事例紹介

執行と監督が両輪となって成長戦略を結実させ、機能させる

社外取締役の視点を持続的な成長に活かす

デロイト トーマツ グループでは、コーポレートガバナンスの観点から、持続的な成長及び中長期の企業価値向上に資する情報提供を目的として、事業会社、機関投資家の考えや取組みをインタビュー形式で紹介いたします。今回は、TDK株式会社の取締役 兼 専務執行役員 戦略本部長の逢坂氏に、TDKの成長戦略策定と実現のために執行として取締役会に期待することについて伺いました。

過去のインタービュー記事についてはこちらをご覧ください

高収益に再建した事業をさらに成長させるべく、米国クアルコム社とのJVとして切り出すとともに同社とのアライアンスを実現、「Value Creation 2020」に着手といった一連の経営判断では取締役会での問いかけが執行側の視点を高めることにつながった

TDKの80周年にあたる2015年に「Vision2035」を策定し、100周年に向けたあるべき姿を定めた意図について教えていただけますか。

逢坂 :「Vision2035」には、今後、当社が持続的に成長するためのエッセンスが詰まっています。具体的にいえば、TDKの社是「創造によって文化、産業に貢献する」に込められた創業の精神を再確認することで、その精神を減衰させず「100周年を迎える2035年の時点で、もっと世の中に明確に認識されている企業でありたい」ということを謳っています。

社長の石黒ともよく話していることですが、現代はアルゴリズムの進化とともに社会インフラが急速に発展しつつある時代です。例えば、生物の進化の過程などを模倣して最適解を探索するモデルも「アルゴリズム」です。人が生活していく上で数学式では答えを出せない問題もたくさんありますが、このようなアルゴリズムが進化して、素材や部品に革新が生まれています。その積み重ねにより、100年以上も化石燃料で地球環境に負荷をかけながら車を走らせていたものが、すべて電池に変わろうとしていたり、人の安全・安心のために自動運転やドローンで救援物資を送ったりと、社会インフラそのものも変わろうとしています。そのような社会インフラの変革に対して当社は「部品屋」として貢献して行きたいと考えています。そのようなビジョンを実現して行くために、さらに「部品屋」としてレベルアップしなければならないことがあり、それらを中期経営方針「Value Creation 2020」に織り込みました。
 

その3ヵ年の中期経営方針「Value Creation 2020」に込められた狙いと、その策定に際して、取締役会がどのように執行をリードしてくれたのか、お聞かせいただけますか。

逢坂 :「Value Creation 2020」は「Vision2035」を実現するためのマイルストンとして、しっかりと肉付けをしたものです。その策定に当たっては、取締役会より「明確な輪郭」を求められていましたので、我々執行はそれを構成する3つの柱を設定しました。成長戦略の実行力を示す「コマーシャルバリュー」、資産効率の向上を示す「アセットバリュー」、そして自分たちの事業と社会の持続可能性との結びつきを一層強化していく決意を込めた「ソーシャルバリュー」の3つの視点です。その3つの柱で輪郭を形作り、それらにKPIを設定して進めました。その検討の一つの契機として重要だったと考えていることは、高収益体質に再建できたSAWフィルター事業の切り出しを取締役会に上程したところ、それが否定されたことでした。


その議案に対する執行と取締役会の考え方のギャップが「Value Creation 2020」を磨く契機となったということでしょうか。

逢坂 :その事業の切り出しについては執行として次のような想いがありました。当社が2008年に買収した欧州最大手の電子部品メーカーであるエプコス社は、携帯電話・スマートフォン向けのSAWフィルター事業を中核事業の一つとしていましたが、その事業を更に成長させるためにシリコンチップ事業との垂直統合の検討を開始しました。しかし、電子材料などのハードウェア技術を中核とするTDKが、高度なアルゴリズム(ソフトウェア)技術の発展により進化するシリコンチップ事業を買収して垂直統合化のイニシャティブを取るのは困難だと判断しました。しかし、執行として、この事業が文化、産業に貢献するにはシリコンチップ事業を持つ会社と何らかの形で統合させないと自己実現ができないと考えました。そこで、TDKがこの事業を傘下に収めるのではなく、逆に米国クアルコム社との事業統合を念頭に進める方向で検討をはじめました。

しかし、この案を協議するために取締役会に上程した際にストップがかかりました。SAWフィルター事業は、エプコス社買収後に当社とのシナジーにより、さらに高収益事業に発展させ、一層の成長が期待されていた事業であったことから、この事業統合の考えには大きな疑問が示されました。そのため取締役会においてその事業の価値創出モデルやさらなる成長の機会などを踏まえて十分な議論を重ねました。


今、振り返って、取締役会との議論は、クアルコム社との交渉にどのような影響を与えたと感じておられますか。

逢坂 :並行して米国クアルコム社との交渉を続けていたのですが、取締役会との議論を契機に執行としても検討を深めていたため、高い次元での交渉が進んでいったことを私は実感しました。結局、対象事業について、当社が取得した時の資産価値の数倍の事業価値を米国クアルコム社は認め、さらにその事業がTDKの他の事業とも協働できるようジョイントベンチャーを設立する方針でまとまりました。このように、より大きなビジョンで結実するのであれば、取締役会での議論で深まった目的が実現できると考えました。

それに対して取締役会からは「SAWフィルター事業の切り出しによるJV化、米国クアルコム社とのアライアンス、資本力の強化をベースにどのような全社成長戦略を描いているのか議論したい」と問いかけられたのです。

なるほど。SAWフィルター事業の切り出しストラクチャーの最適化、そして取締役会はそれを足掛かりにさらに上位の全社戦略を視野に長期ビジョンを引き出そうとしていたということですね。

逢坂 :執行としてもこの問いかけに応えなければいけないとの想いも強く、高収益のSAWフィルター事業を切り出しTDKとしてどんな全社成長戦略が描けるのか、その全社成長戦略の実行により当社の企業価値を高めるコマーシャルバリューをどう示すのかを、しっかりとKPIに落とし込み、新中期経営計画について取締役会と対話を重ねました。

続きはPDF『執行と監督が両輪となって成長戦略を結実させ、機能させる- 社外取締役の視点を持続的な成長に活かす -』をご覧ください。


※所属・役職はインタビュー当時のものを掲載しております

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