「誰一人取り残さない」社会を目指して―Impact Together プロフェッショナル紹介
デロイト/デロイト トーマツでは、共通のPurpose(存在意義)として「Deloitte makes an impact that matters」を掲げています。これは、クライアント、社会、そしてメンバー一人ひとりにとって、最も価値あることをもたらすために日々挑戦を続ける、という決意を表しています。この共通の価値観をベースに、私たちは個人の多様性を尊重し、個性を発揮できる環境を育んでいます。
日々の業務を進める中で、メンバーは個人のPurposeをどのように業務で実現し、プロフェッショナルとして活躍しているのか、インタビューを通じて深掘りする本シリーズ。今回は、シニアコンサルタントの長澤祐佳です。幼いころから環境や人権問題に関心を抱いていた長澤は、大学でSDGsなどを研究し、デロイト トーマツに入社。希望どおりサステナビリティ関連の業務などを通じ、自らのパーパスの実現に取り組んでいます。さらに視座を高めたいと大学院に進学した長澤が目指す姿と、個人の目標と業務を両立できるデロイト トーマツの環境について詳しく聞きました。
PROFESSIONAL
- 長澤 祐佳 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアコンサルタント
目次
小学生の頃から感じていた問題意識に取り組むためデロイト トーマツに入社
――長澤さんは入社以降、一貫してSDGsや人権、環境といった社会課題に関する業務に携わっています。いつごろから興味をお持ちだったのでしょうか。
最初に興味を持ったのは小学生のときでした。国際機関の方が学校に来てくださったのですが、そこで世界では紛争や貧困の中で暮らしている人がいることを知り、地元の狭い世界で暮らしていた私には、自分が享受しているものは当たり前ではないことを知り、とても衝撃的でした。
国際関係論を専攻していた大学在学中にSDGsが制定され、SDGsの根幹は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことで、まさに私が取り組みたいテーマだと思い、大学ではSDGsを研究することにしました。
――卒業後のキャリアとして、デロイト トーマツを選んだ理由を教えてもらえますか。
当初は政府や国際機関などへの就職も視野に入れ、インターンシップもしていました。しかし業務に携わるうちに、社会を変えるには、政策や制度に加えて、民間の取り組み推進も必要だと感じるようになりました。これは、SDGsがマルチステークホルダーのパートナーシップによる達成を目指していることとも重なります。
一方で民間企業に目を移しても、当時は現在のようにSDGsに対する意識はそれほど高まっていませんでした。そこで、コンサルティング会社で民間企業の取り組み促進を支援することで、社会全体を変えるような大きなインパクトを与えられるのではないか、と考えたのです。
中でもデロイト トーマツ コンサルティングは当時、「100年先に続くバリューを日本から」という、まさに持続可能性にコミットするようなキャッチコピーを全面に打ち出していました。グローバル全体としても当時から明確にSDGsにコミットしていたため、ここなら自分がやりたいことを実現できると考え、入社を決めました。
Just Transition(公正な移行)をより深く学ぶために大学院への進学を決意
――実際に入社してみていかがでしたか。
入社後は、希望どおりコンサルティングのCSR部門、その後、サステナビリティユニットなどに所属し、人権や気候変動問題に関する業務を担当しました。サステナビリティは企業全体、トップのコミットメントが重要なテーマですので、次第に戦略に関する事案についても取り組むようになっていきました。
コンサルティング会社にいると、多くの関係者と関わり、さまざまな視点から課題を見ることができます。プロジェクトを通じてNPOやNGO、民間企業、さらに官公庁など、さまざまな組織やセクターとやり取りしたことで、幅広い視点から社会課題を見られるようになりました。
――2023年春には大学院に進学されましたね。進学を考えたきっかけを教えてください。
あるとき業務を通じて「Just Transition(公正な移行)」という考え方を知りました。この言葉にはさまざまな解釈がありますが、その中心となる考え方は「誰一人取り残さない」カーボンニュートラルであり、まさに私が取り組みたいテーマです。またこの考え方は私たちのパーパスとも一致しているので、デロイトトーマツとして率先して取り組むべきだと考え、セミナーを企画・実施しました。2022年12月のことです。(関連記事:GXに不可欠、COP27で注目の「公正な移行」は、新たな機会創出に繋がる)
