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ナレッジ

介護ロボット導入のすすめ

介護ロボット導入方法や導入する際に注意すべき点について考察したいと思います。

少子高齢化の中、介護職員不足が引き金となり、職員個々への業務負担が増加する結果、職員が離職してしまうという、負のスパイラルに陥っている施設・事業所も少なくないと聞かれます。そのような経営課題に対する解決手段の1つとして、介護ロボットの活躍が期待されています。 国の動向を踏まえると、次期介護報酬改定においても、ロボットの活用促進を後押しする内容になることが推測できます。このような状況を踏まえ、介護ロボットを取り巻く環境を整理し、介護ロボット導入方法や導入する際に注意すべき点について考察したいと思います。

介護ロボットは特に「見守り」機器が普及

ロボットの定義とは、「情報を感知し(センサー系)」「判断し(知能・制御系)」「動作する(駆動系)」という3つの要素技術を有する、知能化した機械システムのことです。このうち、利用者の自立支援や、介護者の負担の軽減に役立つ介護機器が介護ロボットと呼ばれています。厚生労働省は、経済産業省とともに「ロボット技術の介護利用における重点分野」として6分野13項目を定め、その開発・導入を支援しています。

 

ロボット技術の介護利用における重点分野
ロボット技術の介護利用における重点分野

出所:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2_3.pdf

介護ロボットの導入に対しては、2015年度からスタートした「介護ロボット導入支援事業」をはじめとした国による導入費用に対する補助や、自治体における「地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)」による導入にかかる費用の一部助成/補助が行われています。また、運用面では、2018年度介護報酬改定において、夜勤職員に代わって見守りロボットを導入した場合でも加算を可能とするなどの後押しがありました。

こうした影響もあり、介護ロボットの導入状況を確認した調査では、介護ロボットを導入している施設・事業所の7割が「見守り」機能を持つロボットを導入していると回答しており、次いで「移乗支援(装着型)」「移乗支援(非装着型)」と続きます。導入している施設・事業所の約半数は国・県・市町村の助成/補助を受けて導入しています。

「見守り」は、他の介護ロボットに比べて開発・実用化が進んでおり、ベッド一体型や後付け型などの選択肢も多く、ベッド買い替えのタイミングで導入するなど、更なる導入が見込めると思料します。また、「移乗支援(装着型)」は、施設職員の高齢化や職員の労働環境改善等の視点から導入が促進されています。

 

導入した介護ロボットの種類と導入時の費用負担方法
導入した介護ロボットの種類と導入時の費用負担方法

出所:厚生労働省 第170回社会保障審議会介護給付費分科会資料「資料1-2(2)介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業(結果概要)(案)」(2019年4月10日)

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000500262.pdf

 

人手不足対策だけではないロボット導入の効果

  • 介護施設等の利用者への効果

介護ロボットがもたらす利用者への効果について、厚生労働省の調査では、ほとんどの介護ロボット種別で、「自分が介護者に気を遣わなくても良い」の割合が高く、利用者はロボットによる介護でしか得られないメリットを感じていることが確認できました。特に「見守り」機器では、「転倒が減る」の割合が最も高く、次いで「緊急時にすぐに対応してもらえる安心感がある」と、より質の高い介護を受けられるという好意的な意見が多い状況が見て取れます。

介護ロボット利用に関する利用者への効果
介護ロボット利用に関する利用者への効果

出所:厚生労働省 第170回社会保障審議会介護給付費分科会資料「資料1-2(2)介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業(結果概要)(案)」(2019年4月10日)

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000500262.pdf

 

  • 介護施設等の職員への効果

職員や施設業務の変化について、ほとんどの介護ロボット種別では、「身体的負担(体の痛みなど)の軽減」の割合が最も高く、職員の業務負担軽減に寄与していることが確認できました。特に「見守り」機器では、「利用者の行動パターンが把握できる」の割合が最も高く、次いで「優先順位の判断ができる」と、職員の負担軽減だけではなく、介護ロボットを利用して収集したデータを活用するなど、介護ロボットの利用を前提としたこれまでにない新たな介護サービス提供を実現しています。

介護ロボット利用に関する職員への効果
介護ロボット利用に関する職員への効果

出所:厚生労働省 第170回社会保障審議会介護給付費分科会資料「資料1-2(2)介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業(結果概要)(案)」(2019年4月10日)

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000500262.pdf

 

また、「見守り」機器については、実証事業において導入前後のヒヤリハット・介護事故発生件数を確認したところ、ヒヤリハット・介護事故件数の減少による介護の負担軽減に資する変化が認められており、介護者の負担軽減や利用者の安全確保・介護の質の向上に寄与する可能性があります。

「見守り」機器利用に関するヒヤリハット・介護事故件数
「見守り」機器利用に関するヒヤリハット・介護事故件数

出所:厚生労働省 老健局高齢者支援課「介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業」事業実施報告書」(平成30年3月)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/1353.pdf

 

さらなる普及に向けて

しかしながら、介護ロボットの導入をさらに促進するに当たっては、課題もあります。

介護ロボットを導入していない理由、また導入して感じた課題として最も多く挙げられたのが「導入費用が高額である」ことであり、この点に関しては、今後、介護ロボットの普及により導入コストが下がることを期待するとともに、冒頭で述べた国・自治体の助成/補助の有効活用や、リースやレンタルといった様々な調達手法の工夫も必要です。

また、介護ロボット導入施設の中では、導入後に有効活用できていると施設と、使わずに放置している施設とに二極化している現状が見られます。ヒアリング調査から、有効活用できている施設に共通しているのは「アセスメント」に力を入れている点です。利用者の状態を十分に理解したうえで、介護ロボットの機能に頼りすぎず、介護ロボット活用を前提とした新しい介護サービスの在り方を検討するなど、介護ロボットと共生する考えを前提に利用できるかが有効活用するためのカギと言えます。

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