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Future of Workに経営者はどのように対応すべきか

Future of Work:テクノロジーを活用した働き方の未来 第6回

進化するビジネス環境やテクノロジーによって、人々の働き方が変化する現在、テクノロジーが担う役割が変化しています。本連載ではこれまで、今後テクノロジーを活用すべき分野を踏まえて、Future of Workにおける新しい仕事(業務)、労働力、労働環境の観点で再定義することの重要性を述べました。今回は、Future of Workに経営者はどのように対応していくのか、Deloitteの考え方を説明します。

Future of Workを想像する

これまで、第1回から第5回までの連載記事では、未来の働き方はテクノロジーを活用することでどのように変化していくことが想定されるか、仕事(業務)、労働力、労働環境の観点で述べてきました。

この変化の中で融合する領域や新しい人材モデル、機械とのコラボレーション等の複雑さを考えると、組織のFuture of Work戦略の策定と実行は難易度が高く感じるかもしれません。そこで、Future of Workに向けたファーストステップとして、 「Imagine-Compose-Activate」 と呼ばれるメソッドをご紹介します。

Imagine:
まずは、目先の問題解決や制約事項にとらわれずに、3~5年後の組織の未来を想像することから始めましょう。予算、人員、またはその他の制約がない場合、ビジネスはどのようになりますか。どのように価値を高め、有意義な仕事(業務)が必要になるのでしょうか。

Compose:
仕事(業務)と成果を整理することで、ビジネスに必要な自動化、代替人材ソース、コラボレーティブな労働環境を活用した仕事(業務)、労働力、労働環境の選択肢を分析および再設計することが可能になります。

Activate:
最後に、労働力と労働環境、及び事業モデル、文化、人材育成、リーダーシップの調整を行い、成果を測定して報告する方法を決定することによって、Future of Workを活性化します。

リーダーからの教訓

今回グローバルCIO調査等の調査でインタビューを行った経営陣は、Imagine-Compose-Activateプロセスを有効にするための3つの教訓を提供してくれました。
 

最初に「ズームアウト」する

テクノロジーに関わるリーダーは、問題解決能力が高く、迅速に問題を解決するために問題を 「ズームイン」 する傾向があります。仕事の将来に関する特定の問題点に焦点を絞って解決しようとするのではなく、仕事、労働力、労働環境の変化を総合的に考慮して、まず全体像を見ることを推奨します。3~5年を 「ズームアウト」 し、限界のない未来を思い描くことは、リーダーが現在の制約なしに可能な方法を想像し、定義するのに役立ちます。(1)これは、リーダーが現在から 「抜け出し」 、仕事、労働力、労働環境の可能性を明確にする変革を推進するのに役立ちます。
 

人材へのAccess-Curate-Engage

従来の人材マネジメントの考え方は、必要な人材を引き付け、育成し、維持することに焦点を当てていましたが、今後は、Access-Curate-Engageアプローチを推奨します。このアプローチでは、組織はオープンに人材にアクセスし、テクノロジーアスリートがリアルタイムでスキルを構築できる消費者向けの学習体験をキュレート(収集・整理)し、報酬、インセンティブ、リーダーシップを再調整して、アイデアの生成、共同創造、コラボレーション、説明責任、透明性をサポートし、可能にすることで、人材をエンゲージすることができます。
 

反復、配信、繰り返し

Future of workでは、ビジネスとテクノロジーの変化に対応するために、仕事(業務)、労働力、労働環境に対して継続し、変革を繰り返します。新しいテクノロジーやビジネスモデルの出現に伴い、テクノロジーの仕事は絶えず変化し、テクノロジー組織のリーダーは迅速に適応する必要があります。

Future of Workの変革に向けて

組織のリーダーは組織に価値を提供するためにビジネスとテクノロジーの交差点における活動が求められます。テクノロジーを活用したFuture of Workに向けてリーダーたちの教訓の他にも推奨される事項があります。
 

シフトの重要性:IT機能から仕事の成果へ移行する

従来、技術的な作業は、中央集権的なIT機能によって実行され、約束された成果が達成されたかどうかを確認するためにビジネスに 「丸投げ」 されることが多くありました。ビジネス・マインドセットの変革を開始するために、この連載では意図的に従来のIT機能の概念から離れ、 「仕事の成果」 を重視するよう述べました。仕事の成果の概念は、継続的なビジネス価値を可能にする調整や変化の繰り返しだけでなく、技術とビジネスリソースの両方に製品の成果に対する責任を負わせることが重要です。
 

