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「デジタル×経営」を学ぶアカデミア「D-nnovation LIVE Vol.1」イベントレポート

2019年12月7日、世界中の企業へコンサルティングサービスを提供するデロイト トーマツ コンサルティングが主催する“デジタル×経営”を学ぶアカデミア「D-nnovation LIVE Vol.1」が、SAP Experience Center Tokyo(東京・大手町)で開催された。この記事では、イベントの詳細について紹介する。

倍率5倍 話題のイベント

ビジネスリーダーを目指す若手ビジネスパーソンには、「デジタル」と「経営」のスキルセットが求められている。デロイト トーマツ コンサルティングが主催する「D-nnovation LIVE」は、この2つのスキルを集中的に学ぶための場を設け、日本の社会課題の一つであるデジタル人材不足の解消に寄与するためのイベント。第一回は、「SAPジャパン」とのコラボレーション企画となった。

SAPジャパンは、ERP(Enterprise Resource Planning)やCRM(Customer Relationship Management)などを提供し、企業のイノベーションを支援している企業。デジタルトランスフォーメーション(以下、dX)時代における重要なソリューションベンダーとして注目を集めている企業とのコラボレーションということで、応募人数は約200名と、当初の予想を遙かに超えた。イベント当日は、幸運にもこのプラチナチケットを手にすることができた約40名のプレイヤーが集合。会場は熱気に包まれていた。

 

企業の成長・イノベーションに必要な2つのデータ

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長 佐瀬 真人

最初に登壇したのは、デロイト トーマツ コンサルティング 代表執行役社長の佐瀬 真人。佐瀬は、企業のパフォーマンスを上げるためのデータとして「コスト、収益、売上などの業務データ「Operation Data」(以下、Oデータ)に加え、人々が抱いている感情を理解し、起きていることの原因を理解するために必要な非定型データ「eXperience Data」(以下、Xデータ)を扱うことが必要となっている」と説明。

「そして、イノベーションを起こすには、OデータによるマネジメントとXデータの収集の両輪が必要。だからこそ、Oデータ管理のグローバルスダンダートである『SAP』が武器になる」と語った。

佐瀬は、自動車業界を専門としたコンサルタントの経歴を持つ。Oデータによるマネジメントの重要性と、これまで経験知としてデータ化されてこなかったXデータの重要性は、この経験に裏打ちされたものだ。

「私にとっては、現場での経験が、オペレーションやストラテジーのコンサルティングサービスを提供するうえでの説得力になっているが、これからは、『現場』に加え、『テクノロジー』が重要になる」(佐瀬)

 

人(タレント)×技術(テクノロジー)がカギ

しかし、「技術(テクノロジー)『だけ』では、世の中は変わらない」と続けた。そのカギを握るのが「人(タレント)」だという。

佐瀬は、「世の中を変え得るのは、人(タレント)と技術(テクノロジー)との掛け合わせ。これからは、増え続けている『データ』を扱うことができるビジネスパーソンが求められるようになるだろう」と断言する。

実際、デロイト トーマツ コンサルティングでは、データサイエンティストやデザイナー、エンジニアといったさまざまなタレントを組み合わせることで、クライアントに新しい価値を提供してきた。佐瀬の言葉は、これまでの経験に裏付けられたものだ。佐瀬の力強いメッセージに共感したプレイヤーたちから、大きな拍手が沸いた。

 

Opening
佐瀬 真人
佐瀬 真人

人口が減っても生産性を上げれば競争力を高められる

デロイト トーマツ グループ CSO 松江 英夫
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員 内田 真治

「Learning」セッションでは、デロイト トーマツ グループ CSO(Chief Strategy Officer)の松江 英夫とデロイト トーマツ コンサルティング 執行役員の内田 真治が登壇し、最新のビジネストレンドやこれからのビジネスリーダーに求められるスキルについてのプレゼンテーションが行われた。

プレゼンテーションの冒頭、松江は「日本は他の国に比べて成長が弱い。これからは、さらに人口が減っていく。その中でどうやって日本が世界で生き残っていくのかというのは、重要な課題。この課題は、ビジネスの現場にも突きつけられている」と証言した。

日本は、2009年をピークに10年連続で人口が減少している。2050年には、日本の高齢化率は40%を超えるという予測もある(*1)。やがて人材の確保が難しくなり、企業の成長にも影を落とすだろう。しかも、そう遠い話ではない。「2025年にはIT人材不足が43万人まで拡大する」というレポート(*2)もある。「人材不足は喫緊の課題。人口減は成長の大きな足かせになりかねない」と、多くの企業が考えているのだ。

