Posted: 28 Apr. 2022 4 min. read

第一回 クラウドの普及と間違った認識

クラウド連載(全5回)

■パブリッククラウドの普及

多くの企業がDX推進に注力し、ITの基盤には、クラウドを利用しています。クラウドは、企業規模や業種業態によらず、活用が進んでいます

様々なメリットがあるクラウドですが、一般的に言われているメリットには、以下のようなものがあります。

 

  • 先行支出を変動支出に切り替える
  • 圧倒的なスケールメリットを享受できる
  • キャパシティーの予測が不要になる
  • スピードと俊敏性が向上する
  • データセンターの維持管理にかかる費用が不要になる
  • 数分で世界中にデプロイできる

 

近年企業でどれくらいクラウドが普及しているかは、総務省が毎年調査結果を公表している「通信利用動向調査の結果」で確認することが出来ます。 

クラウドを利用している企業の割合(2016年〜2020年)
出典:総務省「令和3年通信利用動向調査」

オレンジの枠は、クラウドを利用している企業の割合です。比較のために、10年前のクラウド利用状況を以下に示します。

クラウドを利用している企業の割合(2010年〜2012年)
出典:総務省「平成24年通信利用動向調査」

このクラウド普及の背景には、クラウドサービスプロバイダが利用者の要望を取り入れて、革新的なサービスをリリースし、改善し続けていることが非常に大きいと思われます。例えば、2011年、クラウドサービスプロバイダのアマゾン ウェブ サービス(AWS)は、東京リージョンを開設し、EC2、RDS、S3など10個のサービスを提供していました。当時は、どのサービスも画期的なサービスでしたが、現時点では、当時の22倍以上の227個のサービスが利用可能になっています。(2022年4月25日時点)

■クラウドとデータベースの関係

クラウドの普及は、データベースの市場にも大きな影響を与えてます。これまで、データベースの市場はオンプレミス向けの製品が市場の大半を占めていましたが、2021年の調査によって、クラウド上でマネージドサービスとして提供されるデータベース、いわゆるDatabase as a Service(DBaaS)がデータベース市場の49%を占めることとなり、市場規模においてクラウドとオンプレミスはほぼ横並びとなりました。また、DBaaSの成長速度を考えると、2022年以降、クラウドのシェアが、オンプレミスを超えることは明らかです。

クラウドとオンプレミスのデータベース市場における規模の比較
出典:DBMS Market Transformation 2021: The Big Picture

ここに記載しているマネージドサービスとは、クラウドの特徴的なサービスの1つで、サーバーの運用管理や各種保守作業などをサービス提供者側の専門家が担当するものです。これによって、サービス利用者は、より付加価値の高い作業に集中することが可能になります。

 

また、データベースベンダの状況も、2019年までトップのシェアだったOracle社が、2020年には、Microsoft社に抜かれ、2021年には、AWS社に抜かれている状況です。AWSの成長率はMicrosoftを上回っており、2022年にはAWSがMicrosoftを抜いてDBMS市場において1位になる可能性が高いと思われます。

データベースベンダの市場シェアの推移(2017年〜2021年)
出典:DBMS Market Transformation 2021: The Big Picture

 

■10年前のクラウドに対する誤解

クラウドの普及の裏には、利用者がクラウドに関する知識を習得し、クラウドのメリットもデメリットも正しく理解して、活用している背景があります。パブリッククラウドが登場したての約10年前は、利用者の知識も乏しく、事実と異なる様々なうわさにより、クラウド利用が敬遠されている状況がありました。よく、「クラウドの都市伝説」などと言われて、クラウドサービスプロバイダのエバンジェリストは、誤解を正すために、セミナーなどで、正しい知識を普及させるための説明をしている状況を見てきました。

様々な都市伝説がささやかれていましたが、よく聞かれるものに以下のようなものがありました。

 

  • クラウドよりも既存のデータセンターやプライベートクラウドの方が安全だ
  • 高信頼性が必要なシステムにクラウドは不向きだ
  • クラウドに基幹の業務システムは載せられない
  • クラウドはセキュリティが保証されないから、個人データなど重要なデータを保存できない
  • クラウドのシステムは、運用管理がブラックボックスなので、安心して利用できない

 

これら都市伝説は、約10年前のWebサイトの記事や、セミナーの資料から抜粋したものです。今や様々な企業がこれらの都市伝説を否定する事例の公開やクラウドサービスプロバイダによる丁寧な説明により、この都市伝説を信じている人は少ないと思います。しかしながら、企業のIT担当者の中には、不勉強であったり、現状からの変化を望まないような保守的な人たちによって、10年前にささやかれていた都市伝説と同じ理由を述べてクラウド利用を敬遠する人たちがいることも事実で、非常に悲しい現実かと思います。

■パブリッククラウドに関する新たなる誤解

10年前のクラウドに対する誤解をいまだに信じている人は少なくなってきていると思いますが、クラウドが普及している昨今、新たなクラウドに対する間違った認識が出てきています。

 

パブリッククラウドに関するコンサルティング案件を担当する機会が多いのですが、その中で、クライアントのIT担当者が陥りやすいクラウドに関する誤った認識を4つご紹介します。

 

1.Lift and Shiftによるクラウド移行

クラウド移行の方式としてLift and Shiftという手法があります。 Lift and Shiftとは、 オンプレミスのデータセンターにある既存システムをそのままクラウドに移行(Lift)し、その後、クラウドに最適なアーキテクチャに最適化(Shift)する方式ですが、全ての企業で採用すべき正しい移行方式でしょうか?

 

2.パブリッククラウドは高い

クラウド移行を検討する際には、クラウドに移行したらどれくらいコスト削減が出来るかを試算します。その際に、「クラウドに移行してもそれほどコストを削減できない。」「クラウドを利用するとオンプレミスよりも高くなる」という声を聞くことがありますが、正しくコスト試算が出来ているでしょうか?

 

3.機能やコスト比較によるクラウドの選定

これからクラウドを利用しようとする企業はまず最初に、どのクラウドサービスプロバイダを利用すべきか選定するために、比較をするケースをよく見かけます。その際、設定した評価軸は本当に正しいでしょうか?

 

4.クラウドのセキュリティは不安

これは、クラウドの聡明期から言われ続けていることですが、セキュリティの不安により、クラウド活用が進まないケースはよく見られます。セキュリティに対する意識が高いことは良いことですが、本当に正しく理解し、判断が出来ているでしょうか?

 

次回以降、ここに挙げた4つの間違った認識に関して詳しく解説していきます。

プロフェッショナル

吉田 悦万/Yoshikazu Yoshida

吉田 悦万/Yoshikazu Yoshida

デロイト トーマツ リスクサービス マネージングディレクター

システム開発の上流工程から開発まで、様々な案件を担当。また、プロジェクトマネージメント・ITコンサルティング、新規事業の立ち上げ等幅広い経験を有する。近年は、パブリッククラウドを活用した、ソリューションの企画・新規事業の立ち上げ、他社とのアライアンス・組織運営に従事。パブリッククラウドでは、主にAWSを専門とし、特にBigDataを活用するためのデータウェアハウス/データレイクの導入・活用を得意領域とする。