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調査レポート
準備預金が潤沢なもとでの金融政策運営の論点
日本銀行の植田総裁による「中央銀行の財務と金融政策運営」と題する講演が9月30日に日本金融学会で実施され、総裁は将来の利上げ局面において発生し得る日銀の会計上の赤字が金融政策運営に与える影響について、主要な論点を整理した上で見解を示した。本レポートでは、そもそもなぜ準備預金への付利が必要となるのかについての背景を整理したのち、大量に準備預金が供給されている状況での金融政策運営における中央銀行の赤字以外の論点を紹介する。
日本銀行の植田総裁による「中央銀行の財務と金融政策運営」と題する講演が9月30日に日本金融学会で実施された。同講演は過去25年間の日銀の金融政策の「多角的レビュー」の第一弾と位置付けられる。4月の金融政策決定会合で実施が予告されて以降、多角的レビューの進め方については謎に包まれていたが、まずは現職の日銀総裁自らが先陣を切る形でレビューが開始された。
植田総裁は審議委員時代の2003年にも同学会で「自己資本と中央銀行」というテーマで講演をしており、今回はその20年ぶりの続編にあたる。今回の講演で植田総裁は、日銀の金融緩和の出口までは距離があると前置きしつつ、将来の利上げ局面において発生し得る日銀の会計上の赤字が金融政策運営に与える影響について、主要な論点を整理した上で見解を示した。
前回と今回の議論を見比べると、2003年当時は議論されておらず、今回新たに加わった概念がある。それは銀行が日銀に預けている預金(準備預金)への付利である。準備預金への付利は日銀の会計上の赤字を引き起こす本質的な理由であるものの、その導入の背景については「大幅な超過準備が存在するもとで短期金利を目標水準にコントロールするには、超過準備に金利を付すことが必要となります。」と言及するに留まっている。本稿ではそもそもなぜ準備預金への付利が必要となるのかについての背景を整理したのち、大量に準備預金が供給されている状況での金融政策運営における中央銀行の赤字以外の論点を紹介する。
〈本レポートの構成〉
- はじめに
- 大量の準備預金の供給により従来の方法では政策金利の引き上げが困難に
- 大幅利上げの直接的な対価は「中央銀行の赤字」か「国債価格の暴落」の2択
- 日銀の赤字以外の側面からも潤沢な準備預金レジームに関するレビューが必要
執筆者
有限責任監査法人トーマツ
梶田 脩斗/ Kajita Yuto
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