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二分化するアパレル企業
【繊研新聞2018年2~4月連載 第3回】
今後、アパレル企業はますます情報産業としての度合いが強まり、収集・蓄積した情報をどう活用していけるかが成否を分ける重要な要素となる。プレイヤーを、プラットフォーマー型とコンテンツクリエイター型の二つのタイプに分類し、それぞれの特徴や今後のとるべき戦略を考察する。
目次
- 情報産業化するアパレル業界
- 二分化するアパレル企業
- 魅力的な「場」づくりがプラットフォーマー型のキモ
- 情報活用によるコンテンツの魅力向上がコンテンツクリエイター型の必須要件
- どちらのタイプを目指すのか?
情報産業化するアパレル業界
アパレル業界は今後、ますます情報産業としての度合いが強まっていくだろう。ここで情報産業とは、様々な「情報」を収集・活用することが付加価値を生み出す源泉となる産業、という意味合いだ。
例えば、GoogleやAmazonが、ユーザーの情報を活用してサービス展開や付加価値創造につなげているように、あるいはAirbnbやUberが、需要と供給の情報をマッチングして新たなサービスを生み出しているように、情報の収集・蓄積とその活用が価値創出の源泉となる。
こうした動きは、ネットや新興企業だけではない。コマツは以前から、建機に装着した装置で稼働状況等を把握し、需要予測等に役立ててきたし、最近では例えばGEが、航空機のエンジンに取りつけたセンサーからの情報を活用し、メンテナンスの適切なタイミングや内容を判断したり、故障を事前に防いだりするサービスを提供している。
アパレル産業においても、今後、属性情報やライフスタイル情報、購買履歴などの消費者・顧客に関する情報、競合の販売動向や価格設定、館の集客状況や天候、気温などの外部情報などを収集・蓄積し、それらをどう活用していけるかが、成否を分ける重要な要素となる。
二分化するアパレル企業
では、具体的にアパレル産業はどう変わっていくだろうか。筆者は、大きく二つのタイプのプレーヤーに分化していくと考える。一つは、ユーザー(消費者)とサプライヤー(ブランド、工場、デザイナー等)を結びつける「場」を提供するプラットフォーマー型の企業。もう一つは、実際に価値ある商品を生み出すコンテンツクリエイター型の企業だ。
アパレルビジネスの二つのタイプ
魅力的な「場」づくりがプラットフォーマー型のキモ
プラットフォーマー型においては、いかに魅力的な「場」をユーザー及びサプライヤーに提供できるか、ということが大切となる。魅力的というのは、例えばユーザーに対しては使いやすさ、アクセスの良さ、コストパフォーマンスの良さ、楽しさ、品揃え=コンテンツの魅力などだ。サプライヤーに対しては、ユーザーへのアプローチ、ユーザーの購買履歴等の情報提供などがある。
アパレル業界においては、オンラインモール、百貨店や駅ビルなどの商業施設はその代表例である。また、最近増えつつあるサブスクリプション型のサービス(レンタル)やCtoCサービス、工場と消費者を直接つなぐファクトリー・トゥ・コンシューマー(F2C)型のサービスを提供している企業も、プラットフォーマー型の一種と言える。
プラットフォーマー型においては、サプライヤー及びユーザー双方からの情報をいかに収集、蓄積し、それらを活用して魅力的な場づくりに繋げていくかがポイントになる。
具体例として、スタートトゥデイについて考えてみよう。同社は、ZOZOSUITやZOZOTOWNを通じ、アパレル業界におけるアップルのようなポジションを確立しうる。ZOZOSUITは、いわばiPhoneの位置付けであり、ZOZOTOWNはiTunesストアだ。そして、ZOZOTOWNに出店しているアパレルブランドがアプリや音楽に相当する。プライベートブランドの「ZOZO」は、アップルオリジナルのアプリと考えることができる。
情報活用によるコンテンツの魅力向上がコンテンツクリエイター型の必須要件
一方、もう一つのタイプであるコンテンツクリエイター型企業は、その名のとおり、自身が生み出すコンテンツ、つまりアパレル業界であれば洋服等の商品の魅力で勝負する。デザイン性や着心地、機能性、コストパフォーマンスなどがそれにあたる。また、ブランドとしての世界観の魅力なども含まれる。
コンテンツクリエイター型には、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドに代表されるように、ブランドの世界観やクリエイティビティを強く訴求するもの、UNIQLOのように機能性を売りにするもの、ファストファッションのように手ごろな価格と適度なデザイン性を武器とするものなどがある。
コンテンツクリエイター型においては、一部のクリエイティビティの強いブランドを除いては、顧客の情報をいかに収集、蓄積し、ニーズに沿った商品づくりに繋げていけるかが肝要だ。ユーザーの視聴情報をAIで分析し、「売れる」コンテンツ作成に繋げているNetflixはひとつの参考になろう。
どちらのタイプを目指すのか?
今後を勝ち抜くうえで重要なことは、どちらのタイプを目指すのかを明確にし、それぞれのタイプの成功に必要な要件を徹底的に磨き上げることだ。最近のアパレル企業の動きをみると、どっちつかずのケースが少なくない。二兎を追う者は一兎をも得ず、である。プラットフォーマー型、コンテンツクリエイター型、いずれで勝負するのか。経営者の賢明な判断が求められている。
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