完璧でなくとも、スピードと進歩を重視する

市場投入までのスピードと時間は、競争力と創造の鍵となることが多くあります。顧客のフィードバックに基づいて実行可能な製品をリリースし、反復することは、すでに標準となりつつあります。未来の開発は、大型艦艇よりもスピードボートの建造に近いです。信頼性、セキュリティ、回復力は依然として必要ですが、通常は柔軟性、俊敏性、およびスピードがより重要な場面も多くあります。
 

共創を受け入れる

Future of Workは一人ではできません。経営幹部やビジネス部門等のリーダーと提携し、十分な情報に基づいてテクノロジーに関する意思決定を行うための知識と能力が必要です。グローバルCIO調査では、ビジネスに貢献するテクノロジーのリーダーは、同僚との関係をより深く築いていることが多いとレポートされています。(2)テクノロジーのリーダーは財務、人事、調達等のリーダーと連携して、ビジネスの成果に責任を持つように活動することが重要です。
 

成果を念頭に置いて反復する

Future of Workを検討するきっかけとして、ビジネスの再編成、人材スキルや労働環境の再設計、その他の多くの潜在的な要因がありますが、入り口に関係なく、企業は労働力や労働環境を変革しようとする前に、仕事(業務)の成果を定義することが重要です。テクノロジーの仕事(業務)の変化を理解せずに、労働力の再配置や労働環境の再設計に着手することは、混乱を引き起こす可能性があります。仕事(業務)の成果が明確になった後、リーダーはツール、自動化、労働力のニーズ、機械によって人間を強化する方法を特定することができます。そして、仕事(業務)の成果と労働力を特定した結果、変革をサポートするために必要な物理的な労働環境、コラボレーションツールの検討につながります。
 

リアルタイム学習を有効にする

プロが何十年もかけて技術を完成させた時代は終わりました。平均的な従業員は、組織内で複数のキャリアを持つことがあります。優秀な人材を確保するために、リーダーは、リアルタイムのスキル習得、OJT、経験に基づく迅速な知識伝達を提供する継続的な学習プログラムを開発する必要があります。
 

テクノロジーセンシングを通じて情報を入手する

テクノロジーの変化のスピードが速くなると、進歩についていくのが難しくなります。テクノロジーのリーダーは、新しいテクノロジーのトレンドとそのビジネスへの影響について常に情報を得ることが求められます。多くの企業がパートナーのエコシステムを活用して新しいテクノロジーを活用している一方で、大学やインキュベーションハブと協力したり、スタートアップに投資したりしています。このような 「テクノロジーセンシング」アプローチの結果として得られた知識は、技術の流暢性を高めるために組織全体に普及させることが重要です。
 

目的に整合する

社外の企業ブランド、社内の文化、およびテクノロジー組織のミッションは、より高い目的に沿ったものでなければなりません。優秀な人材は、野心、情熱、目的が経済的な配慮を上回る企業で働きたがることが多くあります。彼らは、意味のある目的を信じ、それに大きく貢献する組織を求めています。環境問題、人間開発、公衆衛生、または仕事に意味をもたらすのに役立つその他の関連する目的に組織を正しく合わせることは、人材の採用に直接影響を与えることができます。
 

リスクを許容する

通常、テクノロジーのリーダーはリスクを回避または最小化し、ビジネスリーダーはリスクを取りながら価値を最大化しようとします。この2つの視点はしばしば対立します。テクノロジー領域におけるFuture of Workを形作るリーダーは、主要な利害関係者とともにリスクに応じて意思決定と軌道修正を行うことができます。不確実性を受け入れ、ビジネスとともにより多くの情報に基づいたデータ駆動型の意思決定を行うために協力することが重要です。
 

大胆な未来を創造する

単一のツールやソリューションではなく、全体像に焦点を当てることは、Future of Workを創造するための第一歩となります。単にスタッフのスキルを変更したり、新しいリーダーシップチームを導入したり、既存の作業を自動化したりするだけでは、現在の課題を軽減できない可能性があります。仕事(業務)、労働力、労働環境について戦略的に計画を立て、実行をしていくことが成功へのキーファクターとなりえます。

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