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配偶者居住権に関する諸問題-平成30年民法等(相続法)改正及び令和元年度税制改正-

『国税速報』令和元年5月6日号

本稿では、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)に盛り込まれている、配偶者の居住権を保護するための方策について、事例に当てはめながら解説します。

【疑問相談】資産税(相続税)・民法

「配偶者居住権に関する諸問題-平成30年民法等(相続法)改正及び令和元年度税制改正-」

Question:
私、甲野太郎の財産は、図表1(添付PDF参照)のとおりです。また、私が死亡した場合の相続関係は、図表2(添付PDF参照)のとおりで、妻と私は、乙建物(自宅)を生活の本拠とし、同居中、長男は、別居中で、長男所有の建物に住んでいます。

私は、妻には、末永く自宅での居住を継続してもらい、また、長男には、株式会社甲野産業(以下「甲社」)の事業を引き継いでもらいたいと思っていますが、現時点での私の財産をできるだけ法定相続分どおりに相続させ、妻には、お金に困ることがないように、全ての預貯金を取得させることとすると、妻は、預貯金1億5,000万円、長男は、乙建物(3,000万円)、乙土地(7,000万円)及び甲社株式(5,000万円)を取得することとなって、妻の自宅での居住の安定を確保することが難しくなるのではないかと心配していたところ、配偶者居住権というものが新設されると聞きました。

配偶者居住権は、配偶者が居住建物の所有権を取得する場合よりも低廉な価額で居住権を確保することができるものであると聞きましたので、遺言に、「妻に配偶者居住権を相続させる」と記載しておこうと考えています。この場合、配偶者居住権を取得した妻が支払うこととなる賃料相当額は高額になるのでしょうか。妻が将来、サービスの充実している高級介護施設に入居する等で転居することも考えられますので、いざとなったら、配偶者居住権を売ってもよいと考えています。

一方で、乙建物の所有権を取得することとなる長男のほうで、急にお金が必要になった等の理由で乙建物を第三者に売ってしまうと、その第三者から妻が意に反して立退きを求められる事態も考えられますので、この問題にも対処しなければならないと考えています。

配偶者居住権の新設等に伴い、令和元年度税制改正において、所要の措置が講じられたそうですが、配偶者居住権の税務上の取扱いについて教えていただくとともに、配偶者居住権の制度に対する私の理解に誤りがあれば、併せて教えてください。

なお、妻に配偶者居住権を取得させる結果、法定相続分どおりに遺産が分割されないこととなっても構いません。

Answer:
添付PDFをご覧ください。

 

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※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

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