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将来予測・事業継続性を反映した債務者の信用リスク評価
金融機関における債務者の信用リスク評価に関する課題
2019年12月18日に、金融庁は「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を策定し、同日に検査マニュアルが廃止されました。「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」においては、融資ポートフォリオの信用リスクに関して、金融機関の個性・特性を基礎として、過去実績や個社の定量・定性情報に限られない幅広い情報から、将来を見据えて適切に特定・評価することが重要である旨が示されています。
また、足元では、地震、台風やCOVID-19の世界的な流行、債務者の有事の際の事業継続能力を信用リスク評価において織り込むべき重要性が増してきています。
デロイト トーマツ グループは、このような将来予測や事業継続能力を債務者の信用リスク評価に反映するツールを活用し、幅広い情報を踏まえた各金融機関における債務者の信用リスク評価を支援します。
債務者の信用リスク評価における将来予測・事業継続性の反映
債務者の信用リスク評価において最も重要視されるのが資金繰りを含むCFの評価と考えます。有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)は売上高予測モデル、BCPチェックリスト、信用リスク調整ツールを用いて将来CFを見積ることを通じて、債務者の将来予測・事業継続性を反映した信用リスク評価を行います。
具体的には、需要と供給の2つの軸から債務者の将来CFを予測します。まず、需要については、各種経済指標の予測を通じて業種別の売上高変動率を予測するモデルを構築しており、これに経済指標の予測値を入力することで当該業種の債務者の売上高の変動を予測します。
また、供給については、BCPチェックリストに基づき事業継続の維持や回復と需要減少への対応の観点で各債務者の評価を実施します。例えば、供給の維持が難しい場合には売上高の予測を下方修正するなど、チェックリストの評価結果を踏まえて、売上高または粗利、販売管理費等を調整します。
このように、売上高等の予測を通じて将来予測・事業継続性を反映した将来CFを予測します。この将来CF予測に基づき、将来予測・事業継続性を反映した格付・債務者区分の判定を行います。
売上高予測モデル
トーマツは、将来の債務者売上高の増減を定量的に把握するため、売上高予測モデルを提供します。このモデルでは、債務者の直近期の売上高と業種区分、各種経済指標の予測値を入力することで、将来の売上高の予測値を出力として得られます。将来の日本の産業全体への影響を業種別にモデル化したスタンダードモデルを基本として、債務者の地域や顧客などの特性に応じてカスタマイズすることも可能です。
また、売上高予測の前提となる今後のマクロ経済動向について、トーマツはCOVID-19の影響を反映した主要国の経済指標・金融市場のシナリオと数値をご提供いたします。シナリオは、現状の経済見通しに基づく「ベースラインシナリオ」、感染拡大の長期化や金融システムへの波及などのさらなるストレスを想定した「ストレスシナリオ」を含めた複数のシナリオとなります。
売上高予測モデルの使用イメージ
シナリオご提供イメージ
BCPチェックリスト
信用リスク調整ツールの評価項目の一つとして、将来の売上高変動率や粗利を算出する際のインプットにBCPチェックリストを用います。
現状の金融機関における債務者の信用リスク評価において、事業継続に係る項目は含まれていないと考えられます。しかし、昨今はCOVID-19のようなパンデミックの他、夏季を中心に台風や豪雨などによる自然災害のような事業を停止させる脅威がビジネスに与える影響は年々高まっています。そのような背景を踏まえ、BCPチェックリストを用いた評価結果を用いて、債務者の事業継続性を格付判定や自己査定へ反映させることが肝要です。
地震、台風、パンデミックといった有事の際の債務者の事業継続性を評価する上で、「需要減への対応」「供給力の維持/回復」についての評価が必要不可欠です。この評価に際しては、BCPチェックリストを用いて、特に「供給力の維持/回復」即ち、有事の際も、ビジネスを継続し続けることができるか、経済活動が徐々に再開した場合に、どのくらい迅速に元の稼働に戻すことができるのかを評価します。既存のBCPの評価では、供給力の維持に力点を置くことが多いですが、本チェックリストでは、供給力の維持に加えて、取引先からの発注減等に対応する「需要減への対応」として、業態転換や新規マーケットへの参入等についても補助的に評価することができます。
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