(*1) 出所:United Nations, “World population prospects: the 2012 revision”

(*2) 出所:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」


それについて、松江は「『人口が減っていく=成長しなくなっていく』というのは本当だろうか? 人口が減っても、生産性を上げていけば成長できる」と指摘する。

つまり「効率化」と「付加価値を高めること」で、「生産性が上がり、成長はできる」というわけだ。

そのためには、テクノロジーによって膨大なデータをマネージし、付加価値を生み出すdXが欠かせない。

「これまで『デジタル』や『テクノロジー』は、IT部門やR&D部門が担当するイメージが強かった。しかし現在、この2つは経営アジェンダとなっている。経営の変革をリードするには、テクノロジースキルとビジネススキルを併せ持つ『デジタル人材』が不可欠だ」(松江)

いまやdXは、企業の存亡をかけた大きな変革だ。そのため、どの企業にとっても、デジタル人材の育成・確保は喫緊の課題となっている。

 

キャリアチェンジはスピード感を持ったテクノロジーの変化に乗ること

内田は、「デジタル/テクノロジー」スキルと「ビジネス」スキルを併せ持った“Purple People”と呼ばれる人材の一人。dXを推進し、企業の変革をリードできる数少ない人物だ。

デジタル人材として注目を集める内田だが、元々は化学系プラントのエンジニアだった。その後、IT企業の代表やコンサルタントなどのキャリアチェンジを行い、デジタル人材となった。

「キャリアチェンジは狙ったものではなく、スピード感を持ったテクノロジーの変化に乗ることで形成されたもの」と、内田は振り返る。

今、内田が注目しているのは、人類がまだ経験したことがない世界「技術的特異点」(シンギュラリティ)後の世界だという。

「テクノロジーが進むと、コネクテッド・ビークルのようにネットワークへ常時接続に対応した車が登場したり、M2Mのようにモノ同士がほとんどリアルタイムに繋がったりする世界が訪れるだろう。世の中の変化のスピードが加速していることこそ、グローバルなデジタル人材が必要とされている根拠だ」。

現在、AIへの投資が増えているが、やがてテクノロジーはこのAIと結合され、集約されていく。

このAIを活用するべく、企業は莫大なデータを蓄積している。しかしそのデータは無秩序であることも多く、そのままAIに読み込ませても、精度の高い答えは返ってこない。標準化されたデータがあってこそ、はじめてAIがAIとしての役割を発揮できる。そのことに、多くの企業が気づき始めているのだ。

「5年前にIoTやUIへの投資が流行ったが、その投資がERPに戻っている理由もここにある」と内田は指摘する。内田のプレゼンテーションはOデータやその管理を司るERPの重要性を再認識するものとなった。
 

Learning



ゲームを通して経営の全体最適化シミュレーションを体験

現在、価値が再認識されている「ERP」。その実力と可能性を実際に体験してもらうべく、Workshopセッションが開始された。このセッションでは、SAP ERPを使った経営シミュレーションゲームを使い、企業間競争などを体験する。

経営シミュレーションゲームをプレイするために、プレイヤーは4人1組のチームに分かれ、それぞれマーケティング担当、営業担当、購買担当、CEO(Chief Executive Officer)などの役割分担を実施。各チームには、経営アドバイスのためのデロイト トーマツ コンサルティングのコンサルタントが配置された。

ゲームのルールは、非常にシンプル。マーケティング担当によるマーケティング費用の設定や営業担当による製品の価格設定、購買担当によるMRP(生産管理)や購買の実行やCEOによる販売計画などを通して、最も利益を出したチームが優勝となる。

ゲームの状況はリアルタイムに掲示され、トップはものの数分で入れ替わる。正しい情報を入手し、戦略を立ててスピーディーに実施していけば、そのチームの売り上げは上がっていく。一方、戦略を立ててみたものの、市場の動きを読み切れないチームも少なくない。競合チームの戦略によって在庫を抱えてしまい、全く売れなくなってしまったチームもある。

プレイヤーは、実際に自分たちがビジネス現場で戦っているかのような臨場感を味わいながらゲームに臨んだ。その結果、回を重ねるごとにチームワークが良くなり、それに比例する形で売り上げが伸びていく。正しい情報を掴み、正しく判断できるようになれば、面白いようにビジネスが拡大していくということを、まさに身をもって実感したのだ。

この経営シミュレーションゲーム、実はMBAの授業などで頻繁に使われている。企業競争における情報の価値や、関連部門が協力してスピーディーに対応に当たることの重要性、施策が経営に与える影響などを理解するのに有効な手段として、よく知られている手法なのだ。

実際、プレイヤーたちからは「情報の重要性をゲームを通じて体験できた。将来、必要なスキルだと実感でき、非常に有意義だった」「最初は手探りでゲームをしていたが、最終的には、競合や市場の動きなどをきちんと把握できた」といったコメントがあった。

 

松江 英夫
松江 英夫
内田 真治
内田 真治

現実は、経営資源の一元化すら難しい

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員 石綿 眞亊

次のWrap up Sessionでは、ゲームの上位チームが表彰された。

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員の石綿 眞亊は、「Learningセッションでは次世代のビジネスリーダーに求められる素養について、Workshopでは経営の全体最適シミュレーションを通じ、さまざまな洞察を得ていただけたはず」と話した。

経営シミュレーションゲームを通じ、各チームとコミュニケーションをとりながら経営の全体最適化を模索したプレイヤーたちは、「これこそ将来に必要なスキル」と理解し、これから獲得していこうと決心しただろう。

石綿は、「未来が見えない社会で生き抜くには、ゼロからバリューを生み出すこと、つまりこれまでにないアイデアを生み出すことが非常に重要」と言う。

こういったプラスアルファのビジネス視点やテクノロジー視点のスキルを身につけていくことが、今後の社会を牽引するデジタル人材―“Purple People”に必要な要素となるだろう。

「これまでは、国内外で個別最適化を図ればよかった。しかしこれからは、グローバリゼーションが進化し、グローバル全体での情報を連携・分析し、経営の最適化を目指す社会になっていくだろう。日本企業に変革をもたらすデジタル人材は、このグローバリゼーションに対応し、“Global Purple People”になければならない」(石綿)

石綿 眞亊
石綿 眞亊

SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田 譲氏

最後に登壇したのは、SAPジャパン 代表取締役社長の福田 譲氏。

「会社(=法人)は、人間のようにシンプルに意思決定できない。組織や業務プロセス、チームワークなど様々な要素があり、このいずれかが滞っただけで行き詰まる。このような課題を抱える法人を、テクノロジーとコンサルティングを通して解決に導くのが、我々SAPジャパンやデロイト トーマツ グループである」(福田氏)。

プレイヤーたちは、「D-nnovation LIVE Vol.1」のイベントを通じて、企業の課題を解決するために重要な「デジタル」と「経営」のスキルセットを集中的に学んだ。すでに、これからの世界が必要としているグローバルなデジタル人材 “Global Purple People”になる一歩を踏み出しているのだ。

テクノロジーの進歩がめざましい昨今、あらゆる企業は「未来の企業はどうなるのだろう?」「未来のビジネスはどうなるのだろう?」「未来の日本はどうなるのだろう?」というビジョンを描くスキルを持つ人材を求めることになる。

福田氏は、最後に「私たちが描く未来は、建物も車もあらゆる業界が再定義されている。『SAP Experience Center Tokyo』は、そんな未来を自由に描く『デザインシンキング』を実践する専用の場として作った。今後も、デロイト トーマツ グループ×SAPのような協働を通じ、もっと日本を元気にしていきたい」とコメントし、イベントを締めくくった。

イベント後のネットワーキングに移っても、プレイヤー、デロイト トーマツ グループのコンサルタントそしてSAPのメンバーによるエキサイティングな議論が止むことはなかった。

日本そして世界の未来をリードしていく次世代のビジネスリーダーたちにとって、かけがえのない経験と学びの一日となったことは、必ずや近い将来証明されるだろう。それは何より彼らの笑顔が物語っていた。

 

Wrap up

※登壇者の所属・役職は2019年12月時点の情報を記載

福田 譲氏
福田 譲氏

SAPジャパンよりメッセージ

SAPジャパン株式会社 佐々木 形子氏

SAP Experience Center Tokyoが、未来ある若者たちの希望と熱気に満ち溢れる忘れ難いイベントとなりました。デロイト トーマツ グループのコンサルタントとSAPソリューションの融合により生み出される価値は世界中の企業の経営を支えています。D-nnovation LIVE Vol.1というイベントも同様に、両社から生み出される価値の根源に触れ、近い将来有能なプレイヤーとなる若きタレントのみなさまの今後の成長のきっかけとなり、日本そして世界中を支え未来を創造する大きな力へと飛躍することでしょう。

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