このセミナーを通じて、大学教授やNPOなどの識者と知り合うことができました。実は現在の私の指導教授も、セミナーの登壇者の一人です。専門家の方々とお話ししてJust Transitionに関する知識を深める中で、この考え方を日本に広めるには、ビジネス以前に政策領域からアプローチすることが重要だと考えるようになりました。実際、欧米ではそのような流れで浸透しています。そこで公共政策を体系立てて学ぶために、大学院に進むことにしました。
――Just Transitionとは、どのような考え方なのでしょうか。
気候変動には、先進国が長年にわたって排出してきたCO2によって、違う地域の途上国の人たちが大きな影響を受けるといった「空間的な不平等」があります。また上の世代が排出してきたCO2のツケを、今の若い世代や将来の世代が払わなければならないという「時間的な不平等」もあります。
私は気候変動を、単に地球環境だけの問題ではなく、人権問題と捉えています。なぜなら、上記のような不平等に加え、気候変動の緩和策を進めることによっても「取り残される人々」が出てくる恐れがあるからです。例えば、カーボンニュートラル社会への移行過程では、途上国の人々が安価なエネルギー源が利用できなくなったり、従来の化石燃料産業に従事する労働者の雇用が失われたりする可能性があります。
こういった不平等も考慮し社会全体のサステナビリティの向上に寄与する「望ましいカーボンニュートラル移行」を実現しようとするのがJust Transitionです。
ですから、誰一人取り残さずカーボンニュートラル社会への移行を目指すJust Transitionは非常に重要だと考えています。
――大学院では、学生時代に興味を持っていた政策について、改めて学びたいと思ったわけですね。
はい。現在、大学院では主に海外の政策立案や事例の分析など、ビジネスの現場では知見を得にくい領域を学んでいます。一方でデロイトトーマツでは、環境や人権問題に対する業務に従事しています。
私はアカデミアと実務のどちらも取り組むことが重要だと感じています。というのもJust Transition自体が、まさにさまざまな人たちや組織を巻き込んでいくテーマだからです。
デロイトトーマツならではの制度を利用することで業務と勉強を両立
――大学院での勉強と業務をどのように両立されているのでしょうか。
実は入学当初はめちゃめちゃハードで、正直、休職や退職も考えたほどでした。私がラッキーだったのは、入学の数カ月後にデロイト トーマツでフレキシブル・ワーキング・プログラム(FWP)いう制度がはじまったことです。
FWPはまさに言葉どおりフレキシブルに働ける制度で、従来のワーキング・プログラムで対象となっていた育児や介護だけではなく、学校や資格の勉強、趣味、スポーツなど、自分の中で実現したいことや、やるべきことがある方が、業務と両立できるよう拡大された制度です。私は、大学院の授業を週2日にまとめ、残りの3日は仕事をするという働き方を選択しました。
――業務量や内容はどのように調整していますか。
他のメンバーやクライアントに迷惑をかけないよう、事前に上長と入念にコミュニケーションした上で利用しています。私の場合は、デロイト トーマツ グループのカーボンニュートラル達成を目指す機構変動対応イニシアチブ、WorldClimateでの業務を主に対応するようになりました。
一方で、雇用形態や福利厚生などは以前と変わりません。一般的に、このような多様な事由を対象にした制度自体がない、もしくは、制度が適用可能な期間も短い、という企業が多いようですが、デロイト トーマツのFWPは数年間という長期でも利用できるのも大きな特徴です。
私がFWPを利用したことで、同じように制度の利用を考えている社内の方からの相談を受けることも多くなりました。まさしく、私が実現したい「誰一人取り残さない」の実現でもあると同時に、DEI(多様性、公平性、包摂性)にも重なる取り組みだと感じています。
デロイト トーマツから日本、東南アジア、そして世界へ
――最後に改めて、今後の展望についてお聞かせください。
私が大学院で学びたいと思った理由とも重なりますが、Just Transitionのようなテーマは政府主導、かつ、マルチセクターで進める必要があります。そこでコンサルティング会社のような外部からアプローチし、様々なステークホルダーを巻き込み、政策提言していくことが大事だと考えています。
ですから、私は大学院で政策提言を学び、デロイト トーマツという会社を通じてJust Transitionを日本社会に浸透させていきたいと考えています。さらにそれを、東南アジア等の石炭火力への依存度の高い地域へ、そして最終的に世界全体での「誰一人取り残さない社会」の実現に貢献することが、私の目標です。
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