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ポストコロナで求められる地方自治体の予防健康事業とは

2040年問題といわれる人口減少と高齢者人口のピークに向けて「健康寿命の延伸」が一つの目標となっています。新型コロナウイルス感染症の出現により「新たな日常」の構築が迫られる中、地方自治体における予防健康事業の取組がより一層重要性を増しています。

はじめに

平成30年に厚生労働省に設置された「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」では、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現を目指し、「Ⅰ.多様な就労・社会参加、Ⅱ.健康寿命の延伸、Ⅲ.医療・福祉サービス改革、Ⅳ.給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保」の取組を推進してきました*1。新型コロナウイルス感染症の終息が見えない中、12月1日に発表された成長戦略会議の実行計画では、「新たな日常」の構築に向けたデジタル化やイノベーションに加え、健康・医療・介護、社会保障についても言及され、健康・予防の取組みを強化する方針が打ち出されています。大きな方向性としては、1.医療・介護・健康データを活用した予防健康事業の推進、2.予防健康事業における官民連携の推進があげられます*2。

1.医療・介護・健康データを活用した予防健康事業の推進

予防健康事業に関しては、保険者努力支援制度や介護インセンティブ交付金について、抜本的な強化及び交付金の配分基準のメリハリの強化が図られ、地方自治体において積極的に取組まれることが期待されています。また、データ等を活用した予防・健康づくりの健康増進効果等に関するエビデンスを確認・蓄積するための実証事業が開始されており、さらに2025年度末までに完成を目指して進められているデジタル・トランスフォーメーションにより、マイナンバーカードによる健康情報の活用が可能となると予想されるため、今後地方自治体においてデータ等を活用した予防健康事業は広がっていくと考えます*2。
具体的には、地方自治体における医療・介護・健康データ等の活用として3パターンの方法が考えられます。1つ目は「エビデンスに基づいた施策立案(EBPM)への活用」で、予防健康事業の施策立案をする際、自治体独自でデータ分析を行い、保健・医療・介護に係る実態を把握し、分析結果により施策の優先順位をつけ、実行及び実行の評価を行う方法です。2つ目は「実行支援(住民への介入ツール)としての活用」で、医療・介護・健康データの活用により、地域特性に合わせた、地域包括ケアシステムの構築、重症化予防事業、介護予防事業、高額医療費の疾病予防といった課題に対処する特定事業の事業推進(リアルタイム)に活用する方法です。3つ目は、「実行支援(住民サービス)としての活用」で、個人の保健・医療・介護データ(PHR:Personal Health Record)を本人の同意の下で様々な行政サービスに活用する方法です。
ただ、データ等の活用には、新たなクラウドシステムの構築や情報の収集方法、取扱いルールなどを取り決める必要があり、またデータを分析・活用できる人材の育成だけでなく、クラウドシステムの維持費や外部業者へ委託・活用する場合の費用の確保なども考慮する必要があり、持続可能な活用方法を各自治体で検討しながら進めることが重要となります。

2.予防健康事業における官民連携の推進

12月1日の成長戦略会議の実行計画では、「新たな日常」を支える社会保障の構築に向けて、医療・介護分野におけるデータ利活用等の推進、予防・健康づくりや重症化予防の推進等を掲げており、事業推進には民間資金を呼び込むSIB(Social Impact Bond)の積極的活用を図り、PFS(成果連動型民間委託契約方式)などの官民連携を進めるとしています*2。
 これまで「スマート・ライフ・プロジェクト」の一環として、平成24年度から厚生労働省が主催となり「健康寿命をのばそう!アワード」を開催しており、生活習慣病予防の啓発活動の奨励・普及を図っています。また、経済産業省 関東経済産業局では「ガバメントピッチ」を開催し、自治体×ヘルスケアベンチャーによる地域課題解決を促進しており、徐々に官民連携による予防健康事業の機運が高まっており、今後もより加速していくものと考えられます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症がもたらした「新たな日常」に適応しながら、「健康寿命延伸」の目標を達成するためには、地方自治体の予防健康事業は非常に重要な役割を担っています。デジタル化の環境が整い、個人が健康情報を活用できる時代が到来する中で、地方自治体ではデータ等の利活用によるエビデンスに基づいた施策を立案するとともに、官民連携によってバリエーション豊富な予防健康事業を実施することが、地域特有の健康課題の解決につながると考えます。


*1: 出所「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめについて」(令和元年5月29日)
*2: 出所「成長戦略会議 実行計画」 (令和2年12月1日)

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

柚木 大介|シニアマネジャー
山田 圭之介(文責 看護師・保健師)

※上記の部署・内容は掲載時点のものとなります。2020/12

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