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【連載企画】教えて!デロイトさん!(第7回)
医療機関の組織・人事・労務について、デロイトさんが皆さんの疑問にお答えします。
組織・人事・労務の専門家であるデロイトさんが、日ごろ皆さまが業務に携わる中で生じる疑問に対して、Q&A形式でお答えします。今回のテーマも多くの医療機関が着手されている「医師の働き方改革」についてです。是非ともご一読ください。
継続的な働き方改革への取組
相談者:
私は、地方都市の急性期病院の事務長です。当院では本年度より医師の働き方改革に着手し、2024年4月からB水準の適用を受けるために医師の労働時間短縮計画を策定しました。院内で最終決定後に医療機関勤務環境評価センターへ評価受審の申込をする予定です。当院が指定を受けるB水準は2036年には廃止予定のため、2036年に向けた継続的な取組の考え方などを教えて下さい。
デロイトさん:
ご相談ありがとうございます。既に労働時間短縮計画も策定されているとのことですので、医療機関勤務環境評価センターの評価の繁忙等を考えると、院内でオーソライズされたら早めに医療機関勤務環境評価センターに申し込まれることをお勧めします。
また、仰るように貴院が指定を受けようとしているB水準や連携B水準は2035年度で廃止予定ですので、2024年4月がゴールではなくむしろスタートとしてお考え頂いた方がよいですね。医師の時間外削減及び勤務環境改善にどの様に継続的に取り組んでいくかは他の病院様からもご相談を頂くことが多いため、取組の考え方についてお話させて頂きます。
相談者:
ありがとうございます。では、考え方等について教えて頂けますか。
医師の継続的な取組に対する意識作りと計画に対するPDCAを徹底する
デロイトさん:
医療機関にとっては2024年4月の制度施行に向けた対応が目下の課題ではありますが、特例水準の指定を受ける医療機関は指定後3年以内に一度の頻度で評価センターによる評価を受審する必要があるとされていますので、労働時間短縮計画を出して終わりではなく、そこからがスタートとしてPDCAサイクルを徹底していくことが大事です。そのためには、①医師の働き方改革に対する継続的な意識づくり、②継続的に実態を把握し改善を進めるための仕組みづくり、が必要と考えます。
相談者:
はい、当院でもB水準の指定を受けた後に、いかに時間外削減の取組を実行するか、定着させるかが鍵であると思っています。
デロイトさん:
仰るとおりです。では、お話した①医師の働き方改革に対する継続的な意識づくり、②継続的に実態を把握し改善を進めるための仕組みづくり、についてご説明します。
①医師の働き方改革に対する継続的な意識づくり
実際に働き方改革や勤務環境改善に行動して頂く医師自身が、働き方改革について”何故必要なのか・何故自院で取組むのか”をしっかり理解しなければいけません。そうでなければ、計画に記載した取組の実行が徹底されず、労働時間短縮計画は絵に描いた餅になってしまいます。大事なのは、法対応のために行うという”やらされ感”ではなく、”勤務環境を改善することが自身の心身の健康を守り、ひいては地域医療の安定的な継続に繋がるという当事者としての意識”です。これを実現するために有効な取組を2つご紹介します。
(1)経営陣からの継続的なトップメッセージの発信
現場医師の意識づくりがうまくいっている医療機関では、経営陣が働き方改革に対する想いや取組姿勢を繰り返し発信している事例があります。医師の働き方改革に着手する際の大号令だけではなく、社内報や院内メール等を活用して定期的に働き方改革後のビジョンや取組の現状等について院内メッセージを発信しています。
(2)経営陣・幹部層と定期的なコミュニケーションによる意識づくり
また、経営陣からの一方通行のメッセージだけではなく、定期的に経営陣や幹部層と現場医師が対話し、現状の把握と共に実行に向けた動機づけを図っているケースがあります。これによって、2024年4月に向けた一過性の取組ではなく、病院経営上の重要事項としての本気度が伝わることと思います。
相談者:
なるほど、当院では働き方改革に着手する際に病院長がトップメッセージを発信しましたが、以降は各診療科や事務局任せになっていて、病院や経営陣がいかにこの問題に向き合っているのか重要性をしっかりと落とし込めていないかもしれません。とても参考になりました。
デロイトさん:
それはよかったです。では次に、前提となる意識を醸成した上で取組を継続するための仕組みづくりについてお話します。
②継続的に実態を把握し改善を進めるための仕組みづくり
労働時間短縮計画を着実に実行し、2036年に向けて時間外の削減を図っていくためには、現場医師の意識づくりとともに継続的な状況把握と取組の成果の評価、そして必要に応じて改善を図っていく体制の構築が必要です。
(1)モニタリング・評価体制の構築
取組を継続的に実施できている医療機関では、1ヶ月に一度、経営陣や経営会議等で時間外の適切な把握の基礎となる勤務記録の打刻率や勤務記録に基づく時間外数を確認しています。併せて、その背景たる取組の成果や課題についても議論し、改善が求められる診療科や医師に対しては指導や助言などを実施しています。
(2)院内全体での取組(体制)の構築
医師の時間外を圧縮し勤務負担を軽減するための方策は様々考えられます。令和3年度の厚生労働省調査「医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究」の医師の回答では、医師事務作業補助者の導入は半数以上の医療機関で取り入れられていて比較的導入は進んでいます。一方で、タスクシェアの実施率は最も低くなっています。
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現状以上に医師の時間外の圧縮・勤務負担軽減を図るためには、医師の業務量の最適化を目的に他職種を含めて院内全体でリソースを適切に配分しなおす必要があります。医師から他職種へのタスク・シフト/シェアは労働時間短縮計画の記載事項にもなっているので時間外の圧縮には有効な手段ですね。事例としては、院内で医師や看護師・コメディカルで構成されるタスク・シフト/シェアの検討WGグループを立ち上げ、継続的に検討し抽出されたタスクについてシフト・シェアを実施されている病院があります。また、医師から看護師へのタスク・シフト/シェアでは、「特定行為に係る看護師の研修制度」を終了した看護師の採用人数目標を掲げて採用を強化し、医師から看護師へのタスク・シフト/シェアを徐々に進めているケースがあります。また、医師から薬剤師へのタスク・シフト/シェアと同時に、担い手である薬剤師自身の業務を他職種や各種機械化で効率化を進めているケースなどがあります。
相談者:
確かに、当院でもタスク・シフト/シェアを進めるべきという議論は挙がりますが、業務の受け手に余裕があるわけではないので実際に検討は進めづらいところがありました。
デロイトさん:
はい。医師の働き方改革に伴って医師の業務の現状は可視化されてきつつありますが、併せて他職種も含めた病院全体の業務の見える化と改革が必要ですね。
先ずは2024年4月の法施行への対応が必須ではありますが、2036年に向けた継続的な改善や医師の働き方改革の本来の目的を踏まえて、医師や他医療従事者が当事者意識をもって主体的に取組むためにアプローチが必要になります。
医療機関の各種取組事例や参考情報などは厚生労働省が運営する『いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)』にも多数掲載されていますのでご参照ください。
相談者:
ありがとうございます、大変参考になりました。病院で取組施策について検討してみたいと思います。
次回掲載予定
今回は、医師の働き方改革の進め方のポイントについて、デロイトさんが回答しました。次回もこのテーマで皆様からのご質問に答えていきたいと思います。
執筆
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2023/03
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