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デロイト グローバル ブロックチェーン サーベイ2019 業界別分析

ブロックチェーン導入につながる幾筋もの道 ―同じ道は二つとない

ブロックチェーンはフィンテックでの利用をはるかに超え、様々な業界への普及の道筋をたどろうとしています。テクノロジー、メディア、通信、ライフサイエンス・ヘルスケア、政府など、ブロックチェーン導入の取り組みを拡大し、多様化を図ろうとしています。

ブロックチェーン導入の本格化(前編より)

「デロイト グローバル ブロックチェーン サーベイ2019」(英語/日本語)レポートが示す通り、ブロックチェーンも他の技術と同様、当初考えられていたフィンテックでの利用をはるかに超え、様々な業界への普及の道筋をたどろうとしています。テクノロジー、メディア、通信、ライフサイエンス・ヘルスケア、政府など、より多くのセクターで、ブロックチェーン導入の取り組みを拡大し、多様化を図ろうとする組織が増えています。実際、同レポートから明らかなように、これまで採用に二の足を踏んできた組織の多くがこの技術の長期的な可能性に気付き始めるなか、ブロックチェーンは、より幅広く実用的な形での導入という、新たな時代に入ろうとしているようです。

一方、各業界のリーダー企業がブロックチェーン活用の可能性について検討するなか、疑問を感じている人もいるようです。異なる業界が、ブロックチェーンという同じ技術をいかに採用し活用しているのか、(他の業界ではなく)ある業界の企業だけが、採用の障壁となる特殊な要因について強く懸念しているのはなぜか、特定の業界に投資拡大をためらわせている理由は何か、業界によってブロックチェーンに対する認識や投資額が異なるのは、この技術特有の何らかの要因があるからか、それとも業界によって異なる文化的要因によるものかといった疑問です。

同サーベイに関するメインレポートで考察した内容は、高い視点から捉えた事実のみでした。しかし深く業界レベルにまで掘り下げて分析を行えば、より多くのことが見出せるはずです。実際、現時点でのブロックチェーンに対する各業界の考え方や採用方法の違いから導き出した内容は、「ブロックチェーンの本格導入」に入って行くなかで予想される展開について、多くを語ってくれるに違いありません。本稿では、業界それぞれの事情に照らす形で、「グローバルブロックチェーンサーベイ2019」のデータに着目しています。非常に高い視点から俯瞰する一方、各業界固有の細かい状況にも踏み込んで検証を行います。業界へのブロックチェーン技術の導入に関する限り、従うべき唯一の指針といったものはなく、また恐らく、すべての業界に確実に使える解決策もないということを、読者の皆様に感じていただければ幸いです。

(PDF、2,135KB)

各業界のブロックチェーン投資(抜粋)

「グローバルブロックチェーンサーベイ2019」から明らかになったのは、何よりも、ブロックチェーン技術は、様々な産業や現場で起きているビジネス課題を解決する実質的なソリューションとして機能し、様々な用途に利用し得る、という共通認識が形成され始めていることです。

当初はテクノロジーベースのソリューションの採用に慎重だったリーダー企業でさえ、今やこの技術に将来性を見て取っているようです。サーベイからは、ブロックチェーン普及の支えとなり得る具体的な要因が明らかとなりました。すなわち、「ブロックチェーンは戦略プライオリティの上位5位以内に入る」と考える回答者が増加している、ブロックチェーン投資が一定水準を維持している、「ブロックチェーンには魅力的な用途がある」と考える回答者の割合など、様々な認識結果からブロックチェーンへの印象の改善が見て取れる、といった点です。また我々は、ブロックチェーンの主な活用手法、ブロックチェーン導入の障壁となる要因の幅広さと、それらがほぼ等しく重視されている事実、いわゆるブロックチェーンの強み、規制上の懸念などを反映する形で、多様な(時には相反する)回答が寄せられた点に、ブロックチェーンの成熟化を示すさらなる兆候を見出しました。このような多様な考え方が生じるのは、ブロックチェーン技術の可能性と限界を検討するに当たって真剣味が増しているからこそであり、従って成熟を示すサインと見ることができます。

同サーベイで示唆したように、多くのエグゼクティブが抱えている疑問はもはや「ブロックチェーン技術は機能するのか」ではなく、「“我々”はこの技術をいかに活用できるか」という点にあります。しかし彼らがブロックチェーンをいかに活用できるかは、自社の属する業界の特性を踏まえて導き出すしかない、というのもまた事実です。結局のところ、各産業はそれぞれの事業内容や規制、文化に至るまで独自の特徴を有し、それらが組み合わさった結果として、ディスラプティブ技術を採用するスピードやその方法が決まるものだからです。

従って、サーベイの回答者群を構成する業界それぞれの状況に照らす形で、幾つかの指標を比較するのが有効と考えられます。そのためにも、まずは基本的な事実、すなわちブロックチェーン導入の取り組みにおいて企業・組織が現在投じている、あるいは近く投じる予定の実際の資金額に注目してみましょう。

プロフェッショナル

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
パートナー 執行役員
森 亮

外資系コンサルティングファームでの18年間の経験を経て現職。金融業をはじめ多様な産業を対象とし、戦略立案、先端技術洞察、イノベーション・テーマ探索、マーケティング/CRM領域、組織・風土改革等のコンサルティング活動に従事。>>さらに見る。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
アソシエイトディレクター
赤星 弘樹

IT系コンサルティングファームを経て現職。

『Blockchain & Payment』領域のリーダーとして、グローバル動向把握、FinTech/Paymentを活用した事業企画、ブロックチェーン実証支援等に従事。
Fintech・デジタル領域で新聞や専門雑誌等への寄稿、セミナー登壇実績等、多数

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