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未来の働き方における新しいテクノロジーの仕事

Future of Work:テクノロジーを活用した働き方の未来 第3回

進化するビジネス環境やテクノロジーによって、人々の働き方が変化する現在、テクノロジーが担う役割が変化しています。本連載では前回までに、今後テクノロジーを活用すべき分野を踏まえて、Future of Workにおける新しい仕事(業務)、労働力、労働環境の観点で再定義することの重要性を述べました。今回はその中でも仕事(業務)について具体的な考え方を説明します。

Work: テクノロジーの仕事(業務)を成果主義へ

従来のIT組織はビジネスニーズに対応するシステム機能を開発し、リリースすることに誇りを持っていました。しかし、今後テクノロジーに関わるリーダーは、複雑なモデルやフレームワークを活用して、人材、プロセス、テクノロジーを評価、開発しながらビジネスに対して価値を出していくことが求められます。

ビジネスとテクノロジーがコラボレーションして戦略を策定し、ビジネス価値を共創するために協力すると、プロセスと役割が変化し、従来のビジネスとテクノロジーの境界を越えたスキルとタスクの定義が必要となる可能性があります。そのため、CIOを中心としたリーダーたちには自身や各組織の働き方について再考が求められます。システム機能開発のためのプロジェクトの成果ではなく、その成果から得られる価値が重要になります。

テクノロジーの仕事(業務)を成果主義に移行していくには、考え方を根本的に変える必要があります。テクノロジーはテクノロジー部門だけのものではありません。ビジネス・リーダーは、テクノロジーの仕事(業務)についても、テクノロジー部門と同様に責任を負います。

テクノロジーの仕事(業務)が将来どのようなものになるかを再考する2段階のプロセスには、まず仕事(業務)を分解して成果を特定し、次に新しい分野をサポートする役割を定義することが含まれます。

ステップ1:仕事(業務)を分解し、成果を特定する

新しい仕事(業務)を明確にし、新しい役割を担う人々にガイダンスを提供するため、テクノロジーのリーダーは仕事(業務)を成果毎に分解する必要があります。また、成果とともに、求められる責任についても定義します。 (図1)

図1

 

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仕事(業務)の成果を分析することは、テクノロジーの役割の変化に基づいて、組織がどの活動を継続すべきか、中止すべきか、あるいは別の方法で提供すべきかの意思決定に寄与します。経営幹部にとっても、人間、テクノロジー、またはその組合せによって実行される仕事(業務)を特定し、すべての利害関係者にとって最適な仕事(業務)に必要な編成を検討するのに役立ちます。

更に、仕事(業務)がどのように変化しているかをより深く理解し、今後、仕事(業務)に応じて組織がどのように進化させるべきかを検討する際にも参考になります。例えば、システムの管理 (図2) や運用 (図3) という仕事(業務)の成果はどのように定義できるかを明らかにすることができます。

図2

 

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図3

 

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ステップ2:新しい専門分野をサポートする役割の特定

仕事(業務)の成果が設計されたら、リーダーは新しいルールや成果をサポートするために必要な組織と役割を確立できます。新しい役割が生まれますが、プロジェクト・マネージャーやビジネスアナリストなど役割は、進化したり、需要が減ったり、消えたりする可能性もあります (図4) 。プロダクトオーナーのような一部の役割は、テクノロジー部門のメンバーではなく、ビジネス部門の従業員が担当するものもあるかもしれません。

図4

 

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リーダーは、新しい仕事(業務)に移行しない役割を特定し、リソースをどのように再教育、訓練、サポートすれば移行できるかを判断する必要があります。調査対象となったテクノロジーに関する経営陣の大多数 (89%) は、現在のスタッフの再教育計画を立てていますが(1) 、すべての従業員が役割を移行したいと考えているわけではありません。例えば、一部のプロジェクト・マネージャーはスクラム・マスター(*)になれない可能性があります。仕事(業務)の成果と説明責任を明確にすることで、リーダーはテクノロジースタッフやビジネススタッフと将来の期待について率直に話し合うことができます。

(*)スクラム・マスター:アジャイル開発フレームワークにおける進行役

新しいルールをサポートする役割と組織構造を明確にすることで、リーダーがスムーズな移行を行うことができます。例えば、平均的なテクノロジー組織には、数百人のプロジェクト・マネージャーとアプリケーション開発者がいる場合があります。経営幹部は、これらの役割に必要な新しいスキルとツールを理解し、評価し、伝達し、現在の能力、将来の可能性、情熱に基づいて個々のロードマップを特定することができるのです。

今回は、今後テクノロジーを活用すべき分野を踏まえて、仕事(業務)という観点からで再定義することの重要性を述べました。次回は、労働力の観点から、具体的な役割の変化についてご説明します。
 

脚注)
(1)Unpublished data from Punit Renjen, How leaders are navigating the Fourth Industrial Revolution, Deloitte Insights, January 20, 2019.

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