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繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第6回 日本におけるSDGs(2)

繊研新聞連載

近年世界的に認識が高まり、日本でも取り組む企業が増えている「SDGs(持続可能な開発目標)」。国際的な目標は、日本企業に課せられた「責任」であると当時に新たな「機会」と捉えることもできます。SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します(全16回)

現在日本ではSDGs(持続可能な開発目標)実現に寄与する社会像として「ソサエティー5.0」が注目されています。人類社会の発展において狩猟社会を最初の「1.0」とし、農耕社会、工業社会、情報社会を経た5番目の段階として提唱されたものです。これが目指すのは、サイバーとフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムによって経済発展と社会課題解決を両立させる「人間中心の社会」です。政府は未来投資戦略においてこの実現に向けたメッセージを打ち出し、企業に対するIT/IoT(モノのインターネット)活用への支援策も強化しました。

サイバー空間での情報流通や処理に傾倒した過去のIT進化と違い、ソサエティー5.0ではAI(人工知能)、IoT、ビッグデータなどの革新的技術による高付加価値は現実空間にフィードバックされます。例えば、ウェアラブル端末からのリアルタイムデータをAIが解析することで最適な治療を提案し、医療分野の人手不足を解消することが期待されます。衣服や携行物がセンサーと連動すれば、高齢者や障がい者が一人で移動することもより安全になるでしょう。食糧確保やフードロス削減につながるスマート農業も消費者の生活を変えます。これらテクノロジーは環境や健康に係るSDGs達成へ寄与するだけでなく一般消費者の生活を変え、ファッションなど消費財のマーケティングを一変させるはずです。

企業はソサエティー5.0実現に向け動き出しています。経団連がウェブ上で公表している企業の関連イノベーション事例には、IT企業や製造業だけでなく金融業やサービス業も含まれています。産学連携の進展にも注目が必要です。例えばソフトバンクは東京大学とともに、健康・医療データプラットフォーム構築を打ち出しました。

ソサエティー5.0は海外でも注目されつつあります。例えばスロベニアは高齢化など日本と共通の課題に直面する中で、ソサエティー5.0関連施策の導入を表明しました。今後はAI先進国を目指すインドネシアやその他の新興国からも賛同の声が集まることで、社会課題解決の国際的な連携加速が期待されます。

ソサエティー5.0の実現に向けた次の動きは「ルール作り」です。企業、学術機関、地域社会などのステークホルダーが一体となってサイバーと現実空間の融合をするために、データの形式や連携の方法の「標準化」などが進みます。
 
高速で回転するファッション業界のサプライチェーンが効率化すれば、地球環境や労働者の人権対応が改善します。アパレル企業が把握した消費者データが、ヘルスケアなど他の業界の社会課題解決につながるかもしれません。ますます高度化するIoT技術でSDGsに貢献するために、繊維素材はどう進化するべきでしょうか。ソサエティー5.0が新たな機会となるでしょう。

 

繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第6回 [PDF: 583KB]
Society 5.o for SDGs
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繊研新聞(2020年3月23日付)
繊研プラス:https://senken.co.jp
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著者

橋田 貴子/Hashida, Takako
デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー
レギュラトリストラテジー

米国の公共政策大学院を卒業後、デロイト トーマツ コンサルティングに入社。官公庁の政策・ルール調査事業や民間企業に対するルール形成戦略立案、規格策定・国際標準化支援を中心に活動しており、直近は、SDGsや社会課題解決に資するルール形成戦略の検討にも注力している。

繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 
(繊研新聞連載 全16回)

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