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繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第8回 廃プラスチック問題を捉える

繊研新聞連載

近年世界的に認識が高まり、日本でも取り組む企業が増えている「SDGs(持続可能な開発目標)」。国際的な目標は、日本企業に課せられた「責任」であると当時に新たな「機会」と捉えることもできます。SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します(全16回)

プラスチックによる海洋汚染問題を契機として廃プラスチック問題が注目されています。SDGs(持続可能な開発目標)では目標14.1の中で「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」としており、時間の猶予がありません。

ジャンボジェット5万機分の重量に相当する約800万トンのプラスチックが毎年海洋に流入し、このままでは50年までに海のプラスチック量が魚の量を上回ると予測されています。国連環境計画(UNEP)の報告書によると、世界のプラスチック製品生産量約90億トンの内、リサイクルされるのは約9%のみで、大部分は埋め立てや廃棄されています。日本は1人あたりのプラスチックごみ廃棄量が世界2位である上、主にアジア諸国への廃プラ輸出量が19年には約90万トンに及び、その対応姿勢が問われています。

まず理解すべきはこれに対応した政策動向です。環境省は昨年「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定し、廃プラの適正処理・回収の徹底や生分解性プラスチックなどの代替素材の開発などを対策に掲げました。廃プラを新たに生み出さないために、企業の開発・生産過程においてリサイクル材や代替素材の活用が求められます。流通においてはレジ袋の有料化や禁止の方針が各国で定められており、日本でも今年7月からの有料化が予定されています。先んじて対応する企業や自治体も多く、例えばイオンでは直営全売り場での4月からのレジ袋有料化に加え環境配慮素材のレジ袋への順次切り替えを発表しました。廃プラ輸出に対しては、昨年改正されたバーゼル条約で汚れた廃プラの国境を越えた移動規制が合意され、来年1月からの運用を目指した検討が進められています。

これら企業行動に直接影響を与えるルール化が進む中、今後求められるのは消費者行動の変革につながるような取り組みです。例えばフランスでは04年から「エシカル(倫理的な)ファッションショー」が開催されています。ドイツに開催地を移した現在は、エシカルファッションの展示会「ネオニット」として拡大しています。SNS全盛の今、マスコミの注目度が高いこのような場は、ファッションを通じて廃プラを含む社会課題について消費者を啓発する絶好の機会となります。こうした機会を業界が団結して設けることの重要性は増すでしょう。

近年のベストセラー書籍『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット著)で語られたような、上質な衣服を大切に着るという「ミニマリスト」の生活スタイルが注目されています。大量生産・大量消費のファッション業界のままでは廃プラ問題は解決できないかもしれません。素材開発など商品レベルの施策だけでなく、商品回転率は低下しても最終利益を維持するような経営レベルの変革こそが、業界の環境対応の重要課題とも言えるでしょう。

 

繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第8回 [PDF: 598KB]
海洋プラスチックは世界共通の危機的問題。規制が急拡大中
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繊研新聞(2020年4月6日付)
繊研プラス:https://senken.co.jp
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著者

玉置真理/Tamaki, Mari
デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント
レギュラトリストラテジー

米国の公共政策大学院を経て、デロイト トーマツ コンサルティングに入社。官公庁や民間企業のルール調査事業・政策立案支援、直近では民間企業の人権デューディリジェンス等に従事。

繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 
(繊研新聞連載 全16回)

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