 仕事(業務):テクノロジーの仕事は今後さらに、人間と機械のコラボレーションによって行われるようになります。ビジネスやテクノロジーのリーダーは、人、ロボット、アルゴリズムを連携させる方法を考えなければなりません。テクノロジーの組織はプロジェクトやプロセスを中心とした運用モデルから、製品と成果を重要視する運用モデルへと移行する必要があります。ビジネスと価値を共創し、プロセスではなく顧客に焦点を当てて働くことは、より本質的で有意義な経験にもなります。組織がビジネスとテクノロジーを組み合わせた戦略と目標に重点を移し、高度なスキルをもつ人材自らが現在行っている非効率な手作業や反復作業が自動化できるようになれば、人材をより付加価値を創出できる仕事に活かすことができるでしょう。
  • 労働力:今後、仕事と役割、人材とスキル、組織構造が進化します。雇用モデルはすでに変化し始めており、組織はオンバランスおよびオフバランスのさまざまなソリューションを通じて人材にアクセスできるようになっています。そして、高度な人材は専門技術者ではなく、ビジネス価値の共同創造者になることができるのです。
  • 職場:テクノロジーを活かす職場は、ロケーション中心からリレーションシップ中心に進化しています。地理的な場所はさまざまであっても、生産性を維持・工場させながらコラボレーションし、共同作業ができるように職場を再設計する必要があります。バーチャルオフィス、コワーキングスペース、従来のオフィススペースなどの地理的なネットワークに拡張すると、コラボレーションやデジタルリアリティツールなどのシームレスに統合されたテクノロジーは、人と機械のつながりを促進し、サポートすることができるのです。

次回以降、仕事(業務)、労働力、職場の変化をさらに詳しく説明します。
 

脚注)
(1)Jim Guszcza and Jeff Schwartz, Superminds: How humans and machines can work together, Deloitte Insights, January 28, 2019.

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