Deloitte Insights

Tech Trends 2020 日本版

    日本版全文(PDF)

    初版から11年目の発行となる年次レポート「Tech Trends 2020」では、今後1年半から2年間にわたって企業や組織に影響を及ぼす新たなテクノロジートレンドについて、デロイトの見解を紹介している。今回取り上げるトレンドのいくつかは、終わりのないIT 課題への対処に言及するものである。また、今後大きなビジネスチャンスに飛躍し得るテクノロジー固有の特徴についても解説している。いずれのテーマも多大な変化をもたらす兆候が見られる。

    Tech Trends 2020〔PDF, 19.7MB〕

    日本版発行に寄せて

    今回で「Tech Trends」は、グローバル版では11回目、日本版も6回目の発行となる。11年の間に技術は飛躍的な進歩を遂げ、特にDigital分野においてビジネスに取り入れる試行錯誤が繰り返されている。多くの企業がDigitalを自社の成長に不可欠なものとして捉え、相応の投資を続けているといって差し支えないだろう。日本企業でもデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速され、さまざまな形でDigital 技術による変革が試されている状況にある。

    今回の「Tech Trends 2020」を読むと感じられるのは、グローバルトレンドそのものは次の段階に進んでいるということである。ここ2年のトレンドでは、技術そのものの可能性については論点にならず、その技術の活用方法や技術同士をどう組み合わせるかというビジネスへの活用が論点になっていた。それに比べて「Tech Trends2020」では次の段階として、人とDigital技術の共存にかかわる論点が増えている。エシックスという倫理観にかかわるトピックやHuman Experienceのトピックなどはその代表である。かねてからグローバルの動きとしてAIをはじめとする技術は人の仕事を奪うものではなく、人を助け新たな付加価値を加えるものとして考えられてきた。人の仕事を奪ってしまうという考え方は近視眼的であり、技術の進歩によってこれまでになかった人による仕事を新たに生み出すものとしてDigital技術は扱われているのである。その技術が人とより融合するために、人中心の考え方の中でどう共存していくのか、そのために必要な倫理観や信頼がどういったものかという部分に焦点が当たっている。多くの日本企業におけるDXに対する取り組み状況に鑑みると、かなり隔たりがある感が拭えない。未だ技術論や活用の試行段階を抜け出すことができていないケースが多く、人との融合に論が進んでいない印象が強い。数年来の「Tech Trends」の変遷を見てもDigital技術進歩のスピードは驚異的なものがあり、廃れていったものも枚挙に暇がない。そのようなトレンドの移り変わりを認識した上で、多くの日本企業は「Tech Trends 2020」の内容に共感できるレベルにまでDXの取り組みスピードを速め、ビジネスへのDigital 技術活用をグローバル企業と同様なレベルにまで引き上げないとグローバル競争に生き残るのは難しくなる。 こう言ってしまうと遅れを取り戻すことは無理ではないかと途方にくれてしまうかもしれない。しかし、一見進んでいるように見えるグローバル企業の取り組みも成功ばかりではない。昨今のCOVID-19感染の影響によるテレワークの高まりに対応出来ている海外企業ばかりではなく、日本企業よりも遅れている企業も少なくない。つまり、まだ盤石な基盤としてDigital技術の活用があらゆる分野で実現できているわけではないのである。第6章にあるアーキテクチャーの見直しを早急に進めることで、日本企業がDXを加速させてビジネスを高度化することも十分可能である。積極的にグローバルのテクノロジートレンドを取り入れることが、これまでの遅れを取り戻す近道になることは間違い無い。

    しかし、多くの日本企業にとってDXのスピードを速めることは困難な作業である。なぜなら相応の投資判断が早期に求められるにもかかわらず、なかなか意思決定ができない領域だからである。これは、旧来の投資判断の尺度が通用しないことがその原因である。投資のポートフォリオを決定する際に、将来の収益を見積もって判断することになるが、DXはその特性から将来生み出す収益(リターン)を予算段階で正確に見積もることが難しい。したがってその領域に精通し、一定の不確実性の中で未来を予測して意思決定を行える意思決定者が必要になる。これはIT 部門のみならずファイナンス部門の意識改革が必要であることを意味しており、この点は日本企業にとって思った以上に壁となる可能性がある。このような状況を打開するため、第3章の「ファイナンスと未来のIT」を熟読することをお勧めする。すでに同様の悩みは海外企業で多く繰り返されてきており、それを克服してDXを加速してきた歴史がある。意識改革の必要性についてIT部門のみならず、経営者やファイナンス部門が認識するための参考になろう。

    「Tech Trends 2020」は、次の時代のテクノロジーに思いをはせてワクワクするレポートというよりは、今後さらに広がっていくであろうDigitalワールドにどう向き合っていくべきなのか、企業としてあるいは人としてどういうアプローチを採っていくべきなのかを考えさせられるレポートであった。もちろん正解は企業によって違うだろうし、より不確実性が高まっている昨今の経済情勢では、思いもよらない技術の活用方法も出てくるだろう。大切なのは常にグローバルの動きを見極め、自分(自社)と照らし合わせながら次の一手を考え、行動することである。「Tech Trends 2020」がその一助となることを願っている。

    安井 望
    デロイト トーマツ グループ 執行役員 パートナー
    Digital Technology担当 Chief Technology Officer (CTO)

    >> グローバル版(Deloitte Insights:英語)はこちら <<

    Tech Trends 2020

    日本版発行責任者

    安井 望 執行役員 パートナー
    Digital Technology担当
    Chief Technology Officer(CTO)

    製造業を中心に、グローバル経営管理やグローバルサプライチェーンを、業務とシステム両面から最適化するプロジェクトに多数従事。業務機能を跨いだ企業全体のマネジメントを最適化していくことを得意としており、戦略立案から改革の実行までをトータルに支援できる経験を有している。主な著書に「グローバル経営の意思決定スピード」「導入ガイドグローバルシェアードサービス」「BOP導入ガイドブック」(中央経済社)がある。

    山本 有志 執行役員 パートナー
    Japan Leader
    Tech Strategy and Transformation

    多様な業界に対して、IT戦略立案、IT組織改革、グローバルITガバナンス強化、IT投資コストマネジメント高度化などのテクノロジー ストラテジーに関するコンサルティングに従事。企業の戦略実現を左右する大規模ITプロジェクトのマネジメント経験も多く、戦略から開発・運用までITライフサイクル全般の知見を活かし、CxOに対してアドバイザリーサービスを提供。

    千田 章貴 執行役員 パートナー
    Asia Pacific Leader
    Tech Strategy and Transformation

    主に国内及び外資系金融機関に対して、各種改革やデジタルトランスフォーメーションプロジェクトに多数従事。ビジネス戦略立案からシステム化構想及び導入、定着、アウトソーシングを含む広範囲なコンサルティング領域を経験。アジアマーケットを中心とした海外戦略やグローバルオペレーションシステムの最適化等を含むグローバルプロジェクトに強みを持つ。

    お役に立ちましたか?