Posted: 26 May 2020 2 min. read

経済へ与える影響を3つの時間軸で紐解く

【シリーズ】COVID-19とレジリエンス経営

本稿は「COVID‐19とレジリエンス経営」と題し様々な経営課題を毎回20分で解説する連続Webinarからの抜粋記事です。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応では、足元の危機管理・業務継続が最優先課題だが、同時にその後の経営の進め方について先んじて考える必要がある。

そこで、経済、金融の動向を「短期(危機対応)」「中期(経済活動再開)」「長期(構造変化)」3つの時間軸に分けて、経済のシナリオ例を紹介する。かかる時間軸とシナリオに基づき、企業は危機対応、事業計画、リスク管理のアクションを起こすことが肝要だ。

・短期(危機対応)

まず、短期的には現状の危機モードが今年いっぱいは続くだろう。一部の国で経済活動が徐々に再開し、ロックダウン解除も始まったことから、2020年後半にグローバル経済は持ち直すと見ているが、通年の経済成長率は大幅なマイナスになる見込みだ。ただし、各国の中央銀行や金融当局の政策の効果で、金融システムが危機に陥るリスクは当面は低いと言える。

・中期(経済活動再開)

次に、中期的には今年後半から来年にかけ経済活動再開の時期となる。しかし経済のV字回復は難しいだろう。各国の経済活動の再開は段階的で、業態によって活動再開にもばらつきがあり、中小ビジネスの早期回復も困難であるからだ。ワクチンなど最終的な治療方法がみつかるまでは、センチメントは当面低迷することが見込まれる。さらに、感染再拡大リスクや長期化の懸念もV字回復を阻む要因だ。米国では金融機関の経営悪化による金融システム不安、欧州ではソブリン危機、また新興国では通貨下落や資本流失のリスクもありうる。

・長期(構造変化)

長期的にはグローバルな経済構造が変化する可能性がある。チャイナリスクが再燃し、生産拠点を中国に集中させるリスクが一層意識され、一部で始まっているASEAN諸国への移転や自国回帰の動きが加速する可能性がある。また、今回の危機で、運輸、宿泊、娯楽などパンデミックに対して脆弱なセクターが浮き彫りになっただけではなく、今後は環境やエネルギーといった人間の生活に直接かかわるセクターへの投資家の目線が更に高まることも考えられる。今回のコロナ危機によって主要国の政権交代や経済政策転換の可能性もあり、特に今年の米国大統領選挙には注目したい。

企業はコロナ禍という危機への対応とポストコロナをにらんだ戦略の再構築を同時に進めることが求められている。現在は、業務体制維持や資金繰り、株主総会対応、年次事業計画の見直しなど短期的な対応が中心だが、今後は前述の中期的な経済見通しや長期的な構造改革の可能性を反映した、新たな中長期シナリオの作成やストレス(リスク)シナリオの策定が求められる。これらにより新たな経済構造の中でも持続可能なビジネスモデルの構築、業務プロセス改革、ビジネス戦略策定が可能となる。

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勝藤 史郎/Shiro Katsufuji

勝藤 史郎/Shiro Katsufuji

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 マネージングディレクター

リスク管理戦略センターのマネージングディレクターとして、ストレス関連情報提供、マクロ経済シナリオ、国際金融規制、リスクアペタイトフレームワーク関連アドバイザリーなどを広く提供する。 2011年から約6年半、大手銀行持株会社のリスク統括部署で総合リスク管理、RAF構築、国際金融規制戦略を担当、バーゼルIII規制見直しに関する当局協議や社内管理体制構築やシステム開発を推進。2004年から約6年間は、同銀行ニューヨーク駐在チーフエコノミストとして、米国経済調査予測、レポート執筆、講演等に従事。以前は国債・CPチーフトレーダー、ロンドン支店ディーリング企画業務等、マーケット業務に10年以上携わった。