Posted: 08 Nov. 2021 5 min. read

AutoML:AIのポテンシャルを最大化し信頼性も高める「自動機械学習」とは

シリーズ:デジタルトラストについて考える

注目を集めるAutoML

昨今、機械学習ベースのAIは様々な産業でその有用性が確認され、活用されています。個々のアプリケーションやアナリティクスが普及し、その結果、機械学習のためのモデル開発をいかに効率的、効果的に行うかという課題が認識されてきています。その解決策の一つとして、自動機械学習(AutoML)に注目が集まっています。

 

自動機械学習(AutoML)とは、機械学習モデルの設計や開発を自動化することを指します。機械学習のプロセスには、「問題・仮説の定義」「データ収集」「データ処理」「探索的データ解析」「特徴量の設計」「機械学習モデルの構築」「可視化・コミュニケーション」「デプロイ」「モデルの運用・保守」というステップが存在します。

 

これらのステップのうち、「問題・仮説の定義」と一部の「データ収集」は人間が行う必要がありますが、「データ処理」から「モデル構築」に至る一連のステップは自動化が可能です。AutoMLはこの自動化を実現します。さらにはAutoMLのソフトウェア・サービスによっては「データ収集」の一部や、「可視化・コミュニケーション」や、「デプロイ」、「運用・保守」のステップの実施も支援します。

 

機械学習モデルの開発は従前リソース集約型でした。ビジネスに関する広範な知識と多数のモデルを生成して比較するための大量の時間を必要としていました。ですが、AutoMLは、特にこの人手でやると煩雑な作業にならざるをえない、「特徴量の設計」や「モデル構築」のステップの機械学習モデル生成、比較作業において、アルゴリズムの選択、モデルのハイパーパラメータのチューニング、反復的なモデリング、モデルの評価を実行してくれるところが非常に有用です。

 

AutoMLは利用のハードルが低く、分類、認識、回帰、時系列予測等、従来の機械学習モデルの構築にかかる時間を短縮できます。アルゴリズムの選択や最適化においても、ランダム検索、グリッド検索、遺伝学的アルゴリズム、ベイジアン等様々な手法が使われており、効率的に行うことが可能です。ゆえに、AIアプリケーションの精度向上を追求し、増産を推し進めることとなり、AIがもつポテンシャルを最大限ビジネスに活かすことができるようになります。データ活用における非常に強力な武器といえるでしょう。

データサイエンティスト人材が乏しい組織にAutoMLは有効

上述のように、機械学習のステップにある、「特徴量設計」や「モデル構築」は複雑かつ専門知識が必要であり、それがゆえに、データサイエンティストが不足している組織では機械学習の活用を半ばあきらめることも多いかもしれません。しかし、AutoMLによってこれらを自動化することで、人材が不足しているところでも機械学習の恩恵を受けることができるようになります。これはAutoMLが組織にもたらす価値の一つです。

 

とはいえ、データサイエンティストが一人としておらず、組織にそのような素養を持っている人が誰にもいないようなケースにおいても、AutoMLの自動化によってすべてが解決できるかというとそういうわけではありません。組織としては、AutoMLは、データサイエンティスト人材の育成やリスキルと組み合わせて使うべきでしょう。

AutoMLと信頼性向上

AutoMLのソフトウェアは最近その種類が増えてきていますが、多くのAutoMLにおいては、以前、本連載でも言及したXAI(説明可能なAI)の実現を支援する機能があります。機械学習モデルの学習に用いているデータに偏りがないかを可視化し、またどのデータが学習に寄与しているかを分析することもできます。これにより、機械学習モデル、すなわち、AIが「なぜそう判断したか」という根拠や過程の説明を支援します。

 

AutoMLは、機械学習モデルの増産を推し進めるだけでなく、AIを用いた安全性と信頼性の高い社会の実現をも促進します。今後のAI活用の要になることは間違いありません。AIの適用可能性がありそうなプロジェクトにおいては、AutoMLの導入・活用を検討してはいかがでしょうか